表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣戟の幻想物語 3 栄光の舞台  作者: やきたらこ
三章~砂漠越えた先の戦場~
14/30

4.

 みやこに着く頃には夕日が街並みを照らす頃合いだった。

 食料や水類は若干残った。


 宿屋で受付を済ませ、部屋へと進む。

 俺はフラフラのシエルを支え、アイゼンは倒れた隻眼の少年を背負って部屋に入った。

 内装は俺には見慣れた光景の、石や砂が基調の感じだった。

 俺はシエルを、アイゼンは隻眼の少年をベッドにそれぞれ寝かしつけた。石の台に布団を敷いた簡素なものだ。こちらも見慣れた物である。

「それにしてもこいつは一体なんなんだ?」

 アイゼンがもっともな問いを発した。

 俺も唸る。

「う〜ん………………砂百足ウルカウルもあっさり撃退したしな」

 俺はシエルに濡れたタオルを絞って額に当てた。

 歪むその表情も僅かながら緩んだような気がした。

「とりあえず、今日はもう動けそうにないぞ」

 俺は再びアイゼンの方を見やる。

「そうだな、大会登録は明日だな」


 俺とアイゼンは備え付けのソファ――こちらは運び込まれた“若干”ふわふわの物――に寝ることになった。勿論ベッド――布団とはいえ、寝心地MAX――に眠るのは具合の悪いシエルと素性も知らない隻眼の少年だ。





「やっぱ寝心地悪いな」

 深夜、紫の光が窓に差し込む。

 俺は痛む首を回し、アイゼン、シエルをそれぞれ見やった。

 金色短髪の青年はグースカ眠り、濃い紺色の髪の少女はスヤスヤと寝ている。今の彼女はどこか楽そうな様子だ。昼間の状態から抜け出せたのだろうか。

 続いて隻眼の少年を見た。思わず体を硬直してしまう。ようするにビビった。

 昼間の旅装のままだが、ベッドの上の布団で上半身を起こし、琥珀の瞳がこちらを見ていたのだ。相変わらずターバンは取ろうとしない。

「起こしちゃった?」

 隻眼の少年はゆっくりと首を振る。

「いや、ボクの方が先に起きていた」

 その声はまるで女の子のように、細く、儚かった。

 ところで、と隻眼の少年は続けた。

「ボクをここまで運んだのは君たち?」

 部屋を見回しながら問うその表情は変わらず無表情。

「そうだけど、なにか?」

「いや、ありがとうと言えればそれで」

 やがて少年は体を起こし、ベッドから出た。

「何してるんだ?」

「何って、もう行く。世話になった。ありがとう」

 少年は止まらなかった。ノブに手をかけた辺りで、反射的に俺は少年の手を覆うような形でノブを止めた。その手や指も女の子のように細かった。

「今日くらいはゆっくりしてけよ」

 笑う俺の顔を見ても、少年の表情は動かなかった。

「そうだ、名前。俺、リアン・ディール。君は?」

 僅かな沈黙、やがて少年はボソリと言った。


「ボクは、アルヤ。アルヤ・マークフェイ」

 俺は寝ていたソファに座る。

 やがて、少年はベッドに腰を落ち着けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ