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剣戟の幻想物語 3 栄光の舞台  作者: やきたらこ
三章~砂漠越えた先の戦場~
12/30

2.

「あづい〜〜〜」

 アイゼンがまたボヤく。

「仕方ないだろ!! 砂漠は暑いものなんだよ!!」

「あぁ〜〜〜あづい〜〜」

 この殴るような暑さの中じゃ、ほっとくしかない。

 シエルはどうかな?と彼女を見やるとフラフラした足取りだった。

「どうした?」

 近寄り、歩調を合わせて顔を覗き込む。

 ターバンの下のシエルの顔は青ざめていた。

「熱中症だな」

 俺は崩れそうになる彼女を支え、アイゼンに素早く指示を飛ばした。

「アイゼン、地属性魔法術で屋根作れるか?」

 アイゼンは俺のただならない様子を見て取ったのか、無言で頷いた。

「大いなる大地の恵み、今ここに我が身を守る盾とならん」

 かざした両手の辺りに岩石が生成されていき、やがて巨大な石盾を作りだした。

「ふん!!」

 両手を上に上げる。それと同調した動きを見せる石盾。やがてそれは小さな屋根のように、俺たちを日差しから守る。

 俺は腕の中でぐったりするシエルを横たわらせた。

 凄く体が熱かった。

 俺はバッグの中から水筒を取り出し、シエルの頭に少量の水をかける。水の線は彼女の頬やこめかみを伝い流れ落ちる。

「飲めるか?」

 シエルの頭を少し持ち上げ、水筒に口を付けさせる。彼女は少しづつ水を喉に通していった。


「しばらく休めば大丈夫だな」

 シエルの様子も落ち着いた所で、今はすやすやと眠っている。

「熱中症か」

 なんとなく呟いた。

 アイゼンも俺の横に座り、噛みごたえのあるパンをかじる。

「思い出なんかありそうだな」

「嬉しくない思い出だがな」

 俺やイリナもやられてたっけな。

「おかげで手慣れたものさ」




 しばし、無言の時間が場を包んだ。

 砂金のように黄色い砂が反射する太陽光が俺たちを蒸す。(太陽光はアイゼンが遮ってくれているので)主に下の方からの熱が暑い。

「生き物の気配が一切しねぇな」

 パンを食べ終えたアイゼンが言った。

「砂漠は生物を拒絶するような場所だからな」

 けど、と俺は続ける。

「いるにはいるんだ。滅多に出会わないだけでな」

「そうなのか?」

 アイゼンも興味を示す。

「砂の下を潜る砂竜、残飯漁る牙魚とか、巨大なムカデのような虫とか」

「ろくな奴がいねぇな」

 苦笑いしたアイゼン。どこか緩んだ表情があった。

「実際ろくな奴がいねぇさ」

 俺は昔襲われた事のある魔獣を思い浮かべ、苦笑した。




 視線を広大な砂原からシエルに戻すと、ゆっくりと起き上がろうとしていた。

「もう大丈夫なのか?」

 俺は助け起こし、問うた。

「うん、心配かけてごめんね」

 体調は万全じゃなさそうだが、とどまり続けるワケにはいかない。


 広げていた荷物を片付け、俺たちは歩き出した。

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