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1.
門を一つ越えるたびに乾燥した空気が鼻腔を焼く。
「砂も飛び始めたな」
俺は途中で買ったターバンを上げて口元を覆った。
ゆっくりだが確実に歩を進める俺とシエルとアイゼン。
砂漠では水の補給は無い。ご利用は計画的にというやつだ。
やがて街の様子も乾燥していく。街路の隙間に砂が入ったり、戸が締め切られていたり。それに段々日差しも強くなってきた気がする。
「日差しに気をつけろよ」
コクリと頷くシエルとアイゼン。
俺たちは更に先へ進む。広大な砂原に向けて歩を進める。
「凄いな」
隣でアイゼンの息を呑む音が聞こえた。
俺は見慣れた光景なのでそこまで感嘆しない。しかし何度見ても自然の猛威と美しさを感じる。
シエルの方も、見たこと無い景色に圧倒されてる感じのようだ。
「これからは方位磁石を頼りに進む事になる。なんたって目印も何も無いワケだからな」
シエルとアイゼンは頷いた。
「行こう」
やがて俺たちは砂の大海原へと足を踏み出した。