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間章
「水は、ある。食料は、十分」
確認作業をする俺。出発の準備をしていた。
「準備万端って感じだな」
声をかけてきたのはアイゼン。彼は近くの壁に寄りかかっていた。
「あとは出発するだけ、挨拶しとかないとな」
「お兄ちゃん、もう行くの?」
尋ねたのは妹のイリナだった。
彼女は胸の前で両手を組み、祈るような形で廊下に佇んでいた。
「もうすぐしたらこの街も出るよ」
「そう……………………………………」
哀げな顔をしたのはやはり寂しさがあるからだろうか。俺はイリナに近寄り、頭を撫でた。
「大丈夫、またすぐに帰ってくるから」
コクコクと頷いたその眼は若干濡れていた。
「心配すんな。また帰ってくるって」
「うん……うん………………」
イリナが泣き止むまで俺は頭を撫で続けた。
「それじゃ、行くな」
玄関で軽く手を振った。
「気をつけてね」
とイリナ。
「元気でやるんだぞ」
「大切にしておやりよ」
妙にニヤニヤしているのは母だ。
俺は苦笑し、ドアノブをひねった。