パラグラフ23
敵の攻撃の第一波をどうにか堪えたキミは、両手で長剣を振り上げると、目の前にいる巨体に向かって、渾身の力を込めて袈裟掛けに振り下ろした。
その一撃は、オークリーダーの肩口から断ち切り、胸ぐらいまで深々と食い込む。
食い込んだままの剣を引き抜くと、オークリーダーは悲鳴の叫びをあげ、その肩から噴水のように血を噴き出した。
キミはその一撃で、オークリーダーが倒れてくれることを期待した。
だがその期待は、儚くも裏切られる。
驚異的な生命力で踏みとどまった怪物は、痛みを知らぬかのように、なおも戦斧を振り回してくる。
キミはその攻撃も、すんでのところで回避するが、横薙ぎに胸先をかすめて行った斧の先は、キミの鎖かたびらの鎖を引っ掛け、かたびらの一部を引きちぎっていった。
キミは額に、冷や汗を浮かべる。
そしてそのとき、シルヴィアのくぐもった悲鳴が聞こえてきた。
「かはっ……!」
キミが取り巻きオークたちの攻撃を凌ぎながら、どうにか視線を動かすと、仲間のエルフ騎士が、体をくの字にして跳ね飛ばされているところが見えた。
彼女が対峙していたオークのうち、一体の振るった棍棒による横薙ぎの一撃が、華奢なエルフ騎士の腹部を捉えたのである。
跳ね飛ばされたシルヴィアは地面に転がり、地べたでわずかの間、腹を抑えて苦悶する。
だが、そこに別のオークが襲い掛かろうとすると、彼女はギリギリのところで我を取り戻し、身を転がして攻撃を回避した。
シルヴィアは俊敏で、キミと比べても優れた攻撃回避能力を持つ。
だが、ひとたび攻撃を受けてしまえば、防具が薄く耐久力にも劣るエルフの彼女は、容易く窮地に陥ってしまう。
だがキミは、焦る気持ちを押さえ、自らの戦闘に集中しなければならない。
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