パラグラフ11
「オークだ! オークが攻めて来たぞぉ!」
その日の夜中、眠りについていたキミは、村人の声で目を覚ました。
キミが衣服や装備を身につけて急いで客間を出ると、寝間着姿のシリルが慌てた様子で駆け寄ってきた。
「大変です! 西の洞窟から、オークの群れが攻めてきたんです! 早く逃げないと……!」
キミが家から外に出ると、村のあちこちから、戦いの音が聞こえてきた。
武器が打ち合わされる音、村人の断末魔の声、豚のようなフゴフゴという鳴き声などが、いくつも鳴り響く。
辺りを見渡すと、夜闇の中、村人の掲げるいくつかの松明の炎ばかりが、煌々と目立って見えた。
「シリル、ミリア、家の中に隠れているんだ」
シリルの父親が、火のついた松明を左手に持って、家から出てくる。
その右手には、武器として使うつもりなのだろう、農耕用の鍬が握られている。
シリルの父親が、キミの横に立って、話しかけてくる。
「旅人さん、この村はもうダメかもしれない。……娘の命の恩人に、さらにこんなことを頼むのが厚かましいのは分かっているんだが、それを承知の上で、それでもお願いしたい。──シリルを連れて、一緒に逃げてもらえないだろうか」
シリルの父親がそんなことを言ってくる中、向こうの暗闇から、一体の大柄の生き物が現れる。
その人型の生き物は、人間の一般的な成人男性と同じぐらいの背丈で、でっぷりと太っている。
そして、そのだぶだぶの脂肪に覆われた首の上には、豚のような醜悪な顔が乗っかっていた。
「頼む、どうかシリルを……」
キミは、そう言うシリルの父親の、鍬を持った右手が震えているのを見て、おもむろに首を横に振った。
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