Second Crystalline: Fair Hair
目を覚ます、私を即時的眠りの境地へと追い込んだのが太陽であるならそこから私を引き釣り出したのも彼である様で相変わらず信用を置いていい訳では無いながらもその力を借りないで置くのはまた考えにくい、顔だけは良く合わせる会話共有数零ないしその近似数である擬知人の様な彼であった。私はそんな彼が私を立ち上がらせようと差し伸べた手が胸倉を掴んで来ているかの様な奇天烈な錯覚を覚えそれを払い除けようとかなり執拗に自分の首の辺りで手に蝿をやらせた後、足に鉄をやらせる、踵の先から出でた杭が地面を貫いて打ち込まれていると感じられる程、踏締める、と言う行為が握り締めると言う行為と同格と呼べる程、血が出る位に、その血が私の血か地面の血か分からなくなる位真剣に、その滑稽な行為の滑稽さをぐちゃぐちゃにしながら、起き上がり立つ。そうして日時計の中心軸と化した私に、太陽は興味深そうな光線の一億である視線の一瞥をくれる、時間に縛られてのたうち回る事しか出来ない人間風情がどれだけ日時計の高貴なる静止を保つことが出来たものか、と面白半分侮蔑半分に試してみたくなったとでも言わんばかりに。私は影の姫君が光の銃砲に打ち抜かれるのを耐え兼ね彼女と銃の間に飛び出した、無謀と勇猛を履き違えた理想に生きる文学青年とでも言った貧弱な仰け反り方で二分で撃沈した、そしてまた二、三分の暗黒への回帰、自分の空っぽさをその黒に見る一人への閉じ篭り。
またも暴力的に私の髪の毛を天使の髪、老いてその光への反抗性を示さなくなった頭に源を持つ白き滝へと作り変えようと撫で回す太陽の暑苦しい腕の触感に黒の静かを冒された私は瞳開け、そして今度はそうして仰向けのまま太陽を見やる。このまま太陽の舌に私の髪を愛撫され続けるといけない、本当に太陽の愛撫に添う形でここが欲望の捌け口として彼としての理想の白で染まってしまうかも知れない。私の髪が元々何色であったかなど興味も無く覚えてはいないし今確認しようとした所でこう太陽の力が強い環境下では私がそれと望む都合のいい美色がそこに用意される事はまず無いだろうがこれだけは分かる、私は太陽の唾液で滑る髪の毛を一本抜いた。その髪の毛は、とても萎えている、つまりこの太陽の光も唾液も私の髪にとってはあまりよろしい物ではないのだ。そして、なんらかに色が有る、何色か、と思ってしばらく眺めるが色が見えたと思った時にはその髪は視界の向こう側に有る地面の色と同化して見る事が出来なくなるのだった。ああ、地面に寝そべっていたせいで土が私の髪に幾らか埃の様に被っているのか、と結論付けてみたかったがそれは明らかに論として不足している、汗、つまり太陽の唾液それで太陽が私の髪に土色を付けて小さな女の子のお人形遊び位の心積もりで楽しんでいるのだ。そして私はそれを払おうと言う気概も無い、もう抜いた髪の毛だ、終わった髪の毛だ、それに今頭からだらだらと新しい涎を提供する私に付属する髪の毛のそれについても同様だ、幾ら払った所で太陽の涎が拭えるものでも無い、むしろ太陽の涎を吸収するスポンジ程度に受け止めておくのが平和的だ。
髪の色は結局分からなかった、見ようと思えばいつでも見られるだろうが、それ位の希求心しかない事が私をいつでも疲れさせた、私は、私という一個人の色は、何色で有ったとして其処に何の意味があろう、この太陽に、この花に、この地面に彩られた地獄でのお祭り騒ぎにお誂え向きの見世物でしかない、土に涎に見事に飾り立てられた私の、その本来色など。だが私は、夢見た、その髪の内部自体に太陽の焔を抱く、熱き血管の束の様な、金の筋、頭の上を流れる天の川を。それを自分が持っていないのを知るのが怖くてなかなか自分の髪の色を知ろうという気になれないというのも一つの本音として胸を支配しているのかも分からなかった。




