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Singalio Rou' Sel' seus-Holiznier naz Crysetalanom  作者: 篠崎彩人
第二晶「百花霊乱」

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Third Crystalline: Angels in the Sky

 擬態を生業としてごく自然で居られるのは苦痛に滲む黒き血だけではない、私の見つけねばならない目的物それ自体もまたこの暗い広がりの静寂においてどうしようも無い程に無口で生物性を放棄していて風化寸前に背景の或る装飾に終わっているのだった。だが私はそれが余りに饒舌で生物の基本的意味合いをふんだんに持ちそれ以上削られてしまうのを許さない宝石にしてこの黒をこよなく愛する前衛画家が無作為に作り上げたかに見える、「黒に落ちる月と月、月とそして月、月の隣にまた月、いや一つの日は月に紛れ込み黒を白く塗り込む光の塗料を隠し持っているがそれは絵画の中に閉ざされた物で私に使えるキャンバスの下地は黒でしか有り得ない、何故なら私は日などではなく周りから白のお零れを頂戴して細々光る振りを続ける月の一人でしかないから」と言う題の曖昧模糊とした表現技法による絵画的な明度の与えられた事物数が絞り込まれた空間における力点、中心軸上の主体格で有る事を知っている、今までもこうして花畑でのかくれんぼに付き合って来てその全てにすれすれの勝利を収めた中で一つとして見つけられてしまった少女のばつの悪そうなはにかみに心躍らなかった勝利の余韻は無い、隠れている時太陽は途轍もなく静かで透明な月の振りが上手いと言うだけの話で見つけてさえしまえばやはり太陽は太陽なのだ、私が求める小さな希望の欠片なのだ。

 だがこの時には異質な問題点が捻じ込まれていた、このかくれんぼには、第三者がいてしかも違う遊びを勝手に仕掛けているのだ。それは、黒き血の事だった、或る程度臨場感の篭った真に迫った物言いが出来る事を願うが、この時の私は存在として危ない状況に置かれていた。

 精神に痛みが混ざる、この状況はまず普通に生きていれば有り得ない話だろう、痛みを感じるのは肉体の役目で有って精神はそれに反応して痛いだとか悲しいだとか助けてくれだとかもう駄目だとか言葉の粒を弾けさせていればいい。また心の痛みと言う言回しが有るが痛覚の観点から言うとそれが本当に痛みと呼べる代物で有るのかは疑問符の付く所である。だがこの時私は肉体が内包している筈の精神の海に入り込んでいた、肉体と精神の在り方が丸きり逆になっていたのだ。私が痛みを感じれば恐らく精神そのものが損傷する、そして肉体は痛いだとか悲しいだとか助けてくれだとかもう駄目だとか言葉の粒を口から飛ばし続けるだろう、精神が正常に直らない限り永遠に。勿論経験論ではこうした事は語れないので一つ私がこれを支持する所であると考える事象に触れておきたい、私が求めんとしている水仙にその人生の宿った気狂い人の発狂理由だ、彼らはただ単にこの世界の不条理さに耐え兼ねて精神バランスを崩壊させたのではないのだと思う、原因はそれぞれ有るだろうが何れにせよ自分と花を生命的に追い詰めて仕舞って苦痛に満ちた中で水仙の傍だけで可能な精神世界の海への直接ダイブを敢行した際に嫌と言う程苦痛と言う異常濃度の塩水を心に染み込ませてしまったのではないだろうか、綺麗で透明な純水に満ちていた筈の心を失ってしまったのではないだろうか。こう言う傷付き方でどうなる物かは見当も付かないがそれでも傷付き破れた心のケアは可能なのかも知れない、だがそんな事は彼らには無関係である、彼らは心も体もどうしようもなくなっている余りにも人として救われない状態をそのまま保存されているのだ、心が治る隙も与えられないまま延々汚され続けているその只中に思い報われず倒れてしまったのだろうから。こうした事をしっかりと考えられる様になったのは私が死の海から求める水仙を見つけ出して数日後の事で有ったので特別初回時憐憫を胸に感慨深く海を潜って行ったと言う様な話ではないのだが今心の中で再度死海への潜行を試みる前に、改めて彼らを弔っておきたい。貴方がたの死を決して無駄にはしない、私は死海を彷徨った中でも水仙選びへの妥協をしなかった、それは貴方がたの死が今尚生命の火を高々と燃す白を強く遺していると考えるからです。貴方がたは最後、思うその理想の形では無かったにせよ苦痛の黒から開放されていました、ならば貴方がたで燃える火の後には、きっと黒い燃え滓など残らないのでありましょう、苦痛の色に染まった悔恨など遺さず、貴方がたは透明な者として、天使として天の光をその髪その輪その翼から放つ第二の生を得ているのでありましょう。貴方がたの舞う空は雲ひとつ無く晴れ晴れとしていて爽快さの代名詞ではありますが少し寂しい、もしも私が貴方がたの仲間になる日が来たのなら、天気雨でもいい、涙を流して頂けますか、花に水を与えるばかりで自分は何もかも乾いていくだけである私の為に、ほんの少し、貴方がたの七色の睫毛より滴る思いの雨を降らせて頂けますか。

 ずっと瞳閉じていた私は久しぶりに空を見た。相変わらず瞳の太陽が私を笑いながら光で刺し続けている。そして瞳もまだ笑う太陽を見て微笑んでいる、涙を流す様な、自らに宿した愚かな幻想を洗い流してしまおうと言う様な意気はそこに見受けられない、私の居場所はまだここではない様だ。空の世界は私にはまだ早い、そう呟くと一人また心の深海の奥底へと沈み込む事にした。

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