First Crystalline: Dry Eye
花だ、花。私は、と言う事でもなく私の、と言う訳でもない。勿論誰かがでも誰かのでもないし、あえて云うなら誰かに花とは言うことが出来なくて私に、と言う言い方をするなら或る程度は今の状況を伝える事が出来る物と考えて妥当であろう。花が預けられている対象は間違い無く私だ、それは今までの生活に刻まれて来た無骨な記憶の彫刻に克明に表されている。とにかく、花だ、花で私の世界が回っている。花は私を愛する術を知らないのにその癖私を必要とし私を動物として機能させ何処までも慈しまれるべき存在として其処に座し、そして立ち上る事は無い、朽ち果てるその日を迎えるまで赤子、揺り篭からそして揺り篭へ、最初から自分の姿が墓碑である静かな生命それが花だ。そんな可愛い可愛い確信犯的永久未成熟児が骨格として持っている張りぼての笑顔を見つめながら同じく労の無き様その氷の笑顔を自分の物として獲得して笑い合う親子を演出しなくていいのはせめてもの救いだ、ここでそんな気を回さなくてはならない社会性の蜘蛛の巣は私の手足の自由を奪ってはいない、私に花、その言葉を脱出して異常としての純粋性を破壊出来る他者は居ないからだ、居たとしても私をモルモットとして眺めてそれを撮みに酒でも飲みながら赤子の時宛らの不愉快な赤ら顔でご満悦なのだろう。それ以前に、この大人への道を知らぬ赤子には目が無い、こちらがどんな態度で水を上げようと何一つ問題にはならない、水は欠かさずやっているから中々の美を咲かせているとは思われるがそれはこんな花の笑顔を荒野の雑草程度にしか評価しない人間に相応しいものではないのだ。相も変わらず、花はちょこなんと花であったが、私は私であるとは言えない、花を愛する心も無いのに花の世話をし続けなくてはならない私は自分らしさ、自分としての資格をとうに失っている、そしてそれに対し流す涙はもう目からは出ない、花に与える水が、もう勘弁してくれ、この水は実は猛烈な酸だからこれでくたばってくれ、と言う憎しみの涙なのかも知れない。花は、その涙で生き続ける、人の憎しみをキラキラと太陽光で反射させながら、腐った赤子なりの、堕天使なりの品位を保ち続ける。私は、人の憎しみを勝手に蒸発させている敵なのか、それともそうして蒸発させる事でまた私に憎しみの涙を流す権利を与える味方なのかはっきりしない太陽に視線を送った。何も見えない、ただ目が痛い、この痛みは目が涙を思い出す一助と成り得るだろうか。ならなかった、私が太陽を直視し過ぎて気絶するのが先だった。




