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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

初めて命を殺したと実感した話

作者: 獅子王

命を奪うということについてです

実際にマウスを殺すときの描写もあります

そういったことが苦手な方は読まれない方が良いかと思います

今日、もう昨日のことですが、大学に入り、初めての生物を扱う実験で、マウスを殺しました

肝臓を摘出し、そこからDNAを抽出するという実験です


肝臓を取り出す前に、頚椎脱臼による安楽死を行いました

頚椎と首の骨の間を掴み、尻尾を思い切り引っ張るというものです


自分は高校の時、カエルの解剖をやったことがありました

麻酔で動けなくしてから、生きたまま腹を裂き、内臓を観察しました

だからでしょうか、今さらネズミ一匹程度の命、なんぼのものか、と思っていました


ですが、いざ殺そうとなると、心拍数は上がり、動悸が切れ、手が震えました

いざ殺そうと手を触れると、ゴム手袋越しに、マウスの体温が伝わってくるのです

それでもマウスの首根っこを掴み、尻尾の根元を強く引きました

コキッ、という小さな音

ゴム手袋越しに、何かが外れたような感覚を感じました


しかし、マウスは死にきっていませんでした

前後の足こそ動いていませんでしたが、腹が動いていました

息をしていたんです

ブワッと、汗が吹き出しました


半死半生というのは、死にそうなほど痛いのに、死ねないということです

安楽死は、そう言った痛みを一瞬でも感じることなく死なせるために施術されるものです

一瞬で死ねないということは、死ぬまでのわずかな時間でも、苦痛を感じるということです


大慌てで、もう一度首を折ろうとしました

それでも、息は止まりません

授業の補助に入っていた先輩が言うには、首は折れていても、神経が途切れていないのだろう、ということでした

その先輩が、ネズミにとどめを刺してやってくれました

死体は、まだ温かいままでした


腹の毛皮に切れ込みを入れ、裂いてみると、腹膜の内側で内出血を起こしていました

どの部位からの出血なのかは、わからずじまいでした


実験が終わっても、死体は温かいままでした

高校でカエルを解剖した時よりも、さらに強く、生き物を殺したという実感がしました


この感覚を怖いと感じるのが、良いことなのか、悪いことなのか

これから先の4年間、いろいろな実験があります

その中で、マウスやそれ以上に大きい生き物も扱うことも多いでしょう


良心の呵責、というものも感じます

ですが、それは傲慢ではないのかとも、そう思うのです

死ぬために生まれる命は、この世に数多く生み出されています

豚、肉牛、実験動物etcetc…

その中で、自分が殺したから、という理由でその死を実感するのは、ある意味あたり前のことでしょう

ですが、それ以外の死、というものも多くあるのです


そして、自分はそんな道に進もうと思い、今の大学を選び、必死に受験勉強を頑張りました(必死と言うにはいささか熱心さが足りなかったような気もしますが)

今も、そのことは後悔していませんし、この道を進むことを辞めるつもりもありません


しかし、命を奪うことに何も感じなくなるかもしれないと思うと、恐ろしくなるのです

このまま慣れてしまっていいのだろうか、それともずっと苦しみ続けなければならないのか、と


このまま大学生活を続けていけば、そして人生経験を積んでいけば、そのうち何らかの糸口が見えてくるのでしょうか


大人に聞いても、確かな答えを返してくれる人がいない、そんな質問です

自分なりに答えを考えてみてはいますが、袋小路にはまりそうになります


皆さんは、どう思いますか?

自分で生き物を殺したのだという実感、そしてそれに伴う罪悪感

これと、どうやって付き合えばいいのでしょうか


明確な答えはありません

でも、考えることは無駄ではないのだと、自分は思います

考えながら生まれてくる過程は、きっと糧になってくれると、そう考えるからです

もちろん、この考えは間違っているかもしれません

けど、そう考えた、という事実は、この考えが間違っているということを知るという糧になるのだと、そう思うのです


改めて聞きます

皆さんは、この事を、命を奪い、それを実感するということを、どう考えますか?どう感じますか?

ほんの僅かな時間でも構いません

少し、考えてみてください


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― 新着の感想 ―
[良い点] どうか、命を奪う事に慣れないでください。どうか、命を奪った時に感じた様々な思いや感情を、忘れないでください。奪った大切な命を、この先、大切に守り・生かす事が、私達の使命で責任だと思います。…
[良い点] カエルを解剖で殺した過去の経験とラットを殺した直近の出来事を対照させている点が良いです。 一つ一つの文章が簡潔で衒いがない点にも好感が持てます。 敢えて、作者様本人の中で回答が出ない、…
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