紙、上、かみ。
電車を待っていた。
ふと足元に目線を落とすと、電車とホームの間、その下の奥底は真っ暗だった。
「あぁ、暗いな」ふと独り呟く。
「ここは暗いよ。そっちの明るい方へ僕を引き上げて連れていってよ」誰かに囁かれた気がした。
ホームの下の暗闇を覗き込んでみると、そこには白い小さな紙が落ちていた。
小さな紙は、闇の中から必死に助けを求めていた。
「お願いだよ、僕をそっちへ引き上げてよ。そっちは明るくて、とても素敵な世界なんだろう?」
だけど俺は助けずにこう言い放った。
「いいや止めときな。こっちもそっちと変わらない。
こっちの世界は物や考えがありすぎてそっちよりも暗い世界だ。
それに、俺も君みたいに空を見上げて、俺を引きあげてくれよ。って助けを求めるからさ」
紙はもう何も言ってこなかった。