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悲劇と狂乱の都市 ――歪みゆくココロ――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 平和の生贄 ――自然都市テトラルシティ――
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第14話 銃撃の音

 【テトラルシティ 中部市内】


 私と私が途中で助けた兵士は廃墟同然の市内を歩く。壊れた看板、割られたガラス、燃えて黒くなった建物、道路はどこもそんなに変わらず死体と機械だけ。

 途中に出会う動くモノはバトル=アルファとカラスだけ。カラスは死体をついばんでいた。……人間の死体を。


「もう、誰もいないのか?」

「きっとほとんどが死んだんだ。15日間の総力戦で……」

「クソッ……! なんでアイツらはテトラルシティに来たんだ!」


 その兵士は悔しそうな声を上げる。財閥連合が来なければこうはならなかった。この街の市民が死ぬ事もなかった。本来なら今日も多くの市民が平和に暮らしていたハズだ。

 財閥連合の軍勢がこの街を廃墟に変えた。傭兵部隊が多くの女性を攫って犯した事と、同部隊による略奪と暴行が市民と警備軍の怒りを爆発させた。そして、戦争が始まった。


「俺らが何をしたってんだよ!」

「まぁ、落ち着いて……」


 怒りで興奮した彼に声をかける。仕方ないといえば仕方ないような気もするけど。でも、冷静さを失ったら終わりだ。こんな時こそ冷静にいかないと。


「生き残っている人を探そう」


 そう言って私は彼の前に出る。……どっちが先行してもそう変わらないと思うが。きっともう生き残っている市民は少ない。そして、バトル=アルファも。

 しばらく歩いている時だった。どこか遠くから発砲音がした。それも連続して。誰かいる。でもそれが誰かは分からない。アリナスだろうか?


「……行ってみよう」


 私の提案に彼は無言で頷いた。アリナスだといいケド。もしかしたらバトル=アルファや傭兵かも知れないな。気をつけないと。私は無意識の内に魔法発生装置を握りしめていた。



 【中部市内 テトラル中央高等学校 正門前】


 発砲音が聞こえたのはこの辺りだと思う。私はエスパーが使えるワケじゃないから正確な位置は分からない。たぶんこの辺だろう、という事しか分からない。


「ダメだ、誰もいない」


 兵士が戻ってくる。彼も私と同じか。二手に分かれてこの辺りを捜索したが、誰もいなかった。さっきの銃撃音はもっと違う所からだったのだろうか? それとも、もう去ってしまったのか?


「最後にこの学校内を捜索するか?」

「うん、それで誰もいなかったら諦めて違うところに向かおう」


 私と彼は頷き合うと、正門から学校の敷地内に入る。いや、入ろうとした。その時だった。


「…………! 危ないぞ!!」

「え?」


 突然、彼が私に飛びつき、押し倒す。それとほぼ同時に何発もの銃弾が地面に撃ち込まれる。そこには赤く細い一筋の光! 敵を狙い撃つのに使うスコープの光だ!


「え、なに!?」

「ここを離れろッ!」


 私は彼に手を引かれ、建物の陰に隠れる。それでもしばらくは銃撃が続いた。誰かが私を殺そうとしている……! まさか、財閥連合のバトル=アルファや傭兵か!?


「だ、誰だっ!?」

「分からん。さっきの銃声の主かも知れん」

「行って確かめよう!」


 バトル=アルファや傭兵なら生き残っている人の為にも倒しておいた方がいい。誰かがソイツに撃たれるかも知れない。

 私はそのまま走り出すと裏口から校内に入った。正面から行けばまた射撃されるかも知れない。一応、シールドは張っているが、目に銃弾が入れば失明するかも知れない。用心しないと……。


 校内にも死体は多くあった。軍の活動拠点の1つとして使われていたのか、軍人の死体と市民の死体が多数あった。そして、壊れたバトル=アルファも……。

 確か射撃はかなり上の階からされた。つまり、敵は上にいるって事だ。私と彼は銃口を上に向け、背を低くして階段を上って行く。


「なぁ、何か上から音がしないか?」

「…………」


 耳を澄ます。確かに何か音がする。固い物で何かする音のような気がする。アサルトライフルやハンドガンなどの銃火器を整備する音……?

 私はその音がする方向に向かって極力音を立てずに歩き進める。……アレ? 音が止んだ。もしかして音を立てていた人が移動を始めたのかな?


 最上階にたどり着くと、さっきまで音のしていた教室に向かう。たぶんこの辺の教室からだ。足りを窺いながら、慎重に、慎重に進む。

 一つ一つ教室を確認していく。どこも似たような光景だった。イスと机はなく、あるのは死体と壊れたバトル=アルファばかりだった。


「アレ? この教室……」


 私は1つだけ他とは違う教室を見つけた。他の教室にあったものが何もない。いや、ホントに。死体もバトル=アルファもない。

 あるのは大量の弾薬といくつかのアサルトライフル。ハンドボムやハンドガンなどもあった。そして、窓際には固定されたマシンガン。銃口は薄暗い外に向けられていた。ここから射撃されたんだ……。

 これだけ見るとさっきの仕業はバトル=アルファや傭兵の仕業じゃない事が分かる。もっと武器に精通した人間がやったんだ。

 私はその場に座って床に置かれたアサルトライフルや銃弾を見る。


「マシンガンを使うとはな……」


 彼は冷たい風の吹く窓から外を見る。私も立ち上って外を見ようとした時だった。


「…………!」


 後ろから何者かに銃口を当てられた。しかも頭に。背筋にヒヤリとしたものが流れ込む。胸がこれまでにないほど動いていた。ここで発砲されたらシールドでも防げない。撃たれたら死ぬ……!

 【ここまでの流れ】


◆5月2日

 ・氷覇支部でクォットとフィルドが殺害されそうになる


◆5月3日

 ・財閥連合によるテトラルシティ制圧

 ・フィルド捕まる


◆5月8日

 ・テトラルシティの戦い勃発

 ・フィルド行動開始

 ・ハンター=アルファ 投入


◆5月9日

 ・フィルドとアリナスが救助される


◆5月21日

 ・フィルドにハンター=アルファの映像が見せられる

 ・将官による会議が行われる。

 ・特殊軍の全面撤退が開始される


◆5月23日

 ・特殊軍全軍撤退完了

 ・フィルド行動開始

 ・誰かに射殺されそうになる(現在)

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