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悲劇と狂乱の都市 ――歪みゆくココロ――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 平和の生贄 ――自然都市テトラルシティ――
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第10話 フィルドの実力

 【自然都市テトラルシティ 中部市内】


 血が噴き荒れ、宙に舞う。ガラスの破片や焼け焦げた紙片、何らかの瓦礫などが散らばる道路に血が散り、赤い水玉模様を描く。

 私の前で傭兵が倒れる。右胸から左の脇にかけて赤い血のラインを作った彼はアサルトライフルを落とし、そのまま倒れ込んだ。


「よし、行こう!」


 私はこの手で何人も殺してきた。私たちを殺そうとする財閥連合の傭兵達を葬ってきた。市内に入ってからもうすでに、かなりの数を殺した。

 ここは戦場。敵に情を見せちゃダメだ。彼らもこの街の市民に、きっと財閥連合に入る前もたくさんの人々を不幸にしてきた。だから……。


[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]

[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]


 前方から銃弾を飛ばしながら走って来るバトル=アルファ。15体ぐらいかな? それとその後ろから傭兵が8人ほど。持っている武器は全員同じ。連射可能なアサルトライフルだった。

 私は拾ったアサルトソードを握り、その群衆に突っ込んでいく。バトル=アルファの首を、胴体を斬り壊し、傭兵の体を斬る。バトル=アルファは無言で、傭兵は悲鳴を上げながら倒れていく。


「どけぇッ!」

[破壊セヨ!]

「この女ッ! ぐぁッ!!」

「がはッ!」


 容赦なかった。いつしか感覚がマヒして、人を殺している感覚がなくなってきた。ただ単に目の前にやってくる敵を斬っているだけのような気さえしてきた。

 また血が上がる。私が素早く剣を振るわせる度に血と悲鳴が上がり、命が消えていく。殺される前に殺せ! ここは戦場だ!!


「殺せぇ!」

[攻撃セヨ!]

「死への恐怖を味わえぇ!」


 黙れ! 私は剣を振りかざし、人を斬る。機械を斬る。確実に急所を狙っているから斬られたが最後、彼らは地面に崩れ去り、二度と立ち上がる事はない。

 10人くらいはいた敵兵はいなくなった。全て私が斬った。アリナスが射殺していった。数人の傭兵は逃げ出したからだ。


「素人の軍団だね。ホントに……」


 私は独り言を呟く。それにアリナスが無言で頷いた。何か、確信があった。傭兵部隊がこの街に送り込まれたワケは何か別にある。そのワケはいくつか考えてるケド、「これだ!」というものはなかなか思いつかない。


「生き残りだ!」

「ぶっ殺せェ!」

[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]


 銃弾が飛んでくる。殺意も感じる。また現れたんだ。アイツらは無限にいるのか? そう思えるくらい倒してもすぐに現れる。


「何人でも……来い!」


 私は魔法発生装置で自分の体力を回復させ、再度シールドを張ると、血の滴る剣を鞘から引き抜き、突っ込んでいく。

 燃える建物や明かりのついている建物、壊れた車や墜落した飛空艇を背景に、私は戦う! 政府軍人の1人として、この街で殺された市民の敵討ちとして!!


「ぐふぅッ!」

「ぐぉッ!」


 傭兵はやはり役に立たない。正確に撃ち抜けない狙撃の腕。作戦も何もなしでバラバラに個別で戦い、彼らは敗れる。敗れ、人生に終わりを迎える。

 群がってきた傭兵とバトル=アルファ共を倒すと、剣をそのままにし、また走り始める。その剣はすでに赤く染まっていた。


「お前、結構強いな」

「……え? そう?」


 炎の上がり、うっすらと白い煙が蔓延する市内を走る途中、アリナスが不意に聞いてきた。


「特殊軍の精鋭部隊ってみんなお前みたいな化物みじた能力を持っているのか?」

「ど、どうだろうね?」


 ……自慢する気はないが、私は特殊軍精鋭部隊でもかなり上位の実力を持っている。来年には一気に特殊軍の准将になる。誰の推薦もなしに。

 一般兵から将軍の地位に就いている人の推薦なしで将官になる。そんな人は今まで誰もいなかった。推薦なしでなれるのは、佐官程度だった。でも私は違った。自分自身の実力で、この腕で、准将になるんだ!


[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]

「またか! いくぞ、フィルド!」


 私は剣を振り上げる。剣の先端から前に斬った傭兵の血が飛ぶ。その剣で今度は血のないバトル=アルファを斬る。

 この剣の腕を高く評価された。それ以外にも軍の男性将校を超える体力、素早い動き、魔法の使い方、あらゆる分野の知識……。それらが私を准将という地位に押し上げた。

 きっと、ちょっとしたミス(魔法シールドを忘れるなど)さえなければ、少将の地位はいけたかも。それ以上はきっと無理だろう。


「はぁはぁ……、キリがないな。まるで無限に湧いてくる感じだ」

「そうだね。コッチの体力がなくなる前に本部まで行かないと」


 テトラル保安連隊の本部はもう少し先。そこまでいけばオッケーだ。


「いたぞ!」

[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]

「女軍人2人だ!」

[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]

「ヤりまくりじゃねぇか!」


 くそッ。また現れたのか。少しでも立ち止まるとすぐに現れるんだな。私は近くで横たわるテトラル警備軍の将校の持っていたハンドボムを手に取ると、ピンを引き抜いて投げる。

 それは空中でキレイな孤を描き、20体程度のバトル=アルファたちのど真ん中に落ちる。それは爆発し、全てのバトル=アルファが弾き飛ばされる。


「ちくしょ! 撃ちまくれ!」

「やべぇ!」

「撃て撃て!」

「早く殺せって!」


 後方にいた傭兵は銃撃をしながら何か喚いている。そんなめちゃくちゃな使い方では当たらない。当たってもシールドがあるからほとんどダメージはないな。

 そんな傭兵たちをアリナスは1人1人撃っていく。胸から、頭から、喉から血を噴き、彼らは倒れていく。あっという間だった。


「よし、行こう!」

「ああ」


 私達は再び走り出す。途中、何人もの市民を見かけた。みんなバラバラに逃げていく。この時見た市民の内、果たして何人が無事に逃げ出す事が出来るんだろう……? そんな事を考えつつも私は市街地を走る。

 あと少しで本部という時だった。また目の前からバトル=アルファと傭兵の軍勢が現れた。今度は合計で30体ほど。全部斬り倒すのは少しキツイか?


「こうなったら魔法で……」


 私は魔法発生装置を振る。白いつぶてが3つ飛ぶ。それらは彼らの足元に着弾すると白く半透明な氷の槍を発生させる。あの公園でも使った技だ。この攻撃とアリナスの射撃で彼らはその数を大幅に減らす。残り10体ほど。

 そんな時だった。大きな黒衣の男が氷の塊の上に着地したのは!


「グォォォ――!」

「な、なんだ?」

「コイツ何者だ!?」


 生き残った傭兵たちは動揺しながら男を見ている。この男、見覚えがあった。そう、アイツだ! 公園であった大男だ!!

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