悲劇と狂乱の都市 ――歪みゆくココロ――

第１章 黒い夢の始まり ――財閥連合・氷覇支部――

プロローグ

　この世界は平和で穏やか“だった”。

　人々は変わらぬ毎日を過ごし続けていた。

　美しい世界。

　綺麗な世界。

　素晴らしい世界。

　理想的な世界。

　お互いが助け合う世界。

　絆で全てが繋がっていた世界。

　みんな好きなこの世界。

　私も好きだったし、この穏やかで平和で温かい毎日が続くと思っていた。

　これはホント。本当にそう思っていた。

　だからこそ世界は気付かなかったのかも知れない。

　平和の光が消え始めた事に。

　1800年という長い平和が壊れ始めた事に――……