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児玉さん。俺、頑張ります!  作者: 虹色
9 十月の章
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 ★★ また・・・。 : 児玉かすみ


ダメだ……、落ち込んでる。

帰ってからずっと、ぐずぐずと考えっぱなし。


雪見さん、ごめんなさい。

せっかく指輪を見に行ったのに、すぐに「帰る」なんて言ってしまって。


だって、不安になってしまったんだもの。

指輪を買ってしまったら、もう取り消せない気がして……。



わたしのためじゃない。雪見さんのため。


わたし、聞いちゃったの、ファミレスの駐車場で。

川島さんと奥野さんが、帰り際に話してた。

さよならのあいさつをしに行って……聞こえちゃったの。

川島さんは、雪見さんのことが好きだったんだよ。


夏の合宿の帰り、わざと雪見さんの車にシュシュを落としたって。

あれは、彼女の賭けだったんだよ。雪見さんがあれを拾って連絡をしてくれたら……って。


川島さんは


「もっと早く気付けばよかったんだけど、あんまり長いこと、近くに居過ぎたからね。」


って笑っていたけれど……。



“長い時間、近くに” 。



それは、今日、見ていて分かったよ。

高校からの仲間だったら……14年くらい?


その中にわたしが入り込めないことは当然。

そんなことは気にしてない。

わたしが気にしているのはそこじゃなくて……雪見さんも気付いていないだけなんじゃないかってこと。

本当は ―― 考えたくないけど ―― 雪見さんも川島さんのことを想ってるんじゃないかって。


勢いでわたしとの関係を前に進めてしまって、戻れなくなってから気付くんじゃないかと考えてしまう。

だって、14年だよ。

とても長い時間だよ。



雪見さん、言ってたよね? わたしを意識し始めたのは4月からだって。

もしかしたら、異動したばっかりで不安だったところに知り合いがいて、ほっとしただけかも知れないじゃない?

家が近かったり、お弁当を作ってもらったりして、浮かれちゃっただけかも知れないじゃない?


わたし……自信がないの。

何かあるたびに、「わたしでいいの?」って思ってしまう。

それに加えて、これからは、雪見さんのことをずっと見て来て、たくさん理解しているひとがいるのにって。



明日……。


校長先生に結婚することを話そうって……。



雪見さんに「待って。」とは言えない。

それを言ったら、わたしの気持ちに迷いがあると思われてしまう。


そうじゃない。

そんなことない。

わたしは、雪見さんと一緒にいたい。


けれど……怖い。

だから、怖い。



ウワサなんて怖くない。

教師が失恋したなんて話、きっと生徒たちには楽しいだろうけど。

来年の春には、たぶん異動になるはずだし。


恐れているのは、いざとなったら諦められるのか、ということ。

身を引く覚悟はある?

雪見さんに、笑顔でお別れできる?



違う。


“できる?” じゃなくて、そうしなくちゃ。


わたしの方がお姉さんなんだし。

雪見さんの幸せを願うなら、できるはずだよね……。







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