★★ まさかね。 : 児玉かすみ
OKしちゃったなあ・・・。
思っていたよりも、あっさりと。
もっとしんみりとロマンティックに、かな、なんて思っていたのに。
だって、雪見さんたら、急に言うんだもの。
あんなタイミングで。
思い出してみると、前の告白もいきなりだったよね?
まあ、あれは・・・仕方ないか。
それにしても、そのときになったらもっと迷うんじゃないかと想像していたけど、呆れるほど即答だったよね?
いいのかしら?
・・・なんだか変な感じ。
「いいのかな?」と思いながら、一方で楽しい。
ちょっとハイテンション? 体がふわふわするみたいな。
もしかしたら、ふざけてるのかな?
冗談とか? ふふ。
でも、いい。
取り消さない。
だって、これからのことが楽しみだもん。
“楽しみ” ってことは・・・そういうことでしょう?
――― さあ、サービスエリアに着きました。
外はもう真っ暗。
シートベルトをはずして隣を見ると・・・。
「雪見さん?」
あらら、ぐったりして。
コースターから降りたときと同じだ。
「ねえ、大丈夫?」
もしかして、わたしの運転が怖かったのかしら?
あ、目を開けた。
「大丈夫、です。一休みしたら、ここからは俺が運転して行きます。」
「はい。」
やっぱり怖かったんだ。
なのに、そうやって微笑んでくれるんだね。
雪見さん。
その優しい笑顔が・・・。
頬をつつこうと右手を伸ばしたら、ちょっと遠くて乗り出さなくちゃならなかった。
ようやく届いた指先を、雪見さんの左手がそうっと包みこんで・・・手のひらが触れたのは、唇?
そのまま静かに見つめる瞳が、離れた街灯の光を微かに反射して・・・。
・・・どうしよう?
こんなつもりじゃなかったのに。
ドキドキする。
雪見さんに見られていることが恥ずかしい。
視線を合わせていられない。
囁かれているみたいで・・・その・・・言葉を。
それに、わたしの気持ちが筒抜けみたいで。
どうしよう?
でも。
もう少し。
右手を引くのは簡単。
体を引くことも。
だけど。
「ママ〜、待って〜。」
!!
前方から聞こえた声に我に返る。
その反動で、体も起き上がった。
雪見さんの手から抜けた右手を胸の前で握る。
夜の景色。
周囲にはたくさんの車。ところどころに歩いている人たち。
・・・何秒? どれくらい見えた?
頬に血が上る。
雪見さんと一緒にいて、わたしが赤面したことなんてあったかな?
胸のドキドキが止まらない。
「飲み物を買いに行きましょう。」
雪見さん、落ち着いてる?
もうドアを開けて外に出るところ。
意外に慣れてたりして・・・。
まさかね。