策略 17
10月3日 鈴音視点の地の文を変更しました。
俺は闇姫を呼ぶために一度部屋から出た。するとちょうど鈴音も通路に出てきた。
それを見かけた俺は鈴音達の方に歩きながら話しかける。
「おーい鈴音、そっちはどうだ。なんだか騒ぎ声が聞こえたけど、大丈夫か?」
「あっ兄さん、大丈夫です。アリエラちゃんがちょっと混乱したみたいでしたが、もう落ち着きました。ヘリオさんはどうですか?」
鈴音もこっちに歩きながら答える。
「大人しいもんだよ。
さて、ぼちぼち準備はできてるだろうから、闇姫達を呼び戻すよ」
「はい、兄さん」
「おいで黒鬼闇姫」
「いらっしゃい銀界鬼姫ちゃん」
俺と鈴音の「命の糸」がそれぞれ光の玉を作り出し、やがてそれぞれの「お人形」の姿に変わる。
『神楽君、持ってきたよぉ』
『鈴音様、こちらでよろしいですか』
『二人ともありがとう。じゃあ闇姫、すぐに持って行こう』
『りょおかぁい、鈴音ちゃん、銀ちゃんまた後でねぇ』
俺達はヘリオ・ブレイズがいる牢獄に戻った。
「お待たせした。着替えと軽い食べ物を持ってきた。
今、拘束帯を外すから」
「ありがとうございます……つ……」
束縛から解放され、自由に身動きを取れるようになった彼であったが、まだ動けないでいる。無理もない、同じ体勢で三日を過ごしたのだ。体の各部が固まっているのであろう。
「時間はあるから、少しずつ体を馴染ませていくといいよ。
何なら少し手伝おうか」
「あ、いや、これ以上ご迷惑をかけるのは……」
「遠慮せずとも、私が体をほぐすお手伝いいたします。
少し痛むかもしれませんが、我慢して下さい」
一人の侍がそう言うと、ヘリオ・ブレイズにタオルを掛けて、四肢を動かし出した。時々痛みのためか、顔が歪んでいたが、しばらくすると口を開いた。
「ありがとうございました。随分楽になりました。あとは自分でやれます」
「では、着替えと食べ物はここに置いておきますので、ゆっくり着替えて下さい。俺達は外に出てます」
俺達は牢獄を出て、通路で待つ事にした。するともう一つの牢獄から賑やかな女性達の声が、通路に響き耳に入ってきた。
「ふっ、元気のいいお嬢達ばかりだな……」
神楽の耳に賑やかな声が届いた頃、鈴音と彩華は、賑やかに騒ぎ立てるアリエラに苦戦していた。
「痛い、イ・タ・イ・の! アリエラは今、動きたくないので・ス! まだ動けないんで・ス」
「せっかく拘束帯を外したのに……アリエラちゃん、ゆっくりでいいから体を動かしましょう」
「鈴音、三日もこの格好だ。体が動かないのも仕方あるまい。
だが、アリエラよいか! あまりだだをこねると、この刀で服を切り裂き、己の恥ずかしい姿を皆の前に晒すぞ!」
彩華姉さんは刀を鞘から抜き、アリエラちゃんの拘束衣に突きつけました。
「ひっ! ご、ごめんなさい。もう少し待って下さい」
「あ、彩華姉さん、落ち着いて下さい。アリエラちゃんが怯えてます。刀を納めてください」
「ふっ、鈴音……あまり甘やかすでないぞ」
そう言うと、彩華姉さんは刀を鞘に納めました。
「鈴音……の姐御、助けていただき、ありがとうございました」
「あのアリエラちゃん、明姫ちゃん達と同じ呼び方ね。ふっ……でもね……姐御はやめましょうね」
私は満面の笑顔でアリエラちゃんを睨み……いえ、微笑みかけました。
「ひ! ご、ごめんなさい」
「こら鈴音、アリエラが怯えておるぞ」
「じゃあアリエラちゃん、怯えついでに、体を動かしましょうね。この優しい鈴音姉さんが手伝ってあげますわ」
「鈴音、それ、すごく怖いぞ」
「ひえっ! 鈴音の姐……姉さん、許して下さい……彩華の姐御、助けて下さい……」
「頭の次は姐御ときたか……鈴音、構わん、やっちまいな!」
私はアリエラちゃんの拘束衣の留め金を外して、彼女の上半身を引っぱり出しました。
そして、あらわになってしまった部分にタオルを掛けてから、彼女の上半身をゆっくりとほぐすように動かします。
「あ……い、痛い……す、鈴音……姉さん……痛い……許して……でももう……体が馴染んできました……もう……アリエラ一人で大丈夫です」
「もういいの? なんだかちょっと、張り合いが無いわね。
じゃあ足の方をしましょうか?」
「あ、足は……その……すごく……汚れていますので……それに、だいぶ動くようになってきてますので……」
「気がまわらなかったわ、ごめんなさい。
じゃあこの忌々しい服だけは脱がしちゃうわね。このタオルを腰に巻いておきなさい。
彩華姉さん、私がアリエラちゃんを支えますから、服を取っちゃって下さい」
「承知した」
「じゃあ行きますよ。一、二、三、はい!」
私達は、アリエラちゃんから忌々しい拘束衣を、完全に取り去りました。
「あぁ、ちょっと待って、見ないで下さい。タオルをしっかり巻きます……」
慌ててタオルを巻こうとするけど、上手く巻けないアリエラちゃんを見て、彩華姉さんが私に声をかけます。
「鈴音、私達は外で待とう。例え同性でも今の姿は見られたくないだろう」
「そうね。アリエラちゃん、着替えはここに置いておきますね。ゆっくりでいいからね。落ち着いたら声をかけてね」
そう言って、私達は牢獄外の通路に出ました。
俺の耳に届いていた、女性陣の賑やかな声が止まると、鈴音と彩華が通路に姿を現した。
それに気が付いた俺は歩み寄り話しかける。
「アリエラはどうだった」
「あっ兄さん、大丈夫よ。最初はやっぱり騒いだけど、今は落ち着いてるわよ。
ちょっと素直じゃないところがあるけど、そう言う年頃かな。でも可愛い娘よ」
「神楽、あの娘の事が、いろいろ気になるようだな。まさかと思うが年端も行かぬ娘も、守備範囲ではなかろうな。犯罪は許さぬぞ」
「彩華さん、なんだかもの凄く勘違いされているようですね。とりあえず、言ってる意味がわかりません」
「アリエラちゃん、なんと言うのか、まだ少女なの」
『兄さん、子供って言っちゃだめよ。間違いなく怒るわ』
『……』
「そうだな、神国なら初等教育を卒業したくらいだから、十二歳と言ったところか」
「彩華姉さんひどいです。アリエラは十四歳です。見た目が小さいからよく間違われるだけで・ス」
なんだかんだといっても女性である。年齢の話には敏感なのか、部屋の中からアリエラが反論する。
「それは失礼した、アリエラ」
「えっとところで、この衣服は鈴音姉さんのですか?」
「そうよ、なにか不都合がありましたか」
「貸していただいてなんですが……これはちょっと嫌みに……いや、発展途上の乙女には、厳しい冗談で・ス」
「冗談って……? アリエラちゃん、どうしたのかしら」
「このブラは鈴音姉さんのですよね」
「新品じゃなくてごめんね。私が前に付けていた物だから、ちょっと不快かな」
「いえ、不快とかでは無いのですが……間違いなく嫌味ね……」
呟きを交えてそう言うと、まだまともに動かない足を引き摺り、下着姿のアリエラがうつむいて出てきた。
「アンダーはちょうどなんだけど、カップが合わなくて……その……スカスカなの、大丈夫かな。見て……って……」
アリエラがそこまで言って、自分の胸から正面に視線を上げたその時、俺と目が完全に合ってしまった。
「キャー! イヤー! なに見てるんで・ス・カ!」
「あ、いや見てって、ごめん」
「何言ってるんです・カ! 見ないで下さ・イ! なんで、ド・ウ・シ・テ、男がいるんで・ス! 誰なんで・ス!」
「アリエラちゃん、兄さんです。私達に話があってここにきてたの、ごめんね。
とにかく、アリエラちゃんは中に戻って。
兄さんも兄さんです! なにデレ顔しているんですか? 後で私のを見せますから、向こうに行って下さい!」
鈴音がそう言った直後、沈黙のひと時が訪れた。その沈黙を彩華が切り裂く。
「ほう鈴音、今言った事をもう一度言えるか?」
「私、何にかおかしな事を言いましたか、彩華姉さん。
えっと、アリエラちゃんに兄さんだと伝えて、部屋に戻したのと。デレ顔の兄さんを追い返そうとしただけですわ」
「ならよい。それ以上思い出す必要も無い。
神楽も先に聞いた事は全て忘れ、おかしな期待を抱くでないぞ。なんなら私が実践してやる」
「えっと、完全に論点がわからなくなってますので、俺は戻りますね……はは」
アリエラと衝撃の初対面をすませた俺は、追い返されるように戻った。アリエラの方は鈴音が上手くなだめてくれたようだ。
しばらくの間、俺が通路で侍達と世間話をしていると、ヘリオ・ブレイズが出てきた。
先ほどのアリエラと同じく、まだ完全に動かないようで、少し足を引き摺っている。
「皆さん、お待たせしました」
「俺達の事は気にしないで下さい。それより、まだゆっくりしていてもいいですよ」
「多少痛みは残っていますが、もう大丈夫です。
それよりアリエラの騒ぐ声が聞こえてましたが、ご迷惑をかけているのでは?」
「彼女、なかなか元気ですね。でも今のところこっちの女性陣に、懐柔されているようです」
「あの、アリエラを懐柔しているとは……それは凄い人達ですね」
「とりあえず、向こうに行こう」
歩き出すと同時に俺は鈴音に声をかける。
「鈴音そっちはどうだ」
「ちょうど今、着替えも終わりました。私達もそちらに行きます」
俺達は互いに歩み寄り、全員が顔を合わせた。
すると彩華が口を開く。
「神楽、先の段取りがあるので、非礼と承知で先に名乗らせていただく。
私は神国天ノ原、侍大将山神彩華」
「あなたが……あ、失礼、私はバルドア帝国特殊遊撃部隊隊長ヘリオ・ブレイズ中将です。
此の度の救出、心より感謝いたします。
以前戦場であったときは……いやこの話はまたの機会にでも……」
「では神楽、私達は先に上がって救出成功の件を連絡しておく。その足で宮殿に向かうとする。よいか」
「承知した。彩華、まだ完全に決した訳じゃないから、充分気をつけろよ」
「ああ、言われるまでもない。ではお先」
そう言うと彩華達侍は、縛り上げていた近衛兵達を引き起こし、地下監獄から出て行った。
「さて、続けて自己紹介といこうか。
俺は神国天ノ原、独立魔戦部隊、筆頭魔術師天鳥神楽です。この娘が俺のお人形、黒鬼闇姫です」
「同じく、天鳥鈴音です。こちらは私のお人形、銀界鬼姫ちゃんです」
「フーン、明姫姉が言っていた『魔界コンビ』ね。確かに邪悪そうだわ」
「駄目だよアリエラ、そんな事言っちゃ……助けてくれた方達に失礼だよ」
「なにさ、ヘリオ先輩まで、敵の肩を持っちゃって、今日のところはまあいいわ。
ところで神楽さんだったけ、責任とってよね」
「えっとアリエラさん、責任って一体なんのですか?」
「とぼけない・デ! さっき見たでしょう、アリエラのハ・ダ・カ! ダ・カ・ラ、責任とって、アリエラの嫁になりなさ・イ!」
「イって言われても……しかも嫁って……」
「兄さん、いつまでこんな少女に、言いくるめられているんですか? シャキッとしなさい!
それとアリエラちゃん、これは私の物です。差し上げる訳にはいきません。そもそもアリエラちゃんが見られたのは下着姿であって、裸じゃありません。それで嫁なら、兄さんは既に私の嫁です! いいえ、嫁以上です!」
「ひぇっ! ご、ごめんなさい、鈴音姉さん。
でもきょ、兄妹なんだから、一緒にお風呂ぐらい……来て、白輝明姫……鈴音姉さんが……いじめるの……」
「あらアリエラちゃん、私達は本当の兄妹じゃないわよ。血もつながってないし、縁組みもないわよ。
それからこの私が、明姫ちゃん達を手懐けていないとでも……いいわ、明姫ちゃんや金輝姫ちゃんに確認なさい」
ほぼ完勝の鈴音が、目を細めて軽く見下すようにアリエラに言った。
「輝姫……様を……金輝姫ちゃんって……とにかく……おこし下さい、金剛輝姫様……」
鈴音の言葉に反応したヘリオ・ブレイズが輝姫を呼んだ。
『アリエラちゃん、無事でなりよりよ。お姉さん安心したわ』
『下僕よ……なんじゃ……元気じゃったのか……』
『明姫姉……ありがとう』
『輝姫……様、お手数をお掛けしました。ありがとうございます』
『あららアリエラちゃん、涙浮かべて、お姉さんに会えた事が、そんなに嬉しかったの』
『うん、凄くうれしい。でもね、鈴音姉さんにいじめられたの……』
『あらあらそれは困ったわね。
でもね……駄目よ、アリエラちゃん。鈴音の姐御には決して逆らっては駄目。あのお方が黒と言ったら、お姉さんは黒鬼闇姫になります』
『明姫姉も……鈴音姉さんに勝てなかったの……』
鈴音の言う通り明姫もその魔手に落ち、落胆を隠せないアリエラであった。
『えぇ白姉ちゃん、駄目だよぉ。そんな事したら黒が二人になっちゃうよぉ。神楽君が困っちゃうんだよぉ。
でもねぇアレリラ……違うなぁ……アリレラ……』
『アリエラです! ア・リ・エ・ラ!』
『何怒ってるのぉ? アリちゃん。
だからねぇ、鈴音ちゃんは、今はあんなんだけどぉ、本当は優しいんだよぉ』
『そうですわ、アリエラ様。鈴音様は本当にお優しいのですわ。
確かにその愛深き性格故、時々恐怖をまき散らし暴走いたします。しかし既に女の喜びを知ってしまったためか、お一人寝のときのその姿、見るに耐えないほど、イダ……イダジイデス……ごめんなさい』
相変わらず鬼姫の一言に、強烈に反応する鈴音であった。
『鬼姫ちゃん、あなたは私にとって、恐怖をまき散らす暴走口車です』
『さすが「魔界コンビ」じゃのう。見ていて飽きぬ。
ところで明姫、大切な事を忘れておるぞ』
『お姉さんとしたことが……アリエラちゃんに会えたのが嬉しくて、忘れていましたわ。
神楽ちゃん、鈴音ちゃん、今回はお姉さん達のわがままを受け入れて、契約主を助けていただき、本当にありがとうございました。このご恩は忘れません』
『妾からも……あのような下僕達じゃが、ほんに……言葉にできぬ……』
『明姫、輝姫……礼はいらないよ。俺達はそれ以上の、見返りを頂いたと思うしね。
それでも礼が言いたいのなら、あとで帝に言ってくれ。
そうそう二人には、このまま一緒に来てもらうよ。構わないだろう』
『ああ、僕はいいけど、アリエラはどうなんだ』
『うん……でも、でもよ、明姫姉達を呼んだんだよ』
アリエラの返答は何かもの言いたげであった。
『それは私達と一戦交えると、言う事かしら、アリエラちゃん』
『そ、そんなつもりじゃ……ただ、逃げる事もできるかなって……』
『どこに逃げるの? あなた達を嵌めた連中の手によって、今までの帝国はもう無くなってるわ。それともその連中のところに行くとでも……連中が受け入れるかしら』
『アリエラは静かに暮らしたいなって……』
『まあ鈴音、アリエラを追いつめないであげなよ。
さてアリエラ、俺もそうしたいから、気持ちはわかる。
だが酷な話だがそれは無理だ。俺達は個人としては、あまりに強大過ぎる力をもっている。
どこにも属さず静かに暮らすとしても、俺達を利用しようと言い寄ってくる輩は、湧くように出てくるだろう。
そいつらを排除するにも、この力は強大過ぎるんだ。
確かにこの力があれば、排除する事は簡単だろう。だが力には、それ以上の力をもって制するというのが、世の常だ。
中には他に取られるくらいなら、潰してしまえと、とんでもない兵力を送り込んでくる輩もいるかもしれない。
つまり俺達がいるところには、必ず争いが起き、そして拡大していくだろう。
だから俺達は静かに暮らすにしても、俺達自身が強大な勢力に属さなければいけないんだ』
『でもよ、それって、こうやって何かの時に、争いの場に出て行かなければ、いけないって事でしょう。結局争い事に利用されちゃうのよ』
『確かにな。今は戦時中であり、しかも俺達は軍人だ。
だから命令があれば、当然それを遂行する。だが、帝国が事実上崩壊した以上、今後はどうなるか……俺は想像できない。
しばらくは、この反乱を起こしたものを追いかける事になるだろう。そして加担する輩の討伐も行うであろう。
しかし、それをアリエラ達に強要する事もできない。今まで同じ帝国の軍人であり味方だったわけだからな。その意味では戦闘にかり出される事無く、静かに暮らせるかもしれない。
だけど同時にそんな時だからこそ、所在を明確に、はっきり言って、目の届くところに置いておきたいんだ』
『結局はアリエラ達を、監視下に置いておきたいんだ』
『アリエラ、あんまり突っかかったり、おかしな勘ぐりはよくないぞ』
『なにさ、ヘリオ先輩は意気地がないんですね。こういう時だから、言いたい事ははっきり言っておいた方がいいので・ス!』
『アリエラちゃんは、本当に元気ね。でもね、こういう話は、今ここでする事じゃないと、私は思うの……兄さんもそう思わない。それと……アリエラちゃんもよ』
『まあ確かにな』
『ひっ! ごめんなさい鈴音姉さん、大人しく従います』
『アリエラちゃんは何か勘違いしちゃったわね。
いいのよ言いたい事は、はっきりと言ってもらっても……でもね私は、ぼちぼちここを出たいなって、思っただけですからね』
『ひぇっ! ごめんなさい、アリエラが引き止めてしまいました。許して下さい』
『それじゃ、ここを出よう』
俺達は来た通路を戻り建物の外に出た。そして外に控えていた侍達から報告を受ける。
「宮殿の制圧は、先ほど終了いたしました。
現在最終確認中ですが、内部に残っていた人員は非戦闘員が十名程、宮殿前の庭園中央の広場に集められおります。
なお一個大隊がこちらに派兵されたと、連絡を受けております。主部隊は到着まで待機との事です」
「大隊の事は表の近衛兵達に伝えておけよ。無用な戦闘を避けるようにと」
「承知しました」
報告を受けた俺達は、庭園中央の広場に向かった。そこで彩華と合流する。
「神楽、遅かったな」
「待たせたか、彩華。様子はどうだ」
「やっぱりもぬけの空だ。残念だが仕方ない。
ところでアリエラ、お前達の持ち物が残っているのではないか? 取りに戻るか」
「お気遣い、ありがとうございます、彩華姉さん。ではそうさせて頂きます」
「悪いが明姫達はここで待っていてくれ。一応念のためだ。気を悪くしないでくれ」
彩華、アリエラ、そしてヘリオの三人は宮殿内に入っていった。
彼女達が荷物を抱えて戻ってきた頃、派兵された大隊が到着した。思った以上に早い到着だった。多分社守軍師が見越して組み込んでいたのだろう。
こうして俺達主部隊は、目的であった契約主の救出、そして宮殿の制圧を終え、作戦は終了した。
「さて神楽……約束を……」
「兄さん……忘れてませんよね……」
「最後まで見届けろよ」
「最後まで付き合っていただきます」
「いくぞ鈴音」
「望むところ彩華姉さん、鬼姫ちゃんお願い」
『承知しました』
「だから二人とも……その物騒な物はしまって下さい!」
読み進めていただき、ありがとうございます。