表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/90

策略 17

10月3日 鈴音視点の地の文を変更しました。

 俺は闇姫を呼ぶために一度部屋から出た。するとちょうど鈴音も通路に出てきた。

 それを見かけた俺は鈴音達の方に歩きながら話しかける。


「おーい鈴音、そっちはどうだ。なんだか騒ぎ声が聞こえたけど、大丈夫か?」

「あっ兄さん、大丈夫です。アリエラちゃんがちょっと混乱したみたいでしたが、もう落ち着きました。ヘリオさんはどうですか?」

 鈴音もこっちに歩きながら答える。


「大人しいもんだよ。

 さて、ぼちぼち準備はできてるだろうから、闇姫達を呼び戻すよ」

「はい、兄さん」


「おいで黒鬼闇姫」

「いらっしゃい銀界鬼姫ちゃん」

 俺と鈴音の「命の糸」がそれぞれ光の玉を作り出し、やがてそれぞれの「お人形」の姿に変わる。


『神楽君、持ってきたよぉ』

『鈴音様、こちらでよろしいですか』

『二人ともありがとう。じゃあ闇姫、すぐに持って行こう』

『りょおかぁい、鈴音ちゃん、銀ちゃんまた後でねぇ』

 俺達はヘリオ・ブレイズがいる牢獄に戻った。


「お待たせした。着替えと軽い食べ物を持ってきた。

 今、拘束帯を外すから」

「ありがとうございます……つ……」

 束縛から解放され、自由に身動きを取れるようになった彼であったが、まだ動けないでいる。無理もない、同じ体勢で三日を過ごしたのだ。体の各部が固まっているのであろう。


「時間はあるから、少しずつ体を馴染ませていくといいよ。

 何なら少し手伝おうか」

「あ、いや、これ以上ご迷惑をかけるのは……」

「遠慮せずとも、私が体をほぐすお手伝いいたします。

 少し痛むかもしれませんが、我慢して下さい」

 一人の侍がそう言うと、ヘリオ・ブレイズにタオルを掛けて、四肢を動かし出した。時々痛みのためか、顔が歪んでいたが、しばらくすると口を開いた。


「ありがとうございました。随分楽になりました。あとは自分でやれます」

「では、着替えと食べ物はここに置いておきますので、ゆっくり着替えて下さい。俺達は外に出てます」

 俺達は牢獄を出て、通路で待つ事にした。するともう一つの牢獄から賑やかな女性達の声が、通路に響き耳に入ってきた。


「ふっ、元気のいいお嬢達ばかりだな……」



 神楽の耳に賑やかな声が届いた頃、鈴音と彩華は、賑やかに騒ぎ立てるアリエラに苦戦していた。



「痛い、イ・タ・イ・の! アリエラは今、動きたくないので・ス! まだ動けないんで・ス」

「せっかく拘束帯を外したのに……アリエラちゃん、ゆっくりでいいから体を動かしましょう」

「鈴音、三日もこの格好だ。体が動かないのも仕方あるまい。

 だが、アリエラよいか! あまりだだをこねると、この刀で服を切り裂き、己の恥ずかしい姿を皆の前に晒すぞ!」

 彩華姉さんは刀を鞘から抜き、アリエラちゃんの拘束衣に突きつけました。


「ひっ! ご、ごめんなさい。もう少し待って下さい」

「あ、彩華姉さん、落ち着いて下さい。アリエラちゃんが怯えてます。刀を納めてください」

「ふっ、鈴音……あまり甘やかすでないぞ」

 そう言うと、彩華姉さんは刀を鞘に納めました。


「鈴音……の姐御、助けていただき、ありがとうございました」

「あのアリエラちゃん、明姫ちゃん達と同じ呼び方ね。ふっ……でもね……姐御はやめましょうね」

 私は満面の笑顔でアリエラちゃんを睨み……いえ、微笑みかけました。


「ひ! ご、ごめんなさい」

「こら鈴音、アリエラが怯えておるぞ」

「じゃあアリエラちゃん、怯えついでに、体を動かしましょうね。この優しい鈴音姉さんが手伝ってあげますわ」

「鈴音、それ、すごく怖いぞ」


「ひえっ! 鈴音の姐……姉さん、許して下さい……彩華の姐御、助けて下さい……」


「頭の次は姐御ときたか……鈴音、構わん、やっちまいな!」


 私はアリエラちゃんの拘束衣の留め金を外して、彼女の上半身を引っぱり出しました。

 そして、あらわになってしまった部分にタオルを掛けてから、彼女の上半身をゆっくりとほぐすように動かします。


「あ……い、痛い……す、鈴音……姉さん……痛い……許して……でももう……体が馴染んできました……もう……アリエラ一人で大丈夫です」


「もういいの? なんだかちょっと、張り合いが無いわね。

 じゃあ足の方をしましょうか?」

「あ、足は……その……すごく……汚れていますので……それに、だいぶ動くようになってきてますので……」

「気がまわらなかったわ、ごめんなさい。

 じゃあこの忌々しい服だけは脱がしちゃうわね。このタオルを腰に巻いておきなさい。

 彩華姉さん、私がアリエラちゃんを支えますから、服を取っちゃって下さい」

「承知した」

「じゃあ行きますよ。一、二、三、はい!」

 私達は、アリエラちゃんから忌々しい拘束衣を、完全に取り去りました。


「あぁ、ちょっと待って、見ないで下さい。タオルをしっかり巻きます……」


 慌ててタオルを巻こうとするけど、上手く巻けないアリエラちゃんを見て、彩華姉さんが私に声をかけます。


「鈴音、私達は外で待とう。例え同性でも今の姿は見られたくないだろう」

「そうね。アリエラちゃん、着替えはここに置いておきますね。ゆっくりでいいからね。落ち着いたら声をかけてね」

 そう言って、私達は牢獄外の通路に出ました。



 俺の耳に届いていた、女性陣の賑やかな声が止まると、鈴音と彩華が通路に姿を現した。

 それに気が付いた俺は歩み寄り話しかける。


「アリエラはどうだった」

「あっ兄さん、大丈夫よ。最初はやっぱり騒いだけど、今は落ち着いてるわよ。

 ちょっと素直じゃないところがあるけど、そう言う年頃かな。でも可愛い娘よ」

「神楽、あの娘の事が、いろいろ気になるようだな。まさかと思うが年端も行かぬ娘も、守備範囲ではなかろうな。犯罪は許さぬぞ」

「彩華さん、なんだかもの凄く勘違いされているようですね。とりあえず、言ってる意味がわかりません」

「アリエラちゃん、なんと言うのか、まだ少女なの」

『兄さん、子供って言っちゃだめよ。間違いなく怒るわ』

『……』

「そうだな、神国なら初等教育を卒業したくらいだから、十二歳と言ったところか」

「彩華姉さんひどいです。アリエラは十四歳です。見た目が小さいからよく間違われるだけで・ス」

 なんだかんだといっても女性である。年齢の話には敏感なのか、部屋の中からアリエラが反論する。


「それは失礼した、アリエラ」

「えっとところで、この衣服は鈴音姉さんのですか?」

「そうよ、なにか不都合がありましたか」

「貸していただいてなんですが……これはちょっと嫌みに……いや、発展途上の乙女には、厳しい冗談で・ス」

「冗談って……? アリエラちゃん、どうしたのかしら」

「このブラは鈴音姉さんのですよね」

「新品じゃなくてごめんね。私が前に付けていた物だから、ちょっと不快かな」

「いえ、不快とかでは無いのですが……間違いなく嫌味ね……」

 呟きを交えてそう言うと、まだまともに動かない足を引き摺り、下着姿のアリエラがうつむいて出てきた。


「アンダーはちょうどなんだけど、カップが合わなくて……その……スカスカなの、大丈夫かな。見て……って……」

 アリエラがそこまで言って、自分の胸から正面に視線を上げたその時、俺と目が完全に合ってしまった。


「キャー! イヤー! なに見てるんで・ス・カ!」

「あ、いや見てって、ごめん」

「何言ってるんです・カ! 見ないで下さ・イ! なんで、ド・ウ・シ・テ、男がいるんで・ス! 誰なんで・ス!」

「アリエラちゃん、兄さんです。私達に話があってここにきてたの、ごめんね。

 とにかく、アリエラちゃんは中に戻って。

 兄さんも兄さんです! なにデレ顔しているんですか? 後で私のを見せますから、向こうに行って下さい!」

 鈴音がそう言った直後、沈黙のひと時が訪れた。その沈黙を彩華が切り裂く。


「ほう鈴音、今言った事をもう一度言えるか?」

「私、何にかおかしな事を言いましたか、彩華姉さん。

 えっと、アリエラちゃんに兄さんだと伝えて、部屋に戻したのと。デレ顔の兄さんを追い返そうとしただけですわ」

「ならよい。それ以上思い出す必要も無い。

 神楽も先に聞いた事は全て忘れ、おかしな期待を抱くでないぞ。なんなら私が実践してやる」

「えっと、完全に論点がわからなくなってますので、俺は戻りますね……はは」

 アリエラと衝撃の初対面をすませた俺は、追い返されるように戻った。アリエラの方は鈴音が上手くなだめてくれたようだ。


 しばらくの間、俺が通路で侍達と世間話をしていると、ヘリオ・ブレイズが出てきた。

 先ほどのアリエラと同じく、まだ完全に動かないようで、少し足を引き摺っている。


「皆さん、お待たせしました」

「俺達の事は気にしないで下さい。それより、まだゆっくりしていてもいいですよ」

「多少痛みは残っていますが、もう大丈夫です。

 それよりアリエラの騒ぐ声が聞こえてましたが、ご迷惑をかけているのでは?」

「彼女、なかなか元気ですね。でも今のところこっちの女性陣に、懐柔されているようです」

「あの、アリエラを懐柔しているとは……それは凄い人達ですね」

「とりあえず、向こうに行こう」

 歩き出すと同時に俺は鈴音に声をかける。


「鈴音そっちはどうだ」

「ちょうど今、着替えも終わりました。私達もそちらに行きます」

 俺達は互いに歩み寄り、全員が顔を合わせた。

 すると彩華が口を開く。


「神楽、先の段取りがあるので、非礼と承知で先に名乗らせていただく。

 私は神国天ノ原、侍大将山神彩華」

「あなたが……あ、失礼、私はバルドア帝国特殊遊撃部隊隊長ヘリオ・ブレイズ中将です。

 此の度の救出、心より感謝いたします。

 以前戦場であったときは……いやこの話はまたの機会にでも……」

「では神楽、私達は先に上がって救出成功の件を連絡しておく。その足で宮殿に向かうとする。よいか」

「承知した。彩華、まだ完全に決した訳じゃないから、充分気をつけろよ」

「ああ、言われるまでもない。ではお先」

 そう言うと彩華達侍は、縛り上げていた近衛兵達を引き起こし、地下監獄から出て行った。


「さて、続けて自己紹介といこうか。

 俺は神国天ノ原、独立魔戦部隊、筆頭魔術師天鳥神楽です。この娘が俺のお人形、黒鬼闇姫です」

「同じく、天鳥鈴音です。こちらは私のお人形、銀界鬼姫ちゃんです」

「フーン、明姫姉が言っていた『魔界コンビ』ね。確かに邪悪そうだわ」

「駄目だよアリエラ、そんな事言っちゃ……助けてくれた方達に失礼だよ」

「なにさ、ヘリオ先輩まで、敵の肩を持っちゃって、今日のところはまあいいわ。

 ところで神楽さんだったけ、責任とってよね」

「えっとアリエラさん、責任って一体なんのですか?」

「とぼけない・デ! さっき見たでしょう、アリエラのハ・ダ・カ! ダ・カ・ラ、責任とって、アリエラの嫁になりなさ・イ!」

「イって言われても……しかも嫁って……」

「兄さん、いつまでこんな少女に、言いくるめられているんですか? シャキッとしなさい!

 それとアリエラちゃん、これは私の物です。差し上げる訳にはいきません。そもそもアリエラちゃんが見られたのは下着姿であって、裸じゃありません。それで嫁なら、兄さんは既に私の嫁です! いいえ、嫁以上です!」

「ひぇっ! ご、ごめんなさい、鈴音姉さん。

 でもきょ、兄妹なんだから、一緒にお風呂ぐらい……来て、白輝明姫……鈴音姉さんが……いじめるの……」

「あらアリエラちゃん、私達は本当の兄妹じゃないわよ。血もつながってないし、縁組みもないわよ。

 それからこの私が、明姫ちゃん達を手懐けていないとでも……いいわ、明姫ちゃんや金輝姫ちゃんに確認なさい」

 ほぼ完勝の鈴音が、目を細めて軽く見下すようにアリエラに言った。


「輝姫……様を……金輝姫ちゃんって……とにかく……おこし下さい、金剛輝姫様……」

 鈴音の言葉に反応したヘリオ・ブレイズが輝姫を呼んだ。


『アリエラちゃん、無事でなりよりよ。お姉さん安心したわ』

『下僕よ……なんじゃ……元気じゃったのか……』

『明姫姉……ありがとう』

『輝姫……様、お手数をお掛けしました。ありがとうございます』

『あららアリエラちゃん、涙浮かべて、お姉さんに会えた事が、そんなに嬉しかったの』

『うん、凄くうれしい。でもね、鈴音姉さんにいじめられたの……』

『あらあらそれは困ったわね。

 でもね……駄目よ、アリエラちゃん。鈴音の姐御には決して逆らっては駄目。あのお方が黒と言ったら、お姉さんは黒鬼闇姫になります』

『明姫姉も……鈴音姉さんに勝てなかったの……』

 鈴音の言う通り明姫もその魔手に落ち、落胆を隠せないアリエラであった。


『えぇ白姉ちゃん、駄目だよぉ。そんな事したら黒が二人になっちゃうよぉ。神楽君が困っちゃうんだよぉ。

 でもねぇアレリラ……違うなぁ……アリレラ……』

『アリエラです! ア・リ・エ・ラ!』

『何怒ってるのぉ? アリちゃん。

 だからねぇ、鈴音ちゃんは、今はあんなんだけどぉ、本当は優しいんだよぉ』

『そうですわ、アリエラ様。鈴音様は本当にお優しいのですわ。

 確かにその愛深き性格故、時々恐怖をまき散らし暴走いたします。しかし既に女の喜びを知ってしまったためか、お一人寝のときのその姿、見るに耐えないほど、イダ……イダジイデス……ごめんなさい』

 相変わらず鬼姫の一言に、強烈に反応する鈴音であった。


『鬼姫ちゃん、あなたは私にとって、恐怖をまき散らす暴走口車です』

『さすが「魔界コンビ」じゃのう。見ていて飽きぬ。

 ところで明姫、大切な事を忘れておるぞ』

『お姉さんとしたことが……アリエラちゃんに会えたのが嬉しくて、忘れていましたわ。

 神楽ちゃん、鈴音ちゃん、今回はお姉さん達のわがままを受け入れて、契約主を助けていただき、本当にありがとうございました。このご恩は忘れません』

『妾からも……あのような下僕達じゃが、ほんに……言葉にできぬ……』

『明姫、輝姫……礼はいらないよ。俺達はそれ以上の、見返りを頂いたと思うしね。

 それでも礼が言いたいのなら、あとで帝に言ってくれ。

 そうそう二人には、このまま一緒に来てもらうよ。構わないだろう』

『ああ、僕はいいけど、アリエラはどうなんだ』

『うん……でも、でもよ、明姫姉達を呼んだんだよ』

 アリエラの返答は何かもの言いたげであった。


『それは私達と一戦交えると、言う事かしら、アリエラちゃん』

『そ、そんなつもりじゃ……ただ、逃げる事もできるかなって……』

『どこに逃げるの? あなた達を嵌めた連中の手によって、今までの帝国はもう無くなってるわ。それともその連中のところに行くとでも……連中が受け入れるかしら』

『アリエラは静かに暮らしたいなって……』

『まあ鈴音、アリエラを追いつめないであげなよ。

 さてアリエラ、俺もそうしたいから、気持ちはわかる。

 だが酷な話だがそれは無理だ。俺達は個人としては、あまりに強大過ぎる力をもっている。

 どこにも属さず静かに暮らすとしても、俺達を利用しようと言い寄ってくる輩は、湧くように出てくるだろう。

 そいつらを排除するにも、この力は強大過ぎるんだ。

 確かにこの力があれば、排除する事は簡単だろう。だが力には、それ以上の力をもって制するというのが、世の常だ。

 中には他に取られるくらいなら、潰してしまえと、とんでもない兵力を送り込んでくる輩もいるかもしれない。

 つまり俺達がいるところには、必ず争いが起き、そして拡大していくだろう。

 だから俺達は静かに暮らすにしても、俺達自身が強大な勢力に属さなければいけないんだ』

『でもよ、それって、こうやって何かの時に、争いの場に出て行かなければ、いけないって事でしょう。結局争い事に利用されちゃうのよ』

『確かにな。今は戦時中であり、しかも俺達は軍人だ。

 だから命令があれば、当然それを遂行する。だが、帝国が事実上崩壊した以上、今後はどうなるか……俺は想像できない。

 しばらくは、この反乱を起こしたものを追いかける事になるだろう。そして加担する輩の討伐も行うであろう。

 しかし、それをアリエラ達に強要する事もできない。今まで同じ帝国の軍人であり味方だったわけだからな。その意味では戦闘にかり出される事無く、静かに暮らせるかもしれない。

 だけど同時にそんな時だからこそ、所在を明確に、はっきり言って、目の届くところに置いておきたいんだ』

『結局はアリエラ達を、監視下に置いておきたいんだ』

『アリエラ、あんまり突っかかったり、おかしな勘ぐりはよくないぞ』

『なにさ、ヘリオ先輩は意気地がないんですね。こういう時だから、言いたい事ははっきり言っておいた方がいいので・ス!』

『アリエラちゃんは、本当に元気ね。でもね、こういう話は、今ここでする事じゃないと、私は思うの……兄さんもそう思わない。それと……アリエラちゃんもよ』

『まあ確かにな』

『ひっ! ごめんなさい鈴音姉さん、大人しく従います』

『アリエラちゃんは何か勘違いしちゃったわね。

 いいのよ言いたい事は、はっきりと言ってもらっても……でもね私は、ぼちぼちここを出たいなって、思っただけですからね』

『ひぇっ! ごめんなさい、アリエラが引き止めてしまいました。許して下さい』

『それじゃ、ここを出よう』


 俺達は来た通路を戻り建物の外に出た。そして外に控えていた侍達から報告を受ける。


「宮殿の制圧は、先ほど終了いたしました。

 現在最終確認中ですが、内部に残っていた人員は非戦闘員が十名程、宮殿前の庭園中央の広場に集められおります。

 なお一個大隊がこちらに派兵されたと、連絡を受けております。主部隊は到着まで待機との事です」

「大隊の事は表の近衛兵達に伝えておけよ。無用な戦闘を避けるようにと」

「承知しました」

 報告を受けた俺達は、庭園中央の広場に向かった。そこで彩華と合流する。


「神楽、遅かったな」

「待たせたか、彩華。様子はどうだ」

「やっぱりもぬけの空だ。残念だが仕方ない。

 ところでアリエラ、お前達の持ち物が残っているのではないか? 取りに戻るか」

「お気遣い、ありがとうございます、彩華姉さん。ではそうさせて頂きます」

「悪いが明姫達はここで待っていてくれ。一応念のためだ。気を悪くしないでくれ」

 彩華、アリエラ、そしてヘリオの三人は宮殿内に入っていった。


 彼女達が荷物を抱えて戻ってきた頃、派兵された大隊が到着した。思った以上に早い到着だった。多分社守軍師が見越して組み込んでいたのだろう。

 こうして俺達主部隊は、目的であった契約主の救出、そして宮殿の制圧を終え、作戦は終了した。


「さて神楽……約束を……」

「兄さん……忘れてませんよね……」

「最後まで見届けろよ」

「最後まで付き合っていただきます」

「いくぞ鈴音」

「望むところ彩華姉さん、鬼姫ちゃんお願い」

『承知しました』

「だから二人とも……その物騒な物はしまって下さい!」

 読み進めていただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ