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剥離と心象の歌
黒い石を三つ吐いた。
水底に夜が増える。
「ハーラン」
かわいそうな子、と啜り泣く声たちがそう言っていた。
いつも霧がかった空気の中に聞こえる白昼夢の声。
眼前の水溜まりには、積み重なっていく黒い石の水底。
黒い石を吐くようになってから、未来が霧がかった意識の向こうに見える。
──嘆く石の記憶と並んで。
白昼夢の声たちよりも誰よりも、わたしが、わたしの結末を知っている。
自分の憐れむべき未来を。
絶望が体の中で凝り固まる。
何度も何度も石を吐く。
そしていずれ全て石になる。
黒い石を吐く回数がやにわに増えて、突然止まる。
それは終わりの合図で、やがて体そのものが石化し石像と化す。
そこにかつて壁画の内で永遠の青年だった彼がやってきて、石のような表情でわたしを打ち壊すのだ。
わたしだった破片は、ばらばらに床に散る。
終幕。
笑うことも泣くこともない。
只、絶望の石を吐いて、石になって、砕かれて、終わり。
物語が続く余地はない。
新しい章が紡がれることはない。
救いもない。
砕かれた後にはなにも残らないのだろう。




