6話 優しいドラゴンのまさかの提案
『それじゃあ、お互い落ち着いたらところで、さっきみたいに話しがかぶると面倒だからな。先にお前の話しから聞こう。さっき、何と言っていたんだ?』
「えっちょ……」
言っても良いのかな? あれを言って、ああ、これから食べるつもりだったぞなんて言われて、結局食べられたりして……。
でもなぁ。なんかこの綺麗なドラゴン、大きな猪魔獣との戦闘は凄かったけど、別にだからと言って怖いドラゴンって感じないし。それに花の蜜とか、話しをわざわざ聞いてくれるところとか、優しいドラゴンだし……。
ここは最後まで信じて、話しをするべきかな。
「えっちょ、あの。しゃきっきのおおきないきもの、あたちたべよとちたの。だからまた、たべらりぇりゅおもっちぇ。たべないでくだしゃい! はなちきいてくだしゃい!! っちぇいっちゃの」
『ああ、そういうことか。なるほど、さっきの事を考えれば、そう考えるのは当たり前だな。他には? 他にも何か言っていただろう?』
「おなじようなこと、いっちゃだけ」
『そうか、分かった。じゃあ次は、詳しいことは後で話すが、俺がさっき言ったことを話しても良いか』
「あい」
『よし、それじゃあ。俺はさっき、なぜ幼児がここに? ここは危険だ。安全な俺たちの巣まで連れて行こう、と言ったんだ。別にお前を食べたりしないから安心しろ』
え!? そんなことを言ってくれてたの!? 全然聞けてなかったよ……。
というか、え、本当に? ドラゴンが人間でチビの私を? 安全な場所に連れて行ってくれるって? ……まぁ、ドラゴンの巣が、安全かは分からないけど。それにしてもだよ、まさかそんな提案をしてくれるなんて。
「あんじぇん?」
『そうだ。もう少し行った場所に、俺たちの巣がってな。様々な種のドラゴンたちが大勢集まって暮らしているんだ。それに、他で暮らしているドラゴンたちと違って、一緒に住んでいるドラゴンたちは俺も含め、人間を襲うことはない。だから俺たちの所へ来た方が、こんな危険な魔獣の多い森の奥深くにいるより、ずっと安全だぞ』
「おしょわない?」
『ああ。というかな、俺たちは人間と関わって生きているんだ。だから襲うことはない』
「?」
『まぁ、その話しも後にしよう。どうだ、俺に付いてくるか? 聞くのを忘れていたが、どこかにお前の親がいるのなら、親の元へ送って行ってやるぞ?』
「……かじょくいない」
『……そうか。じゃあ。俺たちの所へくるで良いか? そろそろ暗くなってくるからな。ここは今もお前にとって危険な場所だが、暗くなるともっと危険な場所になるぞ』
私のことを考えてくれている、綺麗なドラゴン。ここまでの話し、本当に私を襲おうとは思ってないみたい。それよりも話してる表情や様子から、やっぱりとても心配してくれている。
それにさっき、人間と関わって生きているって言っていたよね? これってもしかしたら、綺麗なドラゴンについて行ったら、人に会える可能性もある?
うん! ここにいても、さっきみたいな魔獣に襲われて殺されるだけだろうし、ここは心配してくれている綺麗なドラゴンについて行ってみよう!!
「うん、あたち、いっちょいく!!」
『よし、決まりだ!!』
ホッとした表情を浮かべた綺麗なドラゴンが、ニッと笑って私に指を向けてきた。すると私の体がふわりと浮き上がり、そのまま空中を移動して、綺麗なドラゴンの背中にポンと乗せられたんだ。
『結界を張って飛ぶから、落ちても問題はないが。それでもなるべくしっかりと座っていてくれ』
「あい!!」
『もし怖かったら目をつぶっていろ。それから途中でトイレに行きたくなったら言ってくれ』
そういえばトイレ。今は大丈夫だけど。どうするんだろう?
『なに、トイレも問題ないからな。あとそれから……』
それから10分くらい続いた、綺麗なドラゴン注意事項。渡しを心配してくれるのは嬉しいんだけど、行かなくて良いのかな? ここはこれからもっと、危険な場所になるんでしょう?
「いかなくちぇいいの?」
『ん? ああ、いつもの感じで話してしまったな。行かないと』
私が声をかけたら、ハッとした綺麗なドラゴン。ようやく出発だよ。
『よし、それじゃあ飛ぶぞ!!』
そう言った瞬間、一気に木々のずっと上まで飛び出した綺麗なドラゴン。そして夕日に向かって、景色を眺められるくらいの、そしてちょうど心地良いくらいの速さで、空を飛び始めたんだ。




