表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/60

53話 表情の変わらないセバスチャンさんとモフリモの頭の毛

「おや、もうお戻りで?」


 お屋敷に戻ると、玄関ホールで執事長のセバスチャンさんが、使用人さんたちに何かの指示を出しているところだったよ。


「ちょっとな。……そうだな、後で報告でも良いが、なるべくだったら来てもらった方がいいか。知らせを出すなら、少しでも早い方が良いだろうからな」


「アルベルト様?」


「グレイオルに連絡は取れるか? オリヴィアでも良い。ちょっとした問題というか、良いことではあるんだが、面倒ごとでもあってだな」


「それは一体……」


 セバスチャンさんの問いに、アルベルトさんは近くにいる使用人さんたちを見たよ。


 今はとりあえずポケットの中にしっかりと潜っていろと、お屋敷に戻っている最中に、モフリモに言ったアルベルトさん。モフリモは言うことを聞いて、今も私の胸ポケットに入ったまま。


 国で保護対象に決められているくらい、とても珍しいモフリモだもんね、今は他の人に見せると、大騒ぎになるかもしれないから、隠したんだろうし。それなのに、ここで大きな声で話すのはと思ったのかも。


「……なるほど、少々お待ちを」


 するとアルベルトさんの様子に、何かを感じたらしいセバスチャンさん。軽く頷き、使用人さんたちに指示の続きをすると。

 19人くらい集まっていた使用人さんは、すぐにそれぞれどこかへと向かって行って、数分で玄関ホールには、私たちとセバスチャンさんだけになったんだ。


「これでよろしいでしょうか。それで一体何が」

 

「ああ、悪いな。だが緊急事態でもあってな。ユイ、ポケットの中身をセバスに。だが、そいつが嫌そうなら、話しだけにする」


「うん」


 私はすぐにモフリモに話しかけたよ。話している間にモフリモを確認する私。帰っている途中で、モフリモのふるふると震えている感じが消えたな、と思っていたんだけど。今のモフリモは確かに震えが止まっていて、最初よりも落ち着いた表情になっていたよ。


 良かった、少しは落ち着いてくれたみたいで。本当、さっきは倒れそうだったもんね。まぁ、その原因の1つは、エルドレッドの怖笑い顔だけどさ。元の原因を突き止めて、それを取り除くことで、モフリモが安全に暮らせるのなら、それをしてあげなくちゃ。


 それから私とガオとポヨ、そしてモフリモが運命の相手っていうのは、すべてが解決してからだな。そうじゃないと、大切な話しなのに、ゆっくり話せないもん。


『かわいいこ、でてこられる?』


『ちょっとだけ、さっきみたいにお顔だけ』


『ダメならあたまだけでいいよ』


『それもだめなら、あたまのけだけでもいいよ』

 

 あー、確かに少しで良いんだけど。頭か頭の毛だけなら、私たちの部屋に戻ってから、ゆっくり出てきてもらって良いからね。


 ガオとポヨの言葉に、目をぱちぱちしたモフリモ。それから頷いて、頭の毛だけポケットから出してくれた。……うん、ありがとう。


「ああ、ガオとポヨの言うことを聞いてくれてありがとな」


 アルベルトさんもなんとも言えない表情で、モフリモの頭の毛を見ていたよ。


「おや、そこに小さなお客様ですか?」


 いつもと表情を変えずにいるのはセバスチャンさん。


「その色だと、ミミクロでしょうか、それともポーポーでしょうか」


「確かに色はそうなんだがな、実は……」


 セバスチャンさんに近づき、小声で何かを話し始めたアルベルトさん。たぶんモフリモの説明をしているんだろう。その間に少し慣れたのか、頭の毛だけじゃなくて、頭まで出てきてくれたモフリモ。


『ここはあんぜん』


『こわくない』


『おもしろい、たのしいがいっぱい』


『あっ、でもときどきあぶない』


『そのときは、みんながささっとかいけつ』


『だからやっぱり、しんぱいない』


 ガオとポヨの説明に、ついにおでこまで出してくれたよ。そうしてその頃に、アルベルトさんとセバスチャンさんの話しも終了。


 ただ、モフリモの話しを聞いただろうセバスチャンさんの表情は、やっぱり少しの変化もなかったよ。


「かしこまりました。旦那様、奥様と連絡を取ってまいります。どちらでお待ちになりますか?」


「ユイたちの部屋にいる。その方が落ち着くだろうからな」


「承知いたしました。ではご連絡の後、お茶をお持ちいたします。私が運びますので、ご心配なく」


「よし、みんな部屋に戻るぞ」


『あのね、おへやにも、おもしろいとたのしいが、いっぱいあるよ』


『ほかよりも、いっぱい』


『オレたちのたからもの、みせてあげる』


『みんなのたからもの。かわいいこも、いっしょにくらせばいいよ。そうしたらかわいいこの、たからものにもなる』


「ほら、話しは後だ」


 そうそう、家族の話しはもうちょっと待とうね。


「頭を出してくれて、ありがとうな。これから行く場所まで、また潜っててくれ」


 ゆっくりとポケットに戻るモフリモ。そうして私たちは自分の部屋へ向かい始めた。


 ただ途中で、アルベルトさんにポケットに入っていろと言われているのに、少し慣れたのか、モフリモが顔までポケットから出してきたの。

 そうしたら反対側から、お屋敷で働いているコックさんたちやってきて、慌てて隠れさせた私。その時モフリモが、とっても悲しそうな顔をしていたんだ。


 このモフリモの悲しそうな顔が、まさかな出来事に繋がるなんて、思いもしなかったよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ