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51話 小さく可愛い子はモフリモ

 その途端だった。小さく可愛い子の体が思い切り飛び上がり、そのまま私の手から転がり落ちたんだ。


 そして急いで走ろうとしたんだけど、足がもつれるのか、慌てているからなのか、その場漫画みたいに、カサカサカサッと思い切り手足を動かすだけで走れず。そうして少しその動きをした後、力尽きその場にペチャっと、地面にお腹を付けた。


 だけどもう1度何とか立ち上がり、今度は足はもつれながらも、何とか前に進む事ができて。私の洋服のポケットまでくると、急いでそのポケットの中に隠れたよ。


『『……』』


「……」


『……』


「おい、どうしたんだ? エルドレッド、誰が居た? なんで全員急に黙ったんだ」


 小さく可愛い子の行動にし~んとなるわたしたち。そんな私たちにいろいろ聞いてくるアルベルトさん。今の……。


『おじちゃん、こわいこわいした』


『うん。ボクたちはびっくりしない。でもこの子はおじちゃんに、ぜったいにびっくりした』


「いきなりかお、だめよ」


『おじさんの、おおきなかおびっくり』


『こわいかお、びっくり』


「怖い顔って、別に俺は普通だろう。普通のドラゴン。怖いっていうのは、じいちゃんのことを言うんだ」


『でも、おおきなかおはこわい』


『おじちゃん、だめよ』


「こわいかおで、でも、にっこりわりゃう」


『笑う?』


『そう、わらう。ねぇ、かわいいこ、このおじちゃん、こわくない』


『ボクたちのおじさん。ちいさいこたべないから、こわくない』


「ここにいりゅみんな、こわくない。だかりゃ、かくりぇなくちぇ、だいじょぶ。でてきちぇ、だいじょぶよ」


 私たちはポケットに隠れちゃった、小さく可愛い子に話しかけたよ。そうして数分後、ポケットがモゾモゾ動いて、そっとそっと顔を出してきた、小さく可愛い子。ほら! エルドレッド笑って!!


 そう思いながらエルドレッドを見たんだけど……。びくりと体を動かし、またすぐに小さく可愛い子はポケットに隠れちゃって。私とガオとポヨは、じっとエルドレッドを見たよ。


『なんだ、俺はちゃんと笑っていたぞ。どうして隠れたんだ!?』


 その顔で笑ってる? 本当に? というかいつもの方がまだ良かったよ。今のエルドレッドの顔と言ったら。

 普通にしていても強面の顔で、少しむすっとしているように見えるのに、そこにニヤリ顔が合わさって、怒り笑い? みたいな、より怖い顔になっていたんだ。


『おじちゃん、だめ』


『それはボクたちもだめ』


『あとでれんしゅう』


『うん、ぼくたちの、まほうのれんしゅうのときに、いっしょにれんしゅうしよう』


『練習って、お前たちな』


「プッ!!」


『おい、アルベルト! お前笑ったな!! 覚えておけよ!!』


「何のことだか? それよりも、その正体不明の奴は誰だったんだ」


『……はぁ、こっちはこっちで、少々問題だな。いや、かなり問題か』


「問題? そんなに危険な奴だったのか!?」


 え? なになに!? 問題って、この小さく可愛い子の何が問題なの!? エルドレッドの言葉に慌てたよね。


『とりあえずそっちに戻る。ほら、お前たち、花壇から出ろ。ユイは、そのままそれを潰さずに、外へ出られそうか?』


「う~ん、わかりゃない」


『そうか。アルベルト! そっちから少し引っ張って、ユイを起こしてやってくれ。ユイの洋服のポケットに、やつが隠れてしまっているんだ。このままだと潰すかもしれん』


「分かった!!」


 先に外へ出ていくガオとポヨ。そのあとアルベルトさんが私を起こしてくれて、それを確かめてからエルドレッドが花壇から顔を出したよ。


「ユイ、膝を擦りむいてるじゃないか。話しが終わったら、すぐに治療するぞ」


「うん」


「で、エルドレッド、問題ってなんだ」


『あー、おそらくこれが世間に知られれば、ちょっとした騒ぎになるかもしれん』


「は?」


『見たのが少しだったからな、まだ完璧にそうだとはいえないが、おそらくあれで間違いないだろう。しかもそれの変異種だ』


「変異種だって!?」


『ユイ、それに少しで良いから、顔を出すように言ってくれるか? 俺たちは絶対にそれを襲わないし、どちらかといえば、このままお前を守るために、お前をここで保護してやると。守ってやると言ってくれ』


 エルドレッドに言われた通り、そのまま小さく可愛い子に伝えたい私。ガオとポヨも心配して、いっぱい話しかけてくれたよ。


 そうしたらさっきみたいにモゾモゾとポケットが少しだけ動いて、顔だけ出してくれたんだ。

 と、それと同時に、驚いた顔をしたアルベルトさん。それから目を手で覆って、大きな溜め息を吐いたよ。


『お前たちは、会うのははじめてか?』


『うん、はじめて』


『かわいいこ、はじめて』


「あたちも」


『この小さな生き物は……』


 種族名はモフリモ。見た目は、ふわふわの毛玉のようにまんまるで、大きさは子供の私の手に乗るサイズ。大人になってもそれの倍くらい。全身を覆う毛は、スノのように真っ白。スノはこの世界での言うところの雪のことね。


 顔は小さなネコに似ていて、丸い目と三角の耳がちょこんと毛の中から見える。普通に歩くけど、ころころ転がりながら移動する事も。


 嬉しい楽しい時は、ふわっと少し浮く。逆に寂しい悲しい時は、自分の毛で毛玉を作り、その毛玉の中に埋もれる。よくぷにゃ~と鳴く。


 『癒しの毛玉』と呼ばれていて、そばにいるだけで心が落ち着き、その後に幸運が訪れると言われている。

 そのため。密猟される事があり、今は保護の対象になっているって。それでも密売がなくならなくて、国は今、新しい法律を作り、さらに厳しく犯罪者を取り締まろうとしているらしい。


 まさかの小さく可愛い子は、保護対象の魔獣だったよ。あれ、でも今の説明だと、もふりもはスノにように真っ白って。


 私はモフリモを確認したよ。

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