5話 かぶる会話と花の蜜
「……」
『……』
黙り込む私と綺麗なドラゴン。ドキドキしていたし、今だって思って話すことに集中してから、綺麗なドラゴンがなんて言ってたの分からなかったよ。何て言ったんだろう?
でもう~ん、これなら? 何か話しかけてくれたって事は、もしかしたらもしかするかも? よし、今のうちにもう1度話しかけてみよう! そう思い、また大きく息を吸い込んだ私。そして……。
「たべないでくだしゃい! はなちきいてくだしゃい!!」
「なぜ幼児がここに? ここは危険だ。安全な俺たちの巣まで連れて行こう」
「……」
『……』
何だって? 何で被るんだよ。負けるな結衣! 私が先に話すんだ!!
「たべないでくだしゃい! はなちきいてくだしゃい!!」
「なぜ幼児がここに? ここは危険だ。安全な俺たちの巣まで連れて行こう」
「……」
『……』
なんなの!? 私が先に話そうとしてるのに!!
「あたちがしゃきに、しゃべりゅのよ!!」
『おい、先に俺の話しを聞くんだ!!』
「……」
『……』
「ちょっちょ! はなしゃいでよ!!」
『俺が先に話すから、話すんじゃない!!』
「……」
『……』
「あたちが……」
『ちょっと待て!!』
おお、初めてズレた! じゃなくて、私が話してるのに何で止めるの。私が先に話すって、さっきから言ってるじゃん!
「あたちがしゃきにはなしゅの! なんで、いっちょにはなちてくりゅの!?」
『いやいや、俺の話しを先に聞けと、さっきから言っているだろう!!』
「……」
『……』
「あたちの……」
『あー、待て待て。一旦話すのをやめろ』
そう綺麗なドラゴンに言われて、私はとりあえず話すのをやめたよ。
『いいか、そこを動くな。すぐに戻る』
そう言うと、綺麗なドラゴンがドスンッドスンッと、今度は右の方へ歩いて行き、しゃがんで何かをし始めたよ。でもすぐにそれを止めると私の方へ戻ってきて、何かを私に差し出してきたんだ。
『これを飲め』
「……なにこりぇ?」
『知らないのか? シルキーの蜜で、飲むと落ち着くんだ。俺も飲むから、とりあえず2人で落ち着いてから話しをしよう。お前の話しから聞くから』
私は差し出された物をそっと受け取る。受け取った物は、チューリップみたいな形をした花で、中を覗くと水色の液体が入っていたよ。
綺麗なドラゴンはシルキーの蜜って言ってたよね? シルキーって言う花で、この水色の液体が密なのかな? これ、飲んでも大丈夫なの?
『苦くもからくもない、甘くて美味しい蜜だぞ』
「……」
『何だ、その疑っている目は。ああ、急に知らないものを渡されて、しかも飲めと言われたから、疑っているのか? ……お前、小さな人間のくせに、随分としっかりしているな。ほら、俺が先に飲むから見ていろ』
どうやら声に出したわけじゃなかったけど、顔に出てたみたい。
それにしても、あんな大きな爪でよくこんな小さな花を持てるな、と思いながら綺麗なドラゴンを見ていると。綺麗なドラゴンは大きな口を開け、蜜だけじゃなく花ごと口の中に放り込んだ。それは飲むじゃなくて食べるだよ。
『なっ、大丈夫そうだろう? お前は花は食べないで、蜜だけ飲めばいい』
すぐに私を襲わないで、わざわざ飲めば落ち着く蜜を持ってきてくれたんだから、私をすぐに殺すつもりはないのかな? それに綺麗なドラゴンも同じ物を飲んだから問題なし?
まぁ、これで死んだら死んだで、バカ神の所へ行って怒るだけだし。さっきまで死にそうになってたんだから、飲んでも良いか。
それに……。う~ん、なんか表情が、私を心配してくれてるみたい? ここは綺麗なドラゴンを信じて飲んでみよう。
そう考えて、花をコップみたいにして蜜を飲んだ私。感想から言うと、とっても美味しいシロップ? かな。
それから蜜を飲んですぐに、なんか気持ちが落ち着いてきた気がして。飲み干す頃には、さっきまでのイライラが収まっていたんだ。本当に落ち着く蜜だったよ。
「ぷはぁ!!」
『……なんか今の、俺たちの所にいる、じじぃたちみたいだな』
「ん? なんちぇ?」
『いや、何でもない。どうだ、美味しかっただろう? それに落ち着いたはずだ』
「うん、おいちかっちゃ。しょりぇに、おちちゅいた。ありがちょ!!」
『フッ、それなら良いよし!』
綺麗なドラゴンが、ニッと笑ったよ。




