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32話 お別れの挨拶なのに、どんどん下がる大人の威厳

『時々遊びに来てね』


『また湖で遊ぼうぜ』


『う~ん、人間の1ヶ月に1回、遊びに来ればいいよ』


『そうすれば、僕たちにとってはすぐ』


『ユイはちょっとすぐ』


『うん、オレ、あそびくる』


『ボクもあそびくる』


 みんなが一斉に私の方を見てきた。


「う、うん、あたちもあそびくる」


 来れるかは何とも言えないけど、今の流れだとそう言っておかないとね。まぁ、本心で言えば、私もみんなと遊びたいし。


『お前たち、何を勝手に約束している』


『そうよ、みんな街まで行くのよ』


『次のパートナー探しまでには無理じゃないか』


 大人ドラゴンたちがそう言うと、一斉に子供ドラゴンたちから抗議の声が上がる。


『何で! 大人はケンカすると、すぐに戻ってくるでしょう!』


『そうだよ! それからいろいろ疲れたわぁ、とか言いながら、休憩!! ってちょこちょこ帰ってくる!』


『ご飯食べに帰ってくることもあるわ!!』


『そうよ! この前は6日ごとに、ご飯食べに帰ってきてたじゃん!!』


『それからお酒も飲みにきてた!!』


 子供ドラゴンたちの抗議に、大人ドラゴンたちが黙る。それからドラゴン騎士たちも。おい大人組、何してる? これじゃあ帰る帰らない前に、子供たちに示しがつかないじゃないか。子供というものは、大人の行動をよく見ているんだからな。


 何でこんな馬鹿みたいに騒ぎが起こっているか。それは今日、私たちがドラゴンの巣から旅立つから。


 私の養子が決まり、皆が家族になることが決まった日から、これといった問題は起きず。予定通り、先にママとアデリーヌお姉さんと、それからフェリシアお姉ちゃんが、街へと帰っていき。お兄ちゃんとお姉ちゃんだけ、声に出さない時は普通に言うことにしたよ。どうしてもまだ慣れなくてね。


 そしてまた数日後、今回の良縁の儀は無事終了。今回は15組のドラゴン騎士が誕生して、最近では久しぶりの、たくさんのドラゴン騎士の誕生だって、パパたちが喜んでいたよ。


 そうして良縁の儀終了後から行われたパーティーで、ママたちが言っていた通り、ドラゴンお父さんやパパたちはみんな二日酔いに。具合が悪くなりすぎて、誰も起きることができず。実はドラゴンの巣を旅立つ今日も、お父さんドラゴンとパパたちは、本調子じゃないらしい。


 だけど、飛べないわけじゃないし、予定通りに帰らないとママたちに怒られるって。さっき二日酔いを抑える薬を飲んで、少しでも具合を回復させていたよ。


 そして今、ガオとポヨと私は、見送りに来てくれた子供ドラゴンたちと、遊ぶ約束をしているところで。子供ドラゴンたちが大人ドラゴンたちに、みんなで抗議しているところね。


 まぁ、大人ドラゴンたちの言いたいことも分かるんだけどね。私もさ、そうすぐ遊びにはこられないだろうと思うし。


 長いことドラゴンに乗っている人なら街まで3日。ドラゴンだけだと2日以内。私みたいに慣れていない、それかガオとポヨみたいに小さな子供ドラゴンの場合は、最低でも5日かかるって聞いたの。


 だから遊びにくるだけで、かなりの日数かかるし。私たちに付いて来てくれる誰かが、長いこと街から出ることになるんだよ。そうなると、そう簡単に遊びにこられないだろうなって。


 だけど子供ドラゴンたちの抗議を聞いたらね。大人がそれなんだから、みんなすぐに遊びに来られると思っちゃうよ。


『大人はできる! 俺たちできないはダメ!!』


『『『ダメ!!』』』


『はぁ、分かった分かった。なるべくちょくちょく遊びにくるようにする』


『約束』


『『『約束!!』』』


『ああ、約束だ』


「俺もなるべく許可する」


『『『絶対!!』』』


『はぁ、これ以上騒がれたら敵わん』


「まったくだ。まだ体調が本調子じゃないって言うのに」


『お前たちがしっかりしないからだ。私のように、酒に飲まれず、いつでも万全の状態でいなければ』


 具合の悪さと、子供ドラゴンたちの相手が大変で諦めたのか、遊びにくることを約束したお父さんドラゴンとパパ。そんな2人を注意するパパのパートナーのインフェリオ 。


 その様子をジト目で見る、アルディスお兄ちゃん。お兄ちゃんのパートナーのノクティアは、知らん顔をして途中で食べるおやつのチェック中。まだ少ししかみんなといないけど、なんとなくそれぞれの感じが分かって気がする。


『よし、それじゃあ、そろそろ出発するぞ』


『ガオ、ポヨ、ユイ!! 絶対に遊びに来いよ!!』


『ガオポヨパパと、おじさんが約束破った時は、ガオポヨママと人間のママに言って、叱ってもらって!!』


『すぐに叱ってもらってね!!』


『1回じゃ聞かないかもしれないから、何回も怒ってもらって!!』


 お父さんたちの威厳が、どんどん下がっていく……。


 街までは遠いから、私たちはお父さんドラゴンに乗ったり、パパと一緒に乗せてもらいながら行くよ。私たちも飛ぶ練習は街へ行ってから。


 すぐにお父さんドラゴンの背中に乗って、子供ドラゴンたちの方を見る。最初にドラゴン騎士たちが、ドラゴンたちに挨拶をしながら飛び立ち、次にヴァルガンにぃとアルディスお兄ちゃんが飛び。最後に私たちとパパたちが少しだけ飛んで。


『あれの練習も忘れるなよ! 俺たちも練習するから!!』


『約束よ!!』


『うん、オレ、れんしゅうする』


『ボクも』


『あたちも!!』


『じゃあ少しも間、ここのことは頼むぞ!!』


「次回の良縁の儀、よろしく頼む』


 そう言ってみんなに手を振る中、お父さんドラゴンとインフェリオが一気に空へと舞い上がり。いよいよ私は、街へ向かって飛び始めたんだ。

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