28話 子供ドラゴンの約束とタジタジな大人たち
「あー、であるからして……」
『しかしながら……』
『なぁ、なんか2人とも様子がおかしくないか?』
『ああ、だよな。話し方がぎこちないって言うか』
『こう、言葉が途切れるっていうか』
「なぁ、グレイオル様、おかしくないか?」
「おかしいってその言い方ちょっとな」
「じゃあ、変じゃないかって? どう言ったって、別の意味にも取られそうじゃないか。それよりも、話し方がおかしいって話しだよ」
「まぁな。いつもの力強さを感じないよな」
「来る時の挨拶はいつも通りだったのに」
「それに、何で困った顔をしながら話しをしているんだ?」
今回、良縁の儀に参加しない騎士とドラゴンたちから、こんな会話が聞こえてくる。前に立つ参加者の騎士やドラゴンたち、それから辺境伯一家には、ヒソヒソ声だから届いていないと思うけど。
でもまぁ、聞こえていようがいまいが、どちらにしても参加する騎士やドラゴンたちも、あれがおかしいとは思っているだろうね。
ちなみに、斜め後ろで待機している子供ドラゴンたちや私たちには、しっかり聞こえているよ。
そうして、その話しを聞いて、小さな声で話し始める子供ドラゴンたち。
『ちゃんとお約束守ってくれるかな?』
『ね、お約束はお約束だもんね』
『なぁなぁ、何でみんなこそこそお話ししてるんだ? それにお話ししてるガオポヨパパとおじさん、みんながこそこそ話してる通り、ちょっとおかしいよな』
『あのね、私たちガオポヨパパとおじさんと、大切な約束をしたのよ』
『大切な約束?』
『いつもさ、挨拶長いじゃん。あとは話しとか説明とか。その話しを遊んで帰ってくる時に……』
少し前にあった出来事を、今日遊んでいたメンバーがみんなに話し始める。途中で辺境伯一家と会ったところらね。まぁ、最初の方は簡単にかな。
そうして数分もしないで、いよいよ問題の部分、挨拶が長い問題の話しに。結局帰ってくるまで、ずっと挨拶について文句を言い続けた子供ドラゴンたち。
広場に着いてからは、良縁の儀の開会の式が始まるまで、一旦自由行動だったんだけれど。みんな解散しないで、まさかのグレイオル様とお父さんドラゴンに、挨拶について提言し始めて。
『ねぇ、やっぱり長い挨拶、いらないと思うんだ』
『みんな良縁の儀、時間がかかるでしょう? だから早く始めた方が良いし』
『私たちも飽きちゃうし、お話し楽しくないし』
『よくない事は直していきましょうって、先生がいつも言ってる』
この先生は、本当に先生ね。もちろん子供ドラゴンたちは両親に、たくさんのことを習うよ。でもそれだけじゃ足りないって、細かくいろいろと教えてくれる、先生ドラゴンがいるんだ。
その先生がね、これまでは良いと思っていたことが、今になって本当はダメだったと気づいたり、逆にダメと思っていたものが良かったりと、変わることがあります。
そういう時は、皆の楽しいがいっぱいになるように、どんどん直していきましょう。そしてもしまたダメだったとしても次も直して、良いものを増やしていくことが大切です。って子供ドラゴンたちに教えていて。
その話しを、子供ドラゴンたちはお父さんドラゴンとグレイオル様に、言い始めたんだ。
『挨拶、みんな困ってる。困るはダメってこと、悪いってこと』
『だから直した方が良い』
『ボクたちが考えたやつ。こんにちは、これはからパートナー探しスタート!! で良いと思う』
『今日から直してみようよ。そうしたらみんな、良いって言ってくれるはず』
『絶対に良いって言ってくれるよ。それでみんなパートナー探しの時間が長くなるし、ボクたちは飽きてダラダラにならない』
『それに、すぐご飯が食べられるでしょう?』
『だから今日から、こんにちは、これはからパートナー探しスタート!! にしよう!!』
その話しを聞いた時の大人組といったら。お父さんドラゴンとグレイオル様は、汗をかきながら、なんとも言えない困った表情をしているし。お母さんドラゴンたちとオリヴィア様は笑いを堪えているし。
ヴァルガン様とアデリーヌ様は笑いを堪えきれず、お母さんドラゴンとオリヴィア様に。離れた場所で笑いなさい、みんな真剣に話しているのよ、と自分たちのことは棚に上げ、その場から退場させ。
アルディス様はスンって顔で、フェリシア様はニッコリ微笑んでいたよ。2人のこの感情はいまいち分からなかったけど……。
ただ。その様子がパートナードラゴンたちも同じでね。パートナーって相性が良いって聞いていたでしょう? なんとも言えない話をしている最中だったけど、こういう時の様子もそっくりなんだなぁって、なんか感心しちゃったよね。
と、こんな提言をした子供ドラゴンたち。みんなの素直な気持ちに、お父さんドラゴンたちはタジタジ。そこで助け舟を出したのが、お母さんドラゴンとオリヴィア様。
今までは確かに長すぎたかもしれないわね。今日からは少し短くしてみましょう。それでダメなら、そう、また直せば良いのよ。そうね試しに今回は、これくらいの時間にしたらそうかしら、と。15分以内で終わらせるってことを決めてくれたの。
子供たちに言われて、反論することができなかったお父さんドラゴンとグレイオル様は、それを了承するしかなく。
でも急だったから、騎士やドラゴンたちが言っていたような、変な挨拶になっちゃってるんだよ。そしてその約束を守るかどうか、子供ドラゴンたちは確認中。
『凄いね!! そんな約束したんだ!!l』
『じゃあ、約束通りなら、あと少しで終わりってことだよね?』
『みんなでちゃんと確認しなくちゃ!』
『お約束は大切!!』
『みんな、集中だよ!!』
きっと初めて、こんなに真剣に話しを聞かれているんだろうなぁ、なんてのんびりと考えていた私。ただ、私たちはこの時気づいていなかったんだけど、周りではくすくすと、笑いが起こっていたらしい。




