25話 楽しい日々の終わりに、訪れる新しい出会い
散々湖で遊んだ私たち。夕方少し前になったから帰ることに。いやぁ、楽しかった。
お母さんドラゴンが、水で遊ぶ時の洋服も作ってくれたから、濡れるのを気にせずに遊べるし。
たまたま居合わせたドラゴンに、魔法で結界を張ってもらって。湖の中を自由に散策できたし。うん、遊ぶには最高の場所だよ。まさか水の中を歩けるなんてね。
この2ヶ月、いろいろな遊びを子共ドラゴンたちが教えてくれて。ドラゴンの生活も教えてもらって、楽しいことばかり。転生早々、数分で殺されそうになったなんて思えないほど、幸せな生活を送っているよ。
ちなみに、人にはまだ1回も会っていない。他の種族にもね。私がここへ来た時、お父さんドラゴンたちは、もうすぐ辺境伯のグレイオル様が来るって言っていたけど。そのすぐの感覚が私とドラゴンたちだと、だいぶ違っていたんだよね。
私の感覚でのすぐって、1週間とか長くて1ヶ月くらいだと思っていて。その感覚で待っていたんだけど。なかなか来ないから、どうしたの? って聞いたの。
そうしたらもうすぐって2ヶ月か3ヶ月だぞ。人間のもうすぐはそれぐらいだろ? って言われてさ。一応は私に合わせて言ってくれていたらしい。自分たちの2、3ヶ月は、人の数日と変わらない感じだって。
それでお父さんドラゴンの年齢を聞いたら、なんと300歳だった。それでもまだまだぜんぜん若いって。ドラゴンは長生きなんだろうなぁとは思っていたけど、300歳でまだまだ若いのか。そりゃあ月日だって、人と感覚が違くなるわけだ。
ということで2ヶ月経ったから、もしかしたら明日にでもグレイオル様は、ここへやってくるかもしれないんだ。貴族の、しかも偉い人だからね。ちょっとドキドキだよ。だって今までに、そんな偉い人と関わることなんてなかったからね。
『ゆい、たのしかったね』
『みずのなか、おもしろかった』
「うん、おもちろかっちゃね」
『またあそびたい』
『おみずのなか、あるけるおじさん、いるといい』
「しょだね」
みんながみんな、同じ結界をはれるわけじゃないみたい。火に強い結界とか、水に強い結界とか、全体的に使える結界とか。後は魔法でも、水の中を歩くことができる魔法があるらしいよ。
湖や他の場所へ遊びにった時に、その結界を張れるドラゴンか、魔法を使えるドラゴンがいると、また水の中で遊べるんだけどね。
『今日の夜のご飯なんだろうな』
『今日はパパたちの番』
『丸焼きばっかりかも』
『あっ、でもギザおじさんいるよ』
『なら、美味しいご飯ね』
『おいしいごはん、いっぱいたべる』
『ボクも』
『ん? あれ?』
なんて、今日の夕飯について話しながら帰る私たち。その時、今日集まったメンバーの中で、1番年上の5歳の男の子。みんなからはくるりんお兄ちゃんと呼ばれている子共ドラゴンが、あれ? と首を傾げたんだ。
何でくるりんお兄ちゃんか。しっぽの先がくるりんって丸まってるから。あとそのくるりんしっぽに、カッコいい蝶ネクタイを巻いてるよ。
『どうしたの?』
『なんかいっぱいドラゴンが近づいてくる? それに人間も』
『ドラゴン、人間?』
『……う~ん、分からない』
ドラゴンは少し離れた場所にいる魔獣や人の気配を、察知することができる。ただ、それはだんだんと身につくもので。今いるメンバーの中だと、くるりんお兄ちゃんが、近くに来た気配を感じ取れる感じかな。だから他の子は分からないの。
『ねぇねぇ、ドラゴンと人間なんでしょう? そろそろだって、みんな騒いでたから、おじさんたちが着いたんじゃない?』
『あっ、そうかもね』
『お口お兄ちゃんが、この頃毎日煩いもんね』
お口お兄ちゃん。自分は力があるから、前回と同じで、もしもビビッと感じる人間に出会わなくても。きっとみんなが自分のことを気に入って、どんどん契約を申し込んでくるだろう。だから、今回のパートナー探しも大変だ。
なんて、言ってるドラゴンがいてね。みんなが言うには、どうやら毎回同じことを言っているらしい。
だけど毎回、人と話しはするものの、契約までは行かなくて。しかもどんどんと言うほど、契約の申し込みはなく。だから子共ドラゴンたちは、お口ドラゴンって呼んでいるらしい。
『くるりんが気づく距離だから、もし敵なら今頃パパたちが攻撃しにいってるはずだよ。でも誰も騒いでないってことは、やっぱりおじさんたちじゃないかな』
『だよね』
『ガオとポヨは、会うの初めてだよな』
『そう、はじめて』
『このまえは、おるすばん』
生まれて1年のガオとポヨ。前回のパートナー探しの時は、小さすぎるからって、洞窟で留守番してたらしい。だから今回初めて会うんだって。
『ん? どうどんこっちくるぞ?』
くるりんお兄ちゃんが止まり振り返る。私たちもそれに続き、止まって後ろを見たよ。そうしたら、目を細めれば見える距離に何かが見えて。
『あっ、やっぱりおじさんだ』
『ね、やっぱりそうだっやね』
ドラゴンは視力がすこぶる良いらしい。私が目を細めて点に見えるものが、しっかり見えるんだ。それで確認できたんだから、間違いないだろう。
『でも、何でこっちに飛んでくるんだろうね』
『おじさんたちがくるなら、別の方角からじゃない?』
『ね、そうだよね』
『まぁ良いか。飛んでるうちにきっと追いついてくるよ。僕達も帰らないとダメだから行こう』
また飛び始める私たち。そんな中、一気にドキドキしてきた私。だってついに人に会うんだからね。
時々振り変えると、点に見えていたものがどんどん近づいてきて。点だったものが、どんどんハッキリしてくる。そう、ドラゴンに人が乗っていたよ。
そうして、くるりがグレイオル様に気づいてから数分後……。
「久しぶりだな、元気だったか」
ついにグレイオル様が、私たちに追いついたよ。




