17話 セシルさんの破壊的センス
『そのお前を送ろうとして失敗した、ミスばかりのおじさんとやらは、お前のことをちゃんと思っていたようだな』
『街で暮らすために必要な物が、全て入っているわ。入り過ぎているくらいかしらね。少し出してみても良いかしら』
「あい」
お父さんドラゴンとお母さんドラゴンが、次々にマジックバックから荷物を出していく。それを見ながら、あー、そういえばあれも入れてもらったかも、これも入れてもらったっけ。なんていろいろ思い出した私。
転生早々死にそうになったもんだから、バッグの中身のことをすっかり忘れていたよ。
『うん、やっぱりあなたのおじさんは、悪い人ではなさそうだわ』
『というか随分と過保護のような気もするがな。それかよほどの金持ちか。……ユーイ、バッグを見せてくれと言った俺たちがいうのもなんだが、このバッグに入っているものは、高価な物……大切な物が多い。これからもしバッグの中を見せてくれと誰かに言われても、簡単に見せてはいけないぞ』
『そうね。もしも中身が分かれば、このバッグを奪おうとして、襲われて奪われてしまうかもしれない。いいえ、奪われるだけならまだ良いけれど、もしかしたら殺される可能性もあるわ。そうならないためにも、簡単にバッグを見せてはダメよ』
「あい」
ん? そんなに高価な物を入れてもらったっけな? 着替えとか、食べ物とか、お金でしょう、それから怪我をした時の、飲むとすぐに治るポーションとか、回復系のポーションを入れてもらって。後は?
まぁ、お父さんお母さんドラゴンが言うんだから、言うことを聞いておこう。だって魔獣から助かったのに、今度はバッグで襲われたくないもんね。
『それにしても、これはどうしてかしらね。大人用の洋服が何枚か入っているわ。ユイのサイズじゃないでしょうに。……それに、センスが悪い。あなたのおじさんは、あなたのことをとても考えてくれていたけれど、センスは破壊的だったみたいね』
洋服かぁ。神様のことはおじさんで説明したけど……。実際に物を用意してくれたのはバカ神なんだ。でも、その中身を決めたのはセシルさんなんだよね。バカ神は信用できないからって、どんな物を用意するか細かく指定してくれたの。
それで何を入れたかは、軽く聞いていたんだけど。それがどういう物か、洋服がどんな洋服かとか、ポーションがどんな瓶に入っているかとか。もうバッグに入った状態で渡されたから、ここに来て初めて実物を見たんだよ、
うん、この洋服。これは……。セシルさんってこんな趣味してたの? それともこの世界ではこの洋服が普通なのか。
でも、ドラゴンお母さんはたちが来ている洋服は、モデルな洋服だし。私が着させてもらった洋服は、カッコ可愛い洋服だし。何よりお母さんドラゴンは、セシルさんのセンスが破壊的だって言ったよね。
セシルさんが用意してくれた洋服。どんな洋服かというと、まず普通のから。普通っていっても、成人した私が着るはずだった物だからね。これはこれで、どうなんだとは思うけど。
ケモ耳にしっぽに、おそらくこの世界の魔獣がモチーフになっているだろう、可愛いアニマルコスチュームが入っていたの。
うさ耳、ねこミミ、わんこに、リスのような可愛い耳としっぽがついていて、洋服も少しモコモコとした生地で作られているんだ。
ね、普通に可愛いから、良いは良いんだけど。でも成人している人が、街中で着るのはちょっと。今のちびっ子の私だったら、大丈夫だろうけど。
そうして問題の、センスが破壊的な方は。これがなんとも……。ゴシックロリータとパンク、ヴィジュアル系を融合させたような洋服と。スイートロリータ、パンク、ヴィジュアル系を融合させたような。逆に最先端のファッションなんじゃって思える洋服だったんだ。
そりゃあ、モデルなお母さんドラゴンがこの洋服を見れば、センスが破壊的だって言うよ。この洋服、この世界で着ても大丈夫なのか?
「おかしゃんどりゃごん、どりゃごんもまちのひちょも、このよふくきりゅ?」
『いいえ、初めて見たわよ、こんな洋服。なんかいろいろな要素が混ざったような洋服よね。みんなバラバラにして、生地ごとに分けて、同じ生地どうしで洋服を作り直せば。着られる洋服ができるかもしれないけど』
おお、さすがモデルなお母さんドラゴン。いろいろな洋服が混ざっていることに、すぐに気がついたよ。
『これ預かって良いかしら。それに他の洋服も。私がカッコよくて可愛い洋服に作り直してみるわ。サイズも合わないし』
「おねがいちましゅ」
う~ん、セシルさんのセンスはどうなってるんだろう? 本当のこれが良いって思ってたのかな? でもあれだけしっかり者のセシルさんが、わざとこんな洋服を入れるとは思わないし。
ということで、洋服だけ全てマジックバッグから出し、他は全てしまうと、次の話に映ったよ。
ただこの時のお母さんドラゴンの顔は、洋服のことがあとを引いているのか、凄く嫌そうな顔をしていたし。洋服を見たガオとポヨは、ゲラゲラ、ケラケラおかしな服って笑ってたけどね。




