10話 交わす固い握手
さて、近づいたは良いものの、これから何をすれば良い? 何を話せば良いかな? もう1回名前でも言ってみる? 何もしないのもね。
「はじめまちて、あたちゆい!」
『オレ、ガオ!!』
『ボ、ボク、ポヤ』
そうしてまた、お互いをジッと見たままになる私たち。次はどうしようかな。次の言葉を考える。
ただ、う~ん。何だろうこの感じ。近くに寄ってガオとポヨを見ているうちに、こう、2匹のことを、心に感じるようになったていうか。
と思っていたら、ガオとポヨが後ろを向いて、小さな声で話し始めたよ。
『ポヨ、へんなかんじする』
『ボクも、なんかへんなかんじする』
『オレ、このにんげんのこどもこわくないぞ』
『ボクも。それに、おともだちになれるきがする』
『オレもだぞ!』
こそこそ話しているつもりなんだろうけど、全部聞こえてるよ? でも、うん。ガオとポヨに、悪い印象は持たれてないみたい。これなら本当に友達になれるかも。
私はガオとポヨに、もう1度話してかけてみることにしたよ。ただ、声をかけようとした瞬間、2人がちょうど向き直ったもんだから、言葉が止まっちゃって。またお互いを見るだけになっちゃったんだ。
う~ん、タイミングよ。私は何気なしに、頭をかこうと右手を上げる。すると次の瞬間、ガオとポヤヨが私の真似をして、右手を上げて頭をかこうとしたんだ。手が小さくて、届いてなかったけど。
私は右手を下げて左手を上げて、お腹をぽんっ叩いてみる。するとこれまた、ガオとポヨは私の真似をして、しっかりお腹もぽんっと叩いたよ。こ、これは……!!
その後の私といえば、右手を上げて左手を上げて、足も交互に上げて。それが終わると綺麗なドラゴンの蹴りの真似をしてみたり、ついでにパンチもしてみたり。左右にちょっとだけ歩いてみたり、ジャンプしてみたり。最後にお尻を突き出して、フリフリ振ってみたよ。
いい歳して何してるんだって思われるかもしれないけど、今の私はチビだから良いだろう。
それにどうにも言動がね。なんか子供っぽくなっているっていうか。もしかしたらだけど、子供の体に引っ張られて、精神が子供っぽくなってるのかも?
ろ、それよりも今は、お尻フリフリだよ。私はジッとガオとポヨを見る。2人はお尻フリフリまで、全部私の動作を真似をしてくれたんだ。このお尻フリフリも真似してくれたらパーフェクト、完璧だよ。どう? やってくれる?
『……』
『……』
「……」
……フリフリ、フリフリ。フリフリ、フリフリ、ピタッ。
やっ、やってくれた!!
私はフリフリをやめて、しっかりと前を向いてガオとポヨを見る。2人もしっかりと立って、私を見てくる。
動いているうちに、ちょっと離れちゃった私たち。お互いを見たままゆっくりと歩き出し、さっきみたいにお互いが触れられる距離まで近づいたら……。
ガッッ!! 3人一緒に手を握り、うん!! って頷いたんだ。何だろうこの感じ。たぶん2人も、私と同じ気持ちだと思うんだけど。
ガオとポヨが私の真似をしてくれているうちに、どんどん2人のことが分かってきて。最後のフリフリをしてもらった瞬間、私たちは一心同体!! って思えたんだよね。それで気持ちが高まって、固い握手を交わしたっていうか。
と、私たちが固い握手を交わしている時だった。どこからともなく、『ぷっ!』と吹き出す声が聞こえて。それをかわきりに、集まっていたドラゴンたちが笑い始めたんだ。
『今のは何だ! ハハハハハッ!』
『なんとも言えない動きだったな!! 蹴りもパンチもできているようで、できていなかったしな』
『やっぱり子供の、こういうところが可愛いよなぁ』
ちょっと! 私たちは真面目にやってたんだけど?
『……お前たちは何をしているんだ』
お父さんドラゴンまで首を降って、溜め息を吐いてるし。
『まぁ、仲良くできそうで良かった。握手をしたということは、もう友達になれたってことだろう』
『パパ、ちがう』
『うん、ちがう』
「ちがうよね」
『ん? どういうことだ? 握手をして頷いていただろう? その握手は何の握手なんだ?』
『ともだちだけど、ともだちじゃない』
『ともだちよりも、ともだち』
「ともだちいじょ」
『ともだちだけど友達じゃない? よりも友達? それにユーイのは友達以上と言ったのか?』
「しょ、ともだちいじょ」
『オレたちいっしょ』
『うん、いっしょ』
「いっちょね」
そう、私とガオとポヨが言った時だった。いきなり私たち3人の体から、ポワッとした光が少しだけ溢れて。私たち3人をその光が包んだんだ。




