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その年下男子、訳ありにつき ~崖っぷちキャリア女子の逆転オフィスラブ~  作者: naomikoryo


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19/21

第20話:告白は夜明けに

片桐の不正発覚によって一時は揺らいだアリュール・コスメティクスの信用も、今や確かな再生の波に乗っていた。

その震源となったのは、間違いなくアリュール・ファクトリー。

再生の象徴として生まれたスキンケアブランド『RE-BIRTH』は、品質と物語性を武器に全国展開を果たし、SNSでも話題沸騰。発売からわずか数週間で、リピート注文が殺到する大ヒット商品へと成長していた。


かつて「閉鎖候補」とされた地方工場は、今や会社の象徴とも言える存在となり、業界紙にも“再生の聖地”と謳われるまでになった。


その中心には、いつも久美と優斗の姿があった。



その夜、工場の食堂では、『RE-BIRTH』全国発売決定と久美の正式な工場長就任を祝う盛大なパーティが開かれていた。


円卓を囲んだ社員たちは、皆、晴れやかな顔で笑い合い、労をねぎらい、未来を語り合っていた。

誰かがスピーカーに音楽を流し、手拍子と笑い声が弾む。

まるで、文化祭の打ち上げのような、熱と温もりが空間を包んでいた。


久美はその輪の中で、ゆっくりとグラスを傾けながら、目の前に広がる光景を静かに見つめていた。

あれほど沈んでいたこの場所に、今はこんなにも多くの笑顔が咲いている。

それを眺めながら、心の奥がじんわりと温かくなる。


——ここまで、本当に長かった。

思い返せば、初めてこの工場に赴任したあの日。

誰からも信用されず、孤独と焦燥に押し潰されそうだった自分が、今はこの場所に「仲間」と呼べる人たちと共にいる。

夢のような、でも確かな現実だった。


「久美工場長、一杯いかがですか!」

「工場長、最高のプロジェクトをありがとう!」


社員たちが次々と久美にグラスを差し出し、祝福の言葉を贈る。

久美は一人ひとりに丁寧に応じ、乾杯を交わしていった。

自然と頬が緩み、笑顔がこぼれる。


ふと、視線を感じて振り向くと——

少し離れた位置で、優斗が静かにこちらを見ていた。

派手な笑顔ではない。ただ、満足げに、穏やかに、久美を見つめている。


目が合った瞬間、彼はゆっくりと微笑んだ。


それだけで、久美の胸がふわりと熱くなる。

「頑張ったね」そう言ってくれている気がして、たまらなく嬉しかった。



宴が終わった後、久美と優斗は無言で連れ立って屋上へと上がった。

ここは二人にとって、幾度も悩みを共有し、想いを交わしてきた特別な場所だった。


夜の風が涼しくて、熱を帯びた頬に心地よく触れる。

満天の星が広がる空は、澄み切っていて、どこまでも深い。


「……すごい夜だね」

久美が空を仰ぎながら呟くと、隣で優斗が小さく頷いた。


「でも、本当にすごいのは、これからだよ」

その声には、確かな確信と、わずかな緊張が滲んでいた。


久美が顔を向けたその瞬間、優斗の腕がそっと彼女の肩に回された。


「俺たちなら、もっと面白いことができる。

もっとたくさんの人を、笑顔にできるはずだ」


その言葉は、彼の信念であり、彼女への信頼でもあった。

久美は彼の胸に、そっと頭を預けた。

彼の鼓動が、まるで太鼓のように力強く、自分を支えてくれる。


(この鼓動が、ずっと隣にあったら……どれだけ心強いだろう)


「……なあ、久美さん」

優斗の声が少しだけ低く、慎重になった。


「ん?」


「俺、言わなきゃいけないことがあるんだ」


久美は顔を上げ、彼の目をまっすぐに見つめた。

その瞳の奥に、ためらいも、飾りもなかった。


「俺……あんたのことが好きだ。

結婚を前提に、付き合ってほしい」


一瞬、時間が止まったような気がした。


それは、どこまでもまっすぐで、誠実な告白だった。

優斗らしい、飾らない言葉。

でも、その言葉の重みが、久美の心に深く染み渡っていく。


胸が高鳴る。

涙が、自然とあふれてきた。


「……私で、いいの?」


震える声で問いかけると、優斗は力強く答えた。


「あんたじゃなきゃダメなんだ」


その一言が、すべてだった。


久美の目から、一筋の涙がこぼれる。

それは、悲しみでも、不安でもない。

再生の物語の終着点に立ち、ようやく手にした「確信」の涙だった。


「……はい。喜んで」


久美は最高の笑顔で頷いた。

優斗はそっと彼女を抱き寄せ、温かく、深く、唇を重ねた。


星空の下、二つの影がひとつに重なったその瞬間。

再生の物語は、静かに、けれど確かに、新たな物語へと踏み出していた。


これは、終わりではない。

久美と優斗、そしてアリュール・ファクトリーの、新しい「始まり」のプロローグなのだ。

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