05
持て囃されていたのは事実だが、実力がなかったかと聞かれれば、けっしてそんなことはなかった。
むしろ実力はあった。あってしまったんだ。
「ウィズ、合わせて!」
サイクロプスが棍棒を振り上げたのを確認したライラがその懐に入り込む。
「火弾!」
振り下ろされた棍棒を魔法で跳ね返すと、ライラがサイクロプスの腕を斬り落とす。
「火弾!」
魔法でサイクロプスの視界を塞ぐ。痛みと視界不良で、混乱したサイクロプスの攻撃は空を切る。
「ナイス!」
ライラは俺の魔法が着弾する前から走り出し、サイクロプスの無防備な首を斬り落とした。
「ねぇ、宝箱だよ」
宝箱に駆け寄って開けるライラ。サイクロプスから出るアイテムは転移石だ。
名前のとおり、ダンジョン内で使うと、ダンジョンの入口に転移させてくれるもので、買うと非常に高価で、俺たちは持っていなかった。
「どうする?」
その日は本当に調子が良かった。転移石を持つのも、サイクロプスを倒すのも、これが初めてだったんだ。
「まだ行けるよね」
「もちろん」
この判断が、間違っていた。
ライラは口で息をしていて、俺の魔力は半分ほどしか残っていなかった。余力のない状態で、これより奥に進むなど言語道断。死にに行くようなものだ。それでも、俺たちは自信のままに進んだ。
サイクロプスと戦って以降も、現れる敵の強さはあまり変わらない。
ゴブリンゴブリンコボルトゴブリン。たまにオークといった比率だ。予想より強くない魔物たちに、俺たちの自信はより増大していった。
「行くよ!」
薄暗い洞窟の中に取り付けられた扉を開ける。
洞窟の奥に鎮座していたのは、巨大なドラゴン。
眠りから目覚め、俺たちに向かって咆哮を上げた。
「炎弾!」
斬り込むライラに向けて吐かれるブレスを打ち消す。
ドラゴンの振り下ろされる前足を器用にライラは剣でいなす。
「ウィズ!」
ドラゴンの前足を抑えるライラの青い目が俺の赤い目を刺す。
「了解!」
俺はすぐに魔法陣を組み立てる。
俺たちにそれ以上の会話は要らなかった。
ライラが前足を弾くのと同時にドラゴンの顔に炎弾を連続で撃ち込む。
絶えず撃ち込まれ続ける炎弾だったが、ドラゴンにダメージはない。それでも俺は撃つのをやめない。
気が狂ったわけでも、自棄になったわけでもない。
俺の火弾に、鬱陶しそうな表情で首を振るドラゴン。疎かになった足元では、ライラが虎視眈々とその首に狙いを定めていた。
「行けっ!」
俺は一際大きな火弾を放ち、それがドラゴンに当たる直前で弾けさせた。
花火のように破裂した火弾の中からライラが飛び上がり、その首元目掛けて斬りかかった。




