第9章「旅は道ずれ世は”推し”で」
今回は最速で進みたいはずが…
なぜか“推し召喚”でギャグバトル回!
馬の推しに時間をおされて、街まであとどれくらい?
─推理裁判が終わった翌朝。
神門は草の上にごろーんと転がり、ぬいぐるみセレスを抱えてため息。
「……はぁ、なんかもう、やる気が全く起きないや。あの“推し裁判”で頭使いすぎた。……お腹すいたよね。」
【お前の質問攻めが強烈すぎて、私も、消耗した。】
「また今度、聞かせてもらうからね。まずは、今日街に行ってみようと思うの。セレス!地図、見せて!」
セレスが魔法でヒラリと地図を出す。
「……え、次の街、遠くない?」
【徒歩だと“まる三日”かかるみたいだな。】
神門はしばらく考える。そして
【今までの”推し召喚”移動系はほぼゼロだからな。さぁどうする?】
「セレスは移動魔法使えてたよね?ほら、前回、なんて言ったかな…この世界の魔王さんに呼ばれた時…」
【……あれは、イレギュラーだよ。神門の命と私の命が危なかったからだ。基本、私は案内役。だから、あてにしないで欲しい…】
神門はそれはすごい、顔でセレスを見ていた…。
「役に立たないな!セレスったら。もう!しょうがない!」
あきらめた表情で、立ち上がり、おしりや足に着いた草を払う。
「徒歩でなんて、絶対、無理!!できれば…空飛ぶじゅうたんとか、ほうきとか、ドラゴンとか、移動手段は使っていいんだよね?」
【…かまわない。】
セレスが腕組み。神門の顔の近くまで飛んだ。
【どうせなら“最速”で移動できるのがいいな。】
「…うーん、最速ね、あ!…じゃあ決めた!
”時速100キロの推し”キャラに頼ろう!」
神門は母からもらった本を抱きしめ、大きく叫ぶ。
「セレスティアノーーート!いでよ、
『時速100kmの白馬の王子様』の
ハヤスギルン・サスケ王子と白馬ハヤブサ!」
──まばゆい風とともに、 緑髪の王子様と、つややかな白馬が神門たちの前に現れる。 神門は嬉しさのあまり、発狂していた。
「いやぁぁぁ!かっこいい……!
やっぱり私の“推し”は最高だぁ……!」
サスケ王子が隣で微笑む。
「こんにちは姫君、ハヤスギール王国の第一王子、ハヤスギルン・サスケです。そして、こちらが相棒の白馬ハヤブサ……って、あれ?」
サスケ王子がハヤブサの顔を覗き込むと、白馬ハヤブサの方を見ている神門の姿。
「ん?姫君、王子は私だ、そっちは私の相棒…友と呼ぶべき馬、白馬のハヤブサだ。」
神門は「はっ!」としてサスケ王子にご挨拶をする。
「サスケ王子様、私は神門です、呼んでそうそうすみません。ハヤブサを撫でてもいいですかー!!」
……。
皆が一瞬固まった。
そう、神門の今回の”推し”は白馬ハヤブサの方だったのだ。
サスケ王子は苦笑いをしながら、申し訳なさそうに苦笑い。
「…すまない。姫君。…実は今日だけは…特別ハヤブサには触ったり乗ったりできないんです。」
「え?なんで…は!!まさか、”あの日”なんですか?」
「そうなんだ。”あの日”なんだよ。」
神門とサスケ王子は暗い雰囲気に包まれる…。
【”あの日”?とはどうゆうことだ?説明してくれ神門!!】
「…”あの日”とは、、本にも謎と書いてあったんだけど、ハヤブサとサスケ王子は、364日ずっと一緒に生活しているんだけど……なぜか、1年に1日だけ、どうしても離れなければならない日があるみたいなんです。…なんでも、人を乗せたがらない日なんだとか…それが”あの日”なんです…。」
神門とサスケは二人で、肩を落とす。
「よく知っているね。さすが私のファンだな…。だから、ハヤブサは今日機嫌が悪いんだ…すまない。」
王子が苦笑いしながら謝る。
「ハヤブサ…嘘でしょ…せ、せっかく“推し召喚”したのにーー。」
白馬ハヤブサは、くりくりの瞳で神門をじっと見つめ、 “今日だけは勘弁して”とでも言いたげに、サスケの後ろに隠れている。
セレスが苦笑いでつぶやく。
【……(今日だけは勘弁して)だとさ、あきらめよ。神門。】
「え?セレス?ハヤブサの言葉わかるの?」
【当たり前だ。私は”心読み”ができるからな】
神門は、ハヤブサの首元を優しくなでながら嬉しそうにつぶやく。
「ハヤブサ……わたし、今日、あなたに会えて幸せよ。だから、後でわたしを、背中に乗せてくれる?」
白馬ハヤブサが静かに鼻を鳴らし、優しく神門のほっぺに顔を寄せる。
だが、まだ乗せる気はないようだ…
【神門…ハヤブサは…病にかかっているらしいぞ…】
サスケがいきにり、飛びついて、セレスを問い詰める!
「それは誠か!ハヤブサと話せるのか??ハヤブサ。病とは、なんだ?深刻な病なのか?クマみたいなウサギみたいな天使殿…。」
【…セレスだ。うむ、言いにくいが…深刻だ】
「ガーンっ…。」
サスケ王子は崩れ落ちるように膝を着いた。神門は悲しくなりセレスを問い詰める。
「セレス、教えて。ハヤブサはなんの病なの?」
沈黙が続く…。
沈黙が続き、重い口を開くセレス。
【このハヤブサは…毎日、サスケと一緒に遊んでいる、ニコイチレベルの仲良しだと思っているらしい。毎日が楽しいと言っている…だけど、毎日…一緒にいても…】
「毎日、一緒にいてもなんだ??」
緊張が走るーーー。
みんなが、セレスに注目し、口を開く。
【毎日…一緒にいても】
「毎日一緒にいても?」
息を飲む音を立て、みんなが注目した…
【では、、「お前ばかり楽しく、嫁探しだのと、女の子とイチャイチャ話やがって、たまには俺の彼女も探しやがれ、クソバカ王子が!!」だそうだ。】
「……。」
【…。】
──沈黙と共に、冷たい風が吹く…。
ハヤブサは、「病」と言う言い訳をしているだけの、ただの不満を解消する為の一日だったらしい。
「ハ、ハヤブサ、すまぬ。そなたの気持ちは全く気づかなかった。すまぬ…。そんなに溜まっていたとは…不満を言えず毎日、一緒に付き合ってくれていたんだな。ありがとう。ハヤブサ。ただ…
(バカ王子は余計だ。”アホ馬”よ)」
「ヒヒーンっ!」
【わかってくれたんだな相棒よ!!…
(アホ馬って言うな”足臭王子”が)】
「相棒よ。わかるに決まってるじゃないか。364日も一緒にいるんだから!
(足臭?!そこまで言うか?馬刺しにでもして食べてしまうぞ。)」
【…。】
「ヒヒ!!ヒヒーーンーーー!」
【(”馬刺し”だと?お前サイテーだな。)】
「お前こそ!!なんならもう君とは今日から解散しようか?」
「ヒヒヒヒヒヒヒーン」
【(望むところだーーー)】
神門がついにキレはじめた。
「ストッーープ!だめだよ二人とも喧嘩したら。どうして、サスケ王子、解散なんて言うの!ハヤブサも…!思ってない事は口にしたらダメ!!」
二人は顔を見合せ、気まずい雰囲気の中、セレスが口を開く。
【はぁ…。とりあえず、サスケはハヤブサの気持ちはわかったのか?】
「…わかって…いる。すまないと思っている。」
【ハヤブサは?】
「ヒヒヒヒヒっヒヒヒヒヒヒヒーンヒヒ」
【わるぐち言ってすまないと思っている】
【よし、じゃあ、仲直りだ。こんな異世界で喧嘩をしていても、二人に何も得にならない。それより、早く乗せて欲しいんだが…。お腹ペコペコなんだ。】
神門とセレスは、二人で疲れ果てたかのような顔で、背中を合わせて座り込む。
「ハヤブサよ。仲直りだ。私も気をつけよう。可愛い子が居たらお前にも紹介する事にする!!それでいいか!」
「ヒヒーンヒヒーン」
【まだ解説するのか?…。】
【(わかった、”可愛い馬”にしてくれよな!
”うま”い話には気をつけろよな。)……。だそうだ。】
「ハヤブサよ。お前はやっぱり最高の相棒だよ笑。
わっははは。」
「ヒヒヒヒーン笑」
ふたりが「わっははは!」と笑いあったその瞬間、虹色の光がふわりと広がり――
「”推し召喚”のタイムリミットだな。ありがとう。二人とも。最高の日になった!またな。」
サスケ王子とハヤブサは二人は楽しそうに、抱き合いながら、夜空に、綺麗な光を浴びながらに消えて行きました。
「え?」【え?】
残された二人は呆然と空を見上げ、
「……結局、何しに来たんだろう、今日の“推し召喚”……」
残された、二人は呆然と空を見ながら
今日の”推し召喚”を後悔していた二人なのでした。。。
街に行けるのは一体いつなんだか…。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
今回は、まさかの“推し馬回”でした(笑)
サスケ王子と白馬ハヤブサの本音バトル、まさかの“推し”が馬側って…!
神門もセレスも巻き込まれて、ただの旅がギャグとツッコミの応酬に。
【『時速100kmの白馬の王子様』あらすじ】
ハヤスギール国の第一王子サスケと、相棒の白馬ハヤブサが姫探しの旅をするドタバタ物語。
364日一緒にいるんだが、一日だけ二人は一緒にいれない秘密とは?(笑)
本当は一気に街まで行くはずが、
今日はハヤブサの“絶対に乗せない日”だったので、まさかのケンカ回。
推しに振り回されても、やっぱり「推しと一緒」は幸せ!
…な、寄り道エピソードでした。
1つ補足で説明しときます。
・推し召喚は一日一人なのに、ここでサスケ王子とハヤブサを召喚しているのはなぜの質問ですが、
単純に。サスケ王子とハヤブサはニコイチだから。
が答えです。いつも二人で行動しているからです。
もちろん、個人も召喚できるし、グループ名で召喚したら、召喚できます。すみません。ガバガバで。
・推しはただ今、8人召喚しております。
(サスケ王子とハヤブサで2人分です。)
次回はちゃんと移動できる!?新しい街&新キャラも予定してますので、
ぜひまた読みに来てくださいね!