第7章「“推し”に推されて…」
こんにちは!
今回は“母なる推し”で、みかどが癒され&決意するお話です。ちょっとほっこり。
推し(母)のパワーで元気、取り戻します!
森の朝。
目を覚ました神門は、ぬくもりを感じて目を開ける――
膝まくらしてくれていた”魔王サタン”は、既に本の世界へ戻っていた。
「……サタンさん…ありがとう。」
隣には、ふわもこのセレス。
【…サタンは朝早くに本へ帰ったよ。ずっと君を守ってくれていた。】
【魔王級の“推し召喚”は、今の神門にはまだ重いみたいだな。体が慣れていないんだ。】
「そうなんだ…セレスありがとう。……私、ちょっと疲れちゃったよ……」
【そうだろな。“推し召喚”の力はお前にしか使えない。特別な能力だから…】 【この世界で生きなければならないんだ…頑張ってくれ…】
神門の胸にはじわじわと
「現実に帰りたい」「ママに会いたい」
気持ちが大きくなっていく。
「……セレス私、ママを呼びたい。現代に戻りたいよ…わたし、帰れないの?……」
ふ、と気づくと、セレスは魔法で虹の光を出し、神門にそっと寄り添った。
【神門…この世界では、他の世界と交流は許されていないんだ…。だから直接的に君の”母親”を呼ぶことはできない。すまない。
この世界で生きていくには、
決意や自信がないとダメなんだ。
今の君には休息が必要だ。だから今日の……
”推し召喚”は自分に使うといい。】
そう言うと、セレスのぬいぐるみは、座りながら動かなくなった…。
「え?…セレス?死んじゃったの?」
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死んでない。
私も少し休息をとる。
神門、ちゃんと君の声は聞こえてるから安心しなさい。
”推し召喚”を有効に使え。
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頭からセレスの声がする。
「一人にしないでセレス…。私、どうしたら…」
返事は返してはくれなかった…。
セレスのぬいぐるみを抱き、悲しみにくれている神門。
そして、何かを決めたのか、
ぬいぐるみをギュッと抱きしめながら叫んだ。
「ねぇ、セレス、大魔法使いを呼んでも、いいかな?」
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…。“推し召喚”は君の選択だ。
好きにしなさい。
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神門は涙目で叫ぶ。
「セレスティアノーーート!いでよ、
『マザークロニクル』のマザーマミー!」
――まばゆい光の中、ふっくら優しい雰囲気の、
大きなエプロン姿の女性が現れる。
「おやまぁ、神門ちゃんかい?」
「え?マザーマミー!私を知ってるの?」
「私を誰だと思ってるんだい?
大魔法使いのマザーマミーだよ?(笑)
なんでもお見通しだよ。神門ちゃん」
マザーマミーは、35年間“魔法使い”として数々の人を癒してきた大ベテラン。
神門の髪をそっとなで、温かな魔法で心を包む。
「あなたはがんばりすぎて、ちょっぴり疲れただけ。 ……いいのよ、泣いたって。悲しい時は、思いっきり泣きなさい。」
すると、マザーマミーは
優しい魔法で“お母さん”本好歩美の姿に変身。
「ママ……?」
「神門!聞いたわよ、よく頑張っているわね。寂しい時は、心の中で呼んでね。あなたなら絶対、大丈夫だから。」
みかどは涙を流しながら今の不安・現代への想いを全部ぶつける。
「ママ会いたい……!私、もうこの世界で、やっていけないよ…」
マザーマミー(神門ママの姿)は優しく、神門の頭をぽんぽん。
「神門。きっと、大丈夫。
あなたには“推し”がいるじゃない。大丈夫。必ずまた、会えるから…信じて…」
神門は涙をぬぐい、ぎゅっと決意の顔に。
「……うん!わかった。私、もうちょっとだけ頑張ってみる!」
マザーマミー(神門ママの姿)は神門を抱きしめながら言った。
「セレスは…少し意地悪なとこあるけど、優しくて、真っ直ぐで…ふふ、神門と相性合うかもね…セレス!!聞いてる?笑。神門をよろしくね。じゃあ」
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…。
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「え、ママ。待って。まだ話したいことが沢山…ママーママーーー!」
マザーマミーの魔法は解け、
泣きながら崩れる神門に優しくそっと寄り添うマザーマミー。
「ごめんね。私の魔法でもこれが限界だったわ。でも、大丈夫よ。あなたの”母親”が大丈夫って言うんだもの!きっと、この世界でやっていける。自信持って!私は神門ちゃん推しよ!!!」
神門はマザーマミーの話を聞いて決意した。
ここに来て、色々あって、整理しなきゃならないこと沢山あるけども。
私はこの異世界に来てしまった。
だから、生きるしかない。
また”ママ”に会って真相を聞くまで、そして、、、
セレスを問いつめるために…
決意を固め、マザーマミーにお礼を言った。
「マザーマミー!ありがとう。元気がでました!私は…私はなぜ、この異世界に飛ばされたのか、なぜみんな私に本当のことを教えてくれないのか!腹が立ちます!!知りたいです!だから、頑張ります」
「そうよ神門ちゃん!大丈夫。あなたなら、できるわ。だって大魔法使いの私を召喚しちゃうんですもの。誰にも出来ないわ。あなたの”推し召喚”の能力は最強かもしれないわね!」
元気づけられた神門はすごく、生き生きしていた。
なんたって…
マザーマミーの事を推していたのも紛れも無く神門なのだから。
会えた喜びも、幸せな一時なのだ。
その後も、マザーマミーが登場する、小説の『マザークロニクル』の話で盛り上がっていた神門。
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【全く、歩美め。余計な一言を…。】
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その後一日中、マザーマミーと語り合い、
マミーの魔法で、小さいドールハウスを出してもらい、可愛いパジャマを着て、現代のベッドで女子会のように楽しんでいた神門。
「そろそろ時間だね。ドールハウスに結界を張ってあるから安心してね。それにしても、いっぱいお喋りしたわね。あー楽しかった。また来るわね!神門ちゃん!」
そう言うと、眩い光に包まれたマザーマミーは消えていき、神門もスヤスヤと嬉しそうに夢の中へ。
神門はセレスに問い詰めることを目標に…
セレスの抜け殻のぬいぐるみを強く抱き抱え、
この瞬間、この時を胸に刻み。
この出会いに”推し召喚”に感謝をしながら眠りについたのだった。
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【明日、嫌な予感しかしないな…
神門に問い詰められるのか…本当に、余計な事を言ってくれたもんだな。歩美。】
「ふふ、あなたから連絡が来て、安心したわセレス。いきなり神門が現代から消えたから、凄く心配したけどね。良かったわ。そっちに行ってただなんてね。”運命”は変えられないのね。」
【封印してある本を開けたお前の娘が悪い…歩美…元気なのか?】
「…えぇ。元気よ。騎士も元気でこっちの世界で一緒にやっているわ。でも、神門を心配して世界を壊しかねないから、話してくるわね。笑。」
【あぁ、相変わらず”魔王”のやる事は理解出来んな。】
「セレス、”私たち”の大事な娘、神門をよろしくね。」
【…わかっている。】
「また、連絡待ってるわね。それじゃ」
【……。神門。お前の世界の選択はどうなるのだろうな。】
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真夜中の神門が寝ている間に、セレスはぬいぐるみに戻り、明日の”尋問”の答えを、、嫌と言うほど考えて眠りについた…。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
今回は“マザーマミー”の癒し回。 神門は母との再会で涙、そして“推し”に背中を押されて元気復活! ほっこり&じんわり回でした。
【『マザークロニクル』あらすじ】
魔法の国で選ばれし“お母さん魔法使い”が主人公。
マザーマミーは35年以上、困っている人を優しい魔法で癒し続ける、心も腕も超一流の大魔法使い。
母のような包容力で、みんなを守る“みんなのママ”的存在です!
次回、ついにセレスへの“尋問タイム”…お楽しみに!