第3章「”推し召喚”でなにをする?」
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推し勇者ハロルドとの夢のような出会い――
でも、異世界ライフはまだまだ始まったばかりです。
今回は、新たな案内役、セレスティアノートの分身。
(ぬいぐるみver.のセレス)と一緒に、
“推し召喚”能力の本当の意味や、この世界の危険についても少しだけ掘り下げます。
神門の「異世界×推し活」はじまり!!
「推し様が……消えた……」
目の前で“ポン”と音を立てて消えてしまった、
勇者ハロルドの残像を、私はしばらく見つめていた。
「……夢なのかな……」
呆然と立ち尽くしていると、草むらから何かが落ちたような音が聞こえた。
恐る恐る近寄って見てみたら、草むらに小さなぬいぐるみが転がっていた。
クマなのか猫なのか…絶妙なマスコットだ。
「……何?なんで、こんなとこにぬいぐるみ?」
その瞬間、ぬいぐるみの目がピカッと光る。
【これなら話しやすいだろう、神門。】
「うわっ、ぬいぐるみが喋った。……ん?その声はセレス!?」
ぬいぐるみがピョコンと起き上がり、堂々と胸を張った。
【案内役セレスティアノートだ。しばらく、この姿で案内役をする。よろしく。】
「え、可愛いー!なになに?何のお話のキャラなの?特技は?性格は?本当の名前は?」
ぬいぐるみ(セレス)を上下左右と動かしてはひっぱり、好き放題されている
【…。おい、やめろ。神門。私はお前の案内役だ。おもちゃじゃない。大事に扱え!】
ぬいぐるみのくせに、なぜか偉そうで頼りがいのある声と雰囲気。
「でも…外見と中身のギャップ、すごいんだけど……」
【見た目がどうであれ、中身は変わらない…。】
「はい……。ごめんなさい。でも、正直ちょっと可愛いかも。」
【……ふん。可愛いくて当然だ。お前に似合うように想像して作ったんだからな。】
思わず笑ってしまう私に、
セレス(ぬいぐるみVer.)は、少しムッとしたように耳をピクピク動かしていた――。
【神門……。さて、これからどうする?】
「……え、あ、うん。あのさ、セレス。“推し召喚”って、私、いったい、何をすればいいの?」
【さっきも説明したが、この世界は、いわゆるRPGの世界のようなものだ。人間もいるし、魔物もいる。昼間は安全だが、夜には強いモンスターも現れる。もちろん腹も減るし、怪我もすれば、病気にもなる。】
「えっ、とてもリアル……。ファンタジーの世界なのに結構…シビアなのね…」
【当然だ。ここでは君自身の命も、本気で危険にさらされる。油断するな。】
「じゃあ、”推し召喚”は“魔法”…?みたいなもの?」
【そうだな。”魔法”に近いんだが、それだけじゃない。君が読んだ事のある本に登場するキャラなら、設定に忠実に、再現して召喚できる。勇者だろうと、魔王だろうと、ドラゴンだろうと、1日1人(匹)だけ呼び出せる。】
「魔王…。ド、ドラゴンも!?」
【ああ、そうだ。ただし、使い方を間違えれば大変な事になるぞ。召喚できる人数も、今の君はまだ、“1日1人”が限界だ。今後、経験を積めば……もしかすると増えるかもしれない。だが、今はよく考えて召喚することだ。】
「……じゃあ、例えば、万能の魔法使いに、現実に帰してくれるよう、お願いしたら…どうなるの?」
【それは絶対に禁止されている。もし“異世界から現実へ”の直接的な行動、移動行為の類いを、願いとして叶えようとした場合――君の魂はこの世界に縛られ、永遠に彷徨うことになる。】
「……えっ、やだぁっ!?」
【覚えておくといい。能力の使い方に、ペナルティは、ないのだが“世界の境界線を超える”願いだけは、決して口にするな。わかったな?】
私はごくりと唾を飲み込んだ。
“推しと会える”という夢のような力に浮かれていたけど、
この世界で生きるって、案外シビアで、危険もいっぱいなのかもしれない――。
「……じゃあ、これから私はどうすれば?」
【もちろん、自由だ。“推し召喚”の能力はよく考えて使うことだな。君次第で、この世界は天国にも地獄にもなる。】
その言葉の意味を、私はこれから思い知ることになるのだった――。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
案内役セレスのぬいぐるみ姿を紹介します。
ぬいぐるみ(中身はセレスティアノート)
「クマネコ型」のぬいぐるみで、
薄いパステルカラーの虹色ふわもこボディ。
しっぽは長め、顔はクマ寄りで、可愛く、
背中には小さな羽が生えていて空も飛べます。
見た目はキュートですが、中身は男前なセレス。
次回もよろしくお願いします。笑