第2章「目覚めた世界で”推し召喚”」
来てくれてありがとうございます!
地味でオタクな本好神門。
まさか異世界で美少女ヒロインになる日が来るなんて…
推しに会えるどころか、推しを“召喚”できる世界が始まりました!
今回は初めての推し召喚――どうなるんでしょう?笑
「……どこ、ここ?」
目を開けた瞬間、見知らぬ草原と澄んだ空が広がっていた。
さっきまで家の倉庫にいたはずなのに、
今、水面に映った自分の姿に、思わず息を呑む。
ふわふわのロングヘア。
大きな琥珀色の瞳。
――地味な“お下げ眼鏡女子”の私は、どこへ行った?
ふっと気づいて、持ち物を見ると
昔から愛用していた、
”母からのプレゼントの本”色んなタイトルと少しの詳細が書いてある分厚い本を片手に抱えて持っていた。
「これを見ながらよく、図書館や本屋さんに、本、マンガ、小説を探しに行ってたっけな。」
反対の肩には小さなバックも持っていた。
見た事ない、少し古そうな茶色いバック。
中身を確認してみると、ハンカチ一枚に、見た事ない赤いノートと羽付きペンが入っていた。
色んな事が一度に起こって、
戸惑っていると…
頭の中に、落ち着いた声が響く。
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混乱するのも当然だ。本好神門。
私はセレスティアノート。セレスでいい…。
この世界では案内役だ…よろしくな。
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「…セ…レス?…頭の中で声がする…。これは夢?」
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残念ながら、夢ではない。
神門…お前は…
この世界に選ばれてしまった。
能力を使って、
この世界を地獄のように、魔物でいっぱいにしてもいい。
また、この世界を天国のように皆が、幸せに暮らせる豊かな世界にしてもよい。
困ってる人を助ける勇者になってもいい、
何をするにも自由だ…。ただ…。
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「ま、魔物に、天国?勇者?能力って。なんなの一体、しかも、ただって?ただ…なによ???」
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神門。
お前は異世界転移している。
なので、命を落とせば終わる…
つまり、この世界で死ねば神門の魂は死ぬ。
つまりゲームオーバーってやつだな。
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ビックリはしたが自分でも驚くほど
冷静に嘘のような話を聞いていた。
「わ、わ、わからないけど……。わかったわ。つまり私は、異世界転移した…”能力持ち”のヒロインって事ね。」
セレスの話を聞いていると、不思議と落ち着いた。
まるでお気に入りの声優が、小説を読んでくれているみたいに。
神門はそんなふうに思いながら、セレスの声を受け止めていた。
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さすが…「本好歩美」の娘だな。
そう…だから、この世界を好きに…
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「ママを知ってるの!!「本好歩美」は私のママよ。ママも…。もしかして、この世界に?そうか、だから私にこの本を…うんうん。何となく、色々、理解してきたわ。」
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話がわかる娘で良かった。詳しい話は追追。
とりあえず能力の説明をする。いいか?
本好神門
お前の能力は”推し召喚”だ。
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「お、”推し召喚”?」
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そうだ。この世界もお前の元の世界と同じ…
24時間で1日が過ぎる…。
つまり、朝、昼、夜が当然あると言うこと、
そして、
【現実で読んだ本のキャラを、1日1人だけこの世界(異世界)に呼び出せる】
能力が備わっている。
理解したか?
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「……推し召喚…って?なんて、なんて、
なんて、最高の能力なの。神様に感謝しかない。」
どうやら、私には悲しいや帰りたいよりも、
”推しに会える”、と言う感情しかないようだ。
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試しに、”おためし召喚”してみるか?
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「えっ、ホントに…嘘…誰にしよう。」
夢じゃない?と半信半疑で、私は考え込む。
色んな疑問はに二の次で私は最初に呼ぶ”推し”しか頭になかった。
母からのプレゼントである本を、高速でページを開きながら、目をハートにさせて、タイトルを探している。
そして、悩んだ末に決めたのは、
小さい頃からの憧れの勇者がいるあの本……。
『勇者とアークドラゴン』の勇者ハロルド
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頭で想像し、心で想え。
そして浮かび上がる言葉が
現実となる、言霊となる…
さぁ…神門叫んでみよ。
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自然と頭に浮かんで来た言葉…それは、、
「セレスティアノーーート!いでよ、
『勇者とアークドラゴン』のハロルド!」
本を高く掲げて叫んだ瞬間、
まばゆい光の中から、見覚えのある“勇者”が現れた。
「……君が僕を呼んだのかい? 初対面のはずなのに、不思議と懐かしい気がするよ。」
目の前のハロルドは、小説の挿絵で何度も見たあの姿そのまま。
金色の髪に、青いマント――
まさに私の推しの王子様!
「あ、あの、私、ファンです……!ずっとあなたの冒険を応援してて……。本当に、本当に……本物のハロルド…さん、ですよね!?」
「はは、それは光栄だ。君のおかげで、また誰かの世界を救えそうな気がするよ。
ところで……ここはどこなんだい?なんだか見慣れない景色だな」
「私もよくわからなくて……でも、私が召喚したみたいです。私…どうしても…会いたかったから……」
「そうか。勇者は、いつだって“誰かのため”に現れるものさ。君が僕を呼んでくれて嬉しいよ。
それに、君の瞳はとても綺麗だ。まるで朝焼けの琥珀石みたいだね」
「え、えええ!?」
ドキドキしすぎて息が詰まりそうになる。
(この時は、会えた事に夢中で、本の中のキャラ、ハロルドは勇者だが、女癖が悪いと評判の勇者の設定がある事にまだ気づかなかった…。)
「君の瞳は僕を釘付けにする。釘付けにしたバツとして、”口付け”をしても問題は無いよね…」
頭から火が出そうになり、完全に舞い上がる私。
(ちょ、ちょっと待って…!本当に推しが目の前で…!?無理無理、心臓もたない…!)
その時、不意にセレスの声が響いた。
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なお、“おためし召喚”は5分間限定。
本格的な召喚は、また明日以降だ。
それじゃ、楽しいライフを……
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「え、5分……?」
ハロルドの顔が神門に近づくそして手を取った瞬間、
“ポン”
まばゆい光と共に、勇者ハロルドは消えてしまった。
私はぼう然と手を伸ばしたまま、その場に立ち尽くしていた。
(……やっぱり夢なんじゃない…?いや、夢なら、もう少し続いてよ…!)
「もうーーーーーーーーーーーーー!」
こうして、私の甘くて切ないファンタジー…
ギャグにもなりそうな、よく、わからない
物語ははじまったのだった…。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
今回、神門が最初に召喚した本は
『勇者とアークドラゴン』――
小さい頃から読んでいた王道な本です。
物語の主人公は、女性に少しだらしないけれど、どこか憎めないイケメン勇者ハロルド…笑
【『勇者とアークドラゴン』のあらすじ】
英雄を夢見る青年ハロルドが、伝説のアークドラゴン討伐に挑む冒険。
旅の果てに、彼は見事ドラゴンを打ち倒し、
王国の英雄となってお姫様との結婚。
ハッピーエンドな物語です!
毎回、”推し本”はオリジナルで考えて、
後書きに載せようと思ってますのでwww
次回も、どうぞよろしくお願いいたします。