第10章「街には推しがいっぱいだ」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
今回は「新しいギルドの街フォルテリア編」
ついにペガサス契約、謎のイケメン登場と“推し”が盛りだくさんです!
にぎやかな冒険の続きを、どうぞ。
森の中、長い道のりを歩き続けた神門は、セレスと一緒に小さな焚き火を囲みながら、昨日もらったシェフのパンをひとかけら食べていた。
「ねぇセレス……この森、ほんとに街まで三日もかかるの?」
【ああ、地図だと一番近い街“フォルテリア”まで丸三日。徒歩しかないな。……】
「もう歩きたくないよー。足も限界だし、街のベッドで寝たい……」
神門はしょんぼりため息をつきながら、ぬいぐるみセレスをむぎゅっと抱きしめる。
【こういう時こそ、“推し召喚”だろ?】
「うん、やっぱり移動系で呼ぶしかないよね……」
【言っとくが、昨日のサスケとハヤブサは呼ばないでくれよ…】
神門はセレスの話を無視して、母からもらった本を開き、“推し召喚”をする為に、大きく叫ぶ。
「セレスティアノーーート!いでよ、
『ペガサス急便』のペガサス配達員・エアリスさん!」
──すると、森の奥から白銀のたてがみをなびかせた美しいペガサスと、爽やかな笑顔の配達員エアリスが現れる。
「お呼びですか?こちら、ペガサス急便! 本日、森からフォルテリアまで特急便、お届けに参りました!」
「わあっ、本当に来てくれた……エアリスさん!」
「ふふ、どうぞ、ペガサスに乗ってください。目的地まであっという間ですよ!」
神門はドキドキしながら、ペガサスの背にまたがる。セレスもふわっと跳び乗り、二人を乗せたペガはふわりと森の上空へ舞い上がった。
──そして、ほんの一瞬でフォルテリアの街の門前に到着。
「は、速い……!もう着いたの!?」
エアリスは満面の笑みで、神門に銀色の小さなホイッスルを手渡す。
「こちら、“ペガサスホイッスル”です。これは特別なお客様専用のレンタル契約。この笛を吹けば、いつでも”ペガサス”が駆けつけます!また、用が済んだ時に笛を吹けば、ペガサスは消え、勝手に帰ります。なので、自由にお使いください。」
「本当に!? これでまたすぐ、ペガサスを呼んでいいんですね……!」
「はい。では、このペガサスがあなたの専属になります。名前を付けてご利用くださいね。では、ペガサスのご加護がありますように…」
そう言ってエアリスは先に光の中に消えていった。
神門はペガサスの首にそっと頬を寄せて、
「名前か…よし、あなたは今日から、”ペガ”
これからよろしくね!」
……ふと、神門は疑問を口にする。
「ねえセレス、こういう“レンタル契約”って、
“推し召喚”の一日一人の制限に入るの?」
セレスは即答した。
【これは召喚じゃなくて“契約”だ。だからノーカウント。ペガはもう“仲間”扱いでいい。好きなときに呼んで大丈夫だ。】
「やったー!!これで移動も安心だ!
よろしくね、ペガー!!」
セレスは小さくため息をつく。
【(神門、お前……”推し召喚”から”契約仲間”まで、だんだん成長はしてるんだな。。)】
神門はホイッスルを大切に握りしめて、ペガに笑顔を向けた。
「これからも一緒に、いろんな所に行こうね、ペガ!」
──こうして、 神門みかどの新たな旅の仲間として、
“ペガサスのペガ”が加わることになった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
──ペガサス急便のおかげで、神門とセレスは一瞬でフォルテリアの街の門前に到着した。
「やったー!あっという間に到着だ!ね、セレス、ペガもありが……」
……が、盛り上がる間もなく、門番がピシッと手を挙げて立ちはだかる。
「そこのお嬢さん!街中にペガサスで乗り入れるのは禁止だ!動物の登録と交通手形がいる。」
「え、えっ!? そ、そうなんですか……」
あわててセレスの方を見ると、セレスは冷静に【ホイッスル使え】と目で合図。 神門は慌てて“ペガサスホイッスル”を吹くと、ペガサスは虹色の光に包まれてポンッと消えた。
「はいっ、ペガサスもういません!」
門番はじろじろと神門たちを見つめる。
「……で、交通手形は?」
「……それ、持ってません……」
「持ってない者は入れられん。怪しい奴だな…名前は?」
「えぇぇぇ……!
えっと本好…神門…こっちはセレ…」
焦る神門。そこへ、
後ろから背の高い黒髪の剣士が、ひょいと前に出てきた。
「おい、門番、遠く離れた”俺の妹”になにか用か?」
「え?」
門番は急に態度を変え、
「え、あぁ、冒険者リストの“ギルドマスター様”じゃありませんか。遠く離れた妹さんでしたか!!」
「そうだ。通してやってくれ…」
神門がキョトンとしている間に、門番はすんなり通してくれた。 神門が慌てて振り返ると、”ギルドマスター”と言われていた剣士はヒラヒラと手を振って去っていく。
「ね、ギルドマスター様!!名前ーーー!教えてくれませんか?」
「ノーコメント!」
サッと人ごみに消える剣士。
セレスがポツリとつぶやく。
【ギルドマスター様?見たことあるような。誰だったかな。】
「セレス、この街なんだか、イケメンばっかりじゃない?……!」
街に入ると、にぎやかな人の波。
剣士、魔法使い、見たこともない格好の冒険者たち。
遠くには立派なお城も見える。
「すごい……
まさにこれが“推しの世界”だよ……!」
屋台を冷やかしながら、とりあえず“宿屋”を探す二人。
看板に「旅人の宿・シンフォニー」と書かれた小さな宿を見つける。
カウンターのおばちゃんがにこやかに
「いらっしゃい!」
神門は財布を――持っていなかった。
急いで転移してきた時のカバンを探る。
「えっと、ハンカチ、赤いノート、羽ペン……母の本。お金……無い!」
「あの、ごめんなさい。お金が……」
「お嬢ちゃん、お金が無ければ、泊まれないねぇ」
「わああああ……!!」
落ち込む神門の横で、
セレスが【仕方ない】とコソコソとぬいぐるみの背中から金貨袋を取り出す。
【これで三泊分は足りるよな?】
「え、セレス!なんでお金持ってるの?」
【私はこの”世界の住人”だからな当然だ…。】
セレスが、カウンター越しのおばちゃんに金貨を渡すと、すぐに部屋の鍵と食事券三枚もらえた。
「ありがとうございますっ!」
「元気のいいお嬢ちゃんと賢いクマだねぇ。部屋は階段のぼって右だよ。荷物は自分で運びな!」
ホッとした神門とセレスは部屋で荷物を置き、
「じゃあ、ごはん食べに行こう!」と再び食堂へ向かった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
宿屋「旅人の宿・シンフォニー」の食堂は、夜になると冒険者や旅人でにぎわっていた。
神門はセレスと一緒に、奥のテーブルに座って、熱々のシチューと焼きたてパンを夢中で食べていた。
セレスも目をキラキラさせて、パンをちぎってはもぐもぐ。
「……わぁ~、やっぱり異世界のごはんは最高!」
【パンとシチュー……シェフ・フランのと同じくらい美味い!】
そんな時、食堂の奥からざわめきが起こる。
見れば、昼間、神門を助けてくれたイケメン剣士――ギルドマスターが、数人の冒険者に囲まれていた。
「うわ、さっきの“ギルドマスター様”だ!お礼してくる!」
神門はドキドキしながら、そっと近づく。
「すみません……あの、さっきは助けてくださってありがとうございました!」
ギルドマスターはちらりと神門に目をやり、いつものクールな顔で――
「……気にするな。あのままだと入れなかっただろ。ここの門番は融通がきかないからな」
「そうなんですか。でも…助かりました!!あの〜お名前は……?」
ギルドマスターはちょっとだけ口元をゆるめて――
「ノーコメントだ」
そう言って、さっと立ち去ろうとする。
その背中に、神門が思い切って声をかける。
「ギ、ギルドマスター様はこの街で一番強い方なんですよね?」
ギルドマスターは立ち止まり、少し振り返る。
「強いかどうかは知らないが、ここはギルドの街。安全で、平和な街になる為、困らないよう、見回っている。」
――そのとき、食堂の端からギルドの若い冒険者がギルドマスターに駆け寄る。
「マスター!師匠、やっと見つけた!ずっと探してたんです!教えて下さい!」
ギルドマスターは苦笑いしつつ、
「またか……」と頭をかく。
セレスはその様子をじっと観察しながら、
【…ギルドマスターか。あいつ、昔より…偉そうになったな。】
と小さくつぶやく。
神門はギルドマスターの背中を見送りながら、
「かっこいいなあ……なんかギルドマスター様…“推し”になりそう……」と呟いた。
セレスが呆れていると、セレスのお皿から一つパンを取って食べてながら質問する…
「…で?…セレス、どういう関係なのー!?」
【聞こえてたか。とりあえず今はパンのおかわり……】
神門は頭の中が「黙秘は絶対許さい!」
でいっぱいになりつつも、
賑やかで不思議な夜にワクワクしていた――。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
宿屋の部屋に戻ると、神門はふかふかのベッドに飛び込んだ。
「はぁぁ……やっと休める~!」 セレスはぬいぐるみ姿のまま、窓辺で夜風にあたりながら小さく伸びをした。
神門はしばらくベッドでゴロゴロしていたが、ふいにむくっと起き上がる。
「ねえ、セレス!さっきのギルドマスター様に、“偉そうになった”ってつぶやいてたよね?絶対何かあるでしょ!?昔知り合いなの?」
セレスはぬいぐるみの体をコテンと傾け、
【……あぁ。昔、クロードを助けてやった…とでも言っておこう。】 と、またもや話をそらす。
「クロード?!あの人、クロードって名前ね?それにしても、かっこよかったよね。イケメンで推しがまた増えたみたい!!」
【……あいつはやめた方がいいぞ。】
「なんでよ!イケメンはね、私を満たしてくれる最高の推し様なんだから!」
神門はセレスをむぎゅーっと抱きしめ、枕の横にぽんと置く。
「明日、会えるかなぁ。クロードさま…。」
【……あいつ、余計な事言わなきゃいいんだが…。】
「それにしても、今日は、ベッドとご飯と、ちょーイケメンな“推し”に恵まれて……いい日だったかも」
セレスはちょっとだけ笑ったような顔で、
【……お疲れ神門。】 と優しくささやいた。
神門はふんわりとした眠気に包まれながら、
「……おやすみ、セレス…」
……窓の外、フォルテリアの夜空には無数の星。
セレスは、神門の横でそっと小さくつぶやいた。
【……この街で何も起きなければいいんだが……】
そのささやきは、寝息を立てる神門には届かないまま、夜が静かに更けていった――。
異世界の宿屋で初めての夜をぐっすり眠った――。
---
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
今回は“ペガサス急便”で超快適ワープ移動&新しい街・フォルテリアへ到着!
前回の話はなんだったんだろ。
(サスケ王子と白馬のハヤブサ…)
しかも、まさかのイケメンギルドマスターに助けられ、推しがまた一人(?)増えました(笑)
今回のオリジナル物語りはこちら。
【ペガサス急便】あらすじ
困った時に現れる伝説のペガサスとエアリスと名乗る配達員。ホイッスル契約を結べれば、いつでも空からお迎え!これで移動もラクラク、冒険も安心!
エアリスはちょー美人で男女問わず人気な人。特別な人としか契約はできないらしい。
街の賑やかさ、美味しいごはん、
謎多きギルドマスターのクロード……
神門とセレスの新しい冒険は、まだまだこれから!
次回も“推し”と一緒にドタバタ異世界ライフ、ぜひお楽しみに!




