第1章「封印された本と運命」
私、本好神門、十七歳。
地味で目立たない。黒髪お下げのめがね女子。
特技は――
本と推しキャラの話になると、誰にも止められなくなること。
「オタク」と呼ばれても仕方ない。
本さえあれば、二次元の推しさえいれば、
現実のことなんてどうでもよかった。
お気に入りの小説やマンガや妄想作品はざっと1000冊は超えるだろう。。
そんな女子高生の
ドキワクなファンタジーのはじまりです。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「開けてはいけない」と、子どものころから言われてきた。
家の倉庫の奥――埃だらけの段ボールのさらに奥に、
分厚い鎖で巻かれた、奇妙な本がひとつだけあった。
高校二年生になった今も、
その“約束”はずっと守ってきた…はずだった。
どうしても気になってしまう。
まるで、その本が私を呼んでいるみたいで。
夕方、家族が出かけて
誰もいなくなった静けさの中、
私はふと、倉庫の鍵を手に取った。
倉庫の奥は暗くて埃っぽい。
手探りで懐中電灯を向けると、
「封印」と、昔貼られたままの紙切れが目に入る。
でも、もう止まれなかった。
私は両手で、鎖の巻かれた本をそっと持ち上げる。
思ったよりもずっしり重い。
私の…”ドキワク”が止まらなかった。
表紙は真っ黒で、タイトルはよく見えない…
「……やっぱり、やめ――」
その瞬間、鎖がわらかな金色の光を帯びた光りに包まれた。
心臓が跳ね上がる。
けれど怖いより、
なぜか――懐かしいような、不思議な気持ち。
「……開いてみたい、読みたい!」
そっと指を伸ばすと、
ガシャン、という音と共に、
鎖が音を立てて崩れ落ちた。
ページが自動でめくられ、眩い光が視界を包む。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ようこそ。
選ばれし者。本好神門
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
頭の中に、落ち着いた声が響く。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
私はセレスティアノート。天空の観測者。
この“書”の責任者……
継ぎはお前か。神門…。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
視界が、ふわりと揺れた。
まるで世界が、ひっくり返るような感覚。
次に目を開けた時、私は知らない景色の中に立っていた。
空は見たこともない色、風が甘く香る。
そして、何より――
「え、私……髪が、長い? 眼鏡がない!?」
目の前の水面に映ったのは、
今までの“地味な私”じゃなくて、
ふわふわロングの髪、琥珀色の大きな瞳の、美少女ヒロイン。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
神門…。物語は始まった…
さぁ、お前だけの物語を私に見せてくれ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
脳内に、さっきの本の声、セレスティアノートの声が響く。
それが、私の“封印された本と運命”との出会いだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
いきなりネタバレですが…笑
神門が手に入れた“推し召喚”の力は、
**「現実で読んだ本のキャラを、1日1人だけ異世界に呼び出せる」**という、
Ayuみ(私)には夢のような能力です。笑。
「今日は誰を召喚しよう?」と悩んだり、
たった一度きりの“推し”との再会を大切にしたり――
そんな日替わりの”ドキワク”も物語の見どころです
”推し召喚”は第二章~わかりますので…
次回もよろしくお願いします。