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第十三章:天使の眠る場所
数週間が経ち、ようやく立ち上がれるようになった。
翼の付け根が痛む。
再生の兆しはあるが、時間がかかるだろう。
それでも僕は、仕事に戻ると申し出た。
「僕は……リィナの隣にいたいから」
誰も反対しなかった。
諦めと恐れが蔓延する中で、誰かを守ろうとする姿は、奇跡のようだった。
それでも、心のどこかで、何かを待っていた。
それが「救い」ではないと、もう分かっていた。
けれど、せめて、リィナの未来だけは。
ある夜。
園の高台にある小さな扉の前に立った。
風が吹き抜ける。
柵の向こうには、遠くに街の明かりが見える。
手の中には、小さな布包み。
中には、リィナの好きだった甘い果実と、
彼女の母が残した、小さな飾り羽。
リィナ。もし君が、この先、誰かに連れて行かれることがあっても.......
どうか笑っていて。
その願いは、声に出されることはなかった。
そして今夜も、彼らはこの地獄で眠りについた。
この物語はここで幕を下ろす。
だけど、これは終わりじゃない。
きっと、また彼らは語り始める。
天使たちが、天空へ還るその日まで。