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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

冒険者たちは惨たらしく殺戮される

作者: ハムカッタ

霧の立ち込める森の奥深く、冒険者たちは古代遺跡の前に立ち止まった。巨大な石の扉が、時間の経過を物語るかのように苔むしている。冷たい風が吹き抜け、木々のざわめきが遠くで聞こえる中、冒険者たちは一斉に視線を交わした。


一人が前に進み出て、静かに杖を構えた。杖の先端からわずかに光が漏れ、空気が張り詰める。彼の足元には小さな円形の魔法陣が浮かび上がり、その光が次第に強くなる。魔法陣の中で、エネルギーが渦巻き始めた。


杖を握る手が力を込め、胸の奥深くから呼吸を整える。次の瞬間、轟音が周囲を揺るがした。眩い光とともに爆破魔法が発動し、猛烈な炎と衝撃波が石の扉にぶつかる。大地が震え、石の破片が空中に舞い上がった。


爆風が周囲の木々を激しく揺らし、葉が散り、動物たちが慌てて逃げ出す。耳をつんざくような音が鳴り響く中、石の扉は音を立てて崩れ落ちた。細かな砂埃が舞い上がり、視界を遮る。数秒後、静寂が訪れると同時に、崩れた扉の向こうには暗闇がぽっかりと口を開けていた。


煙がゆっくりと晴れていく中、冒険者たちは崩れた石の残骸を乗り越えて、一歩ずつその暗闇の中へと足を踏み入れていった。


薄暗い遺跡の奥深く、冒険者たちは荒れ果てた石の階段を降りていった。壁には長い年月を経てかすれた古代の絵画や文字が刻まれており、彼らの足音だけが静寂を破る。彼らの手元にある松明が周囲を照らし、影を揺らめかせる。


やがて、彼らは一際大きな扉の前で足を止めた。その扉は他のものとは異なり、黒曜石のような未知の素材で作られていた。扉の上部には、いくつもの魔術的なルーンが青白い光を放ちながら浮かんでいる。ここが目的地だと全員が直感で感じた。宝物庫であることに疑いはなかった。


リーダーは仲間に合図を送り、慎重に扉に近づく。ルーンの光が彼の顔に冷たく映り、彼は手袋をつけた指で扉をなぞった。触れた瞬間、ルーンが一斉に明滅し、魔術的な防御が作動し始める。空間が歪むような低い唸りが響き渡り、彼らは一瞬身構えた。


「魔法解除を急げ」という無言の指示が、仲間の間に伝わった。チームの魔術師がすぐに前に出て、慎重に呪文を唱え始める。彼女の手から繊細な光が扉に向かって伸びていき、ルーンに触れるたびに少しずつ輝きを失っていく。魔法解除には緻密な技術と集中力が必要だった。間違えれば、扉の防御が全てを飲み込むだろう。


緊張の中で数分が過ぎ、やがて最後のルーンが静かに消え去った。扉は重い音を立てながらゆっくりと開き、彼らの前に宝物庫が姿を現した。


中に入ると、薄暗い部屋の中央に奇妙な箱が鎮座していた。箱は光を吸い込むような黒い金属でできており、側面には複雑な紋様が刻まれていた。どこかの文化で神聖視されていたことを示しているように見えたが、その素材と起源は誰にも分からなかった。


箱の周囲にはいくつもの魔術的な防御が施されているのが感じられた。冒険者たちは再び息を潜め、魔術師が慎重に箱の封印を解いていくのを見守る。呪文を唱える彼女の手から薄い光が箱を包み込み、その光が少しずつ箱の表面を撫でるたびに、防御の層が一つ一つ解かれていった。


やがて重苦しい静寂の中、箱がゆっくりと開かれた。冒険者たちは一瞬息を呑み、その中に隠されたものを確認するために身を乗り出した。しかし、箱の中には宝石や黄金の輝きではなく、黒い霧のようなものが渦巻いていた。霧は生きているかのように蠢き、次第に形を変えていった。


誰かが何かを言おうとする前に、霧が急に膨れ上がり、無数の触手が箱から飛び出した。


触手は猛スピードで冒険者たちに襲いかかり、腕や足に絡みついて引き裂いた。恐怖と驚愕で悲鳴を上げる間もなく、彼らの体は激しく引っ張られ、壁に叩きつけられる。血が飛び散り、骨が砕ける音が宝物庫の中に響き渡った。触手は鋭い棘のようなもので覆われており、冒険者たちの皮膚を容易く裂いて、内臓を引きずり出した。


一人の冒険者は必死に剣を振るったが、触手に捉えられて地面に投げ飛ばされる。彼の体が床に叩きつけられた瞬間、骨が砕ける鈍い音が響き、彼は絶命した。他の仲間も次々に引き裂かれ、血の海に沈んでいく。彼らの命が次々と奪われる中、部屋の中は絶叫と嗚咽で満たされた。


最後に残った魔術師は恐怖で震えながらも、何とか呪文を唱えようとした。しかし、彼女の声は震え、魔法が発動する前に触手が彼女の喉元を締め上げた。呼吸ができなくなり、彼女の目は次第に見開かれていく。触手がさらに強く締め上げると、首が不自然な方向に折れ、魔術師の体は力なく崩れ落ちた。


一瞬の静寂が訪れたが、それは不気味で緊張に満ちていた。触手は一旦動きを止めたが、まだ生きているように蠢いている。部屋中に広がった血の匂いに興奮するかのように、再び動き出すと、壊れた冒険者たちの体をゆっくりと箱の中へと引きずり込んでいった。


この箱に封印されていたのは、古代文明が制御できずに封印した生物兵器だった。彼らが何故それを封じ込めたのか、その理由は今や明白だった。宝物庫には再び暗闇と静寂が戻ったが、それは決して安らぎの静寂ではなかった。次の獲物を待つ、飢えた沈黙だった。

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