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完成体少女  作者: 有原優


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第98話 説得

「さて、と」


 ユウリはウェルツの方を見る。


「他の人間たちも、滅ぼしていくよー」


 そう言って、雷弾を放つ。


 その素早い攻撃にウェルツは一瞬判断が遅れる。

 死を覚悟する。


 だが、その攻撃をルベンが止めた。


「遅れてすまない」


 そして言う。


「これはどう言った状況だ?」

「今は見たらわかります」

「ユウナが裏切ったか」


 ウェルツは頷く。


「完成体になってしまいました」


 正確にはならせたが正解だ。

 しかし。今はそんな事はどうでもいい。

 ユウナ基、ユウリを止めなくては。


「ウェルツ」


 ミアがたつ。


「私がユウナちゃんを止めるのです」


 そして地面を蹴り、ユウリにミアが襲い掛かる。

 拳の連撃。

 その拳を丁寧にユウリが受け止めていく。



「あははー、強いねー。でも遅いよ――――」


 そう言って、ユウリは地面に向けて魔法を放つ。

 その影響で砂が舞い上がる。


 その砂を吸ってミアは一瞬視界がくらむ。


「その隙だけで十分だよー」


 砂煙が明けると、

 ミアがその場に倒れていた。


「まずは一人―」


 そのユウリの手にエネルギーが集約されていく。


「待て、撃つなら俺にしろ」


 ウェルツが叫ぶ。


「どしたのー? 先に死にたいのーー?」

「お前はユウナだろ」

「? 私はユウリだよー」


 ユウリは首をかしげる。


「そうだとしても、お前が本当にユウナとしてのすべての尊厳を失ったとは思いたくはない。そんな事をして何が楽しい」

「んー、楽しいよー。私が最強になった気がして―。それに私はユウナの中でずっと苦しんでいたのー、ならこれくらいできるでしょー」

「どういう事だ」

「簡単な話だよー、私たち完成体の人格は、作られた者なんだよー。だから、元の宿主を食い破らないと外には出られないんだー、それまではずっと暗い空間の中、地獄でしょー」


 そうふふ、と笑ってから、ウェルツの首元に手を当て得る。

 その一瞬の動きに、ウェルツは反応する事さえできなかった。


「死にたいならゆってー」


 そしてユウリは耳元でささやく。


「やっぱり怖いんだねー」


 と。

 まだ、アーノルドたちが無事なら戦いになっていた。だが、アーノルド含め全員が銭湯不能状態に押しやられている。

 この状況で逆転の一手があるかどうか。


 それは、ユウナの意思を呼び起こすしかない。


「なあ、ユウナ」


 首元に指をあてられながらも、ウェルツは叫ぶ。


「お前はこのままでいいのか? このまま第二の魔王になってもいいのか?」


 ウェルツとしては、一度完成体になった後に、元の人格に戻る、といった話を一度も聴いたことがない。

 だけど、ウェルツはユウナを信じている。否、信じるしかない。

 それほどまでに追い詰められているのだから。


「ユウナ、お前はいいようにやられていい人間じゃないはずだ。思い出せ、そして元に戻れ。私を信じて、だろ?」


 信じてと言っていた。

 無事に元のユウナに戻ることを信じてと、

 そんなユウナの気持ちを信じている。


「ユウナ、戻って来いユウナ」

「あは、そんなこと言ってもむーだー、もう、戻ってこないよー」

「それはどうかな」


 不敵にウェルツは笑った。


「俺は今までお前と色々な子tぽが出来て良かったなと思っているよ。お前はどうなんだ? お前はまた俺と一緒に人生を楽しみたいとは思わないのか?」

「むーだー、もう戻ってこないよー」

「ユウナを甘く見るな。あいつは我儘で、そして優しいんだ。あいつは人生の反省を俺以外の人とかかわらずに過ごしてきた。だからこそ、実年齢よりも幼く見える。しかし、あいつは人の痛みを知る優しい子だ。そして人と仲良くできるいい子だ。そんな子をお前如きが、懐柔できるわけがない。ユウリ、お前は正しく生きられなかった世界戦のユウナだ」

「っそんな勝手なことをー」

「ああ、俺は勝ってさ。だから、俺は俺の意思に従って、ユウナを戻す」

「なめないで」


 ウェルツはその中で感じた。

 明らかに焦っていると。

 なにしろ、先ほどまでの余裕綽々の態度はどこへやらだ。


「死になさい」


 そう言ってユウリはウェルツの首を切ろうとする。


「ああ、お前に殺されるなら本望だ。だけど、」


 ウェルツはじっと睨む。


「お前に俺が殺せるとは到底思わねえ」


 そのウェルツの視線に、ユウリは力を失ってしまった。


「あれ、何で?」


 力が入らない。


「ユウナが逆らってるんだろうな」

「そんなわけが」

「認めろよ。お前はもう負けているんだ」


 これは恥tぅたりに過ぎない。

 今もウェルツは内心震えている。

 あと少し指を動かされたらウェルツは死んでしまう。

 だが、


「ユウナ、戻ってくるんだ。お前の居場所はそこじゃない」


 その言葉に、ユウリの体が光り輝く。


(これは、抵抗の光なのか)


 ウェルツは目を見開く。

 ともう一押しだ。そう、ウェルツは睨んだ。

 そして、ユウリに抱き着く。

 先程の光によって、締め付けの力は弱まってきていた。


 だからこそ、自分から、向かっていくのだ。


「な、なにをするのー?」


 伸ばし言葉だが、見た感じ焦っているようだ。


「勿論君の中のユウナを呼び起こすためだ」

「呼び起こすため? 無駄なことをー」

「する!」


 そしてウェルツはさらに力を込める。


「な、くっ」

「お前は寂しいだけなんだろ」


 そのウェルツの言葉にまた、ユウリは顔をゆがませた。


「寂しいから、強者を偽る、簡単な話だ」

「違う」

「違うなら、どうして涙を流しているんだ?」

「っ、それは」

「胸に訊いてみろ、そしたらわかるはずだ」

「っふざけたことをー!!」


 そう言って、ウェルツを引きはがそうとするも、力が入ってこない。


「分かってるじゃないか。自分の気持ちを、戻ってこい、ユウナ。お前の暖かい居場所に」


 そして、ユウリの中の光がさらに強まっていく。

 そしてその光が爆発した瞬間、ユウリORユウナがそこに倒れていた。


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