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完成体少女  作者: 有原優


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第94話 襲撃

 その翌日。

 ウェルツが組織のボスを連れてやってきた。


「止まれ」


 入る直前に門兵が槍を突き出した。

 それをうけ、ルイスとウェルツは手を上げた。


「名を名乗れ」

「ウェルツだ。先日来たユウナの連れだ」


 そう静かに告げた。

 それを聞き、門兵たちが互いに顔を見合わせる。


「連れの方は?」

「ああ、俺の協力――」

「お前たちが組織と呼んでいるもの、あれのトップだ」


 その瞬間、門兵たちに警戒の色が走る。

 それも当然だ、組織のボス、つまり大罪人。

 国家反逆という大犯罪を犯している者。

 普通に考えれば極刑は避けられない。

 勿論、平和な時代であればなのだが。


「いいのですか? 馬鹿正直に話して」

「隠す意味もないだろう。それが俺の罪なのだから」


 以前までのボスと雰囲気が違うとウェルツは思った。

 ユウナの説教、そして計画が失敗したことが重くのしかかっているのだろう。


「分かった、暫し待て」


 そう言われ、その場に二人は残された。


「ユウナ、少しいい?」


 その頃ロティルニアはユウナの部屋に訪れていた。


「何?」


 ユウナは、ベッドに横たわりながら答える。


「もし魔王が来たらさ、私も戦ってもいい?」


 ロティルニアは真剣な目で訴える。


「だめじゃない?」

「え?」

「だって一国の王女だし」

「そんなの関係ないよ。私だってこの国の一員だから」

「そっか。ならいいんじゃない?」


 ユウナは軽い口調で答えた。それも面倒くさそうに。


「そんなの、自分の意志じゃん。私に訊く方がおかしいよ。それにね、私もこの国は大好き。だから私もこの国のために頑張るよ」

「うん」


 そして二人の少女は互いにハイタッチをした。

 その瞬間。


「ユウナ殿、来訪者です」


 そう告げる使いの者が来た。

 それを聞きユウナは「誰?」と返す。


「ウェルツ殿です」


 その言葉を聞き、ユウナはロティルニアと、ミコトと三人で迎えに行った。

 そこにはもう一人、ルイスの姿があった。


(隠すことなく来たんだね)


 ユウナは心の中で思う。


「ロティルニア様まで」


 門兵はそう呟いた。その言葉を無視しでユウナは言った。


「ねえ、来たんだね」


 と言った。


「ああ、来た」ルイスはそう返す。


「来るのは良いけど、何であなたが堂々と乗り込んでくるわけ?」

「俺はこの国と同盟を結びに来たんだ。そのために隠し立てをするわけには行かない」


 そう言うとボスは自身の仮面を外す。

 そして現れたのはまさにルイスだった。


「ぎ、ギルド長」


 門兵はまた驚いたように叫ぶ。


「こういう事なの。大丈夫悪いやつだけど害はないよ」


 そう、ロティルニアの手をギュッと握りながらユウナが言った。


「ねえ、あげっさせてくれない」


 その言葉に、ロティルニアは「あげなさい、王女命令だよ」と言った。


 元々王も許可をしていた。

 そのため二人は王城に入る事を許可されていた。それも王によって下されていた令によって。


「それで、ルイス、貴殿はいつの間にか敵対組織の長をもやっていたのか?」

「ええ、俺は魔王を復活せ、完全に滅ぼす計画を立てていました」

「そしてそれが失敗したわけ」


 ユウナは辛らつに言う。

 その言葉にルイスは「ああ」と答えた。


「俺は失敗した。だが、魔王をしとめなければ世界の危機は終わらない。そこで手を組ませて欲しい」

「手を……」


 ユウナは頷いた。

 もうこのくだりはすでにやった。


「王様」


 ユウナが一歩前に出る。


「私は正直に言ってこいつが反吐が出るほど大っ嫌い。今までこいつ以上に嫌いな人に会ったことがないと思う。でも、こいつの力を借りなきゃあいつは、魔王は倒せない。だからさ、こいつの話を聞いてあげて」

 真剣な顔で言うユウナ。


「魔王は正直強かった。たぶん対抗策が無かったら、まともには勝てないと思う。正直今私達とルイスが手を組んでも倒せる可能性は高くないと思う。でも、勝つ確率を上げるためにはこれしかないと思う」

「わかっておる。わしには決定権はない。決めるのはお主たちだ」


 その言葉にユウナは静かにうなずいた。


 そしてユウナは剣聖の方を見た。


「私は正直反対だ」


 そう吐き捨てる牽制。


「しかし、こうでもしなければ奴らに勝てないのも事実。今は同盟策に乗るしかないと考えている」


 後は戦場にいるアーノルドの言葉次第だが、今のところは満場一致で同盟を組む方に流ている。


「さて、これからの話だが――」


 その時に大きな波が地面を鳴らす。

 地震だ。

 ユウナたちは思わず飛び上がり、窓の外を見る。

 おぞましい気配が近づいている、魔王の接近だ。


「早いな」


 剣聖は呟く。


「うん。でも、倒すしかないよね」

「ああ、本気で倒す」


 そして、美奈城から飛び出し、魔王討伐の準備も進める。

 その時に、城の前に一人の男が立っているのを見つけた。

 アーノルドだ。


「俺が到着したぜ」


 そうカッコつけて剣を手に持つアーノルド。

 そして魔王を見つけた瞬間、


「こりゃ凄いな。だが、負ける気がしない。俺は最強だからさ」


 そしてアーノルドは一気に地面を蹴り、魔王に斬りかかる。


「新手か、否。全ての人物が揃ったか。だが無駄だ」


 その言葉を発した瞬間、闇の波動が周りを襲う。その攻撃の衝撃波で数々の建物が倒れて行く。


「避難してください」


 溜まらずユウナはそう叫び、「避難を先導せよ」と剣聖が言った。


「俺の事も忘れんじゃねえぞ」


 ラトスが叫ぶ。

 こうして総力戦の始まりを迎えた。

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