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完成体少女  作者: 有原優


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第93話 本拠地

 



 そして組織の本拠地へとついた。


「久しぶりだな、ここも」


 ウェルツはあたりを見渡しながら言った。


「ミアを完成体にするんじゃないですよね」

「無論だ。今のじゃじゃ馬な性格ではうまく使えん。完成体にしてから懐柔させる時間が必要なんだ。しかし今の私たちにはそんな時間が無い。今から俺がするのは、完成体から元に戻すという作業だ」

「そうですか」


 そして、ルイスは手慣れた手腕で、ミアを回復させる。


「私のいない間、組織を支えてくれてありがとう」


 ルイスは男に話しかける。


「ボスの為なら当然です。しかし」

「ああ、ユキヤを失い、魔王を復活させてしまった。それは完全に俺の落ち度だ。しかし、魔王を討伐せねばならない。その後の話は二の次だ」


 そして、ルイスはウェルツの方を見る。


「今回、臨時ではあるが、ウェルツが組織に戻ることとなった。そしてこれからの話だ。我々の戦力だけでは魔王に勝てない。だからこそ、同盟を組む必要がある。イングリティアと。俺も望ましい事ではない。イングリティアは打倒するべき敵だからだ。しかし、そんな文句なんて言っていられない。魔王をしとめなければ我々に未来などないのだから」


 そう言うと、「うおおおお」と全員が怒濤を上げた。


「橋渡しはウェルツ。お前に頼む」

「結局俺がその役か」


 最近雑に扱われがちな気がする。


「しかし、俺がここに来たのには理由があったんじゃないのか?」

「ああ。お前にこれを渡して起きたい」


 差し出されたのは、注射針だ。


「ユウナはミアとは違い、完全に力を持っている。実力ではほかの完成体候補に劣るかもしれないが、その分ポテンシャルは一流だ。これは、完成体にするための注射だ。これが出来上がったからこそ我々は行動を開始したんだ。しかし、問題もある。ユウナの人格は完成体になると失われるからだ。だからこそ、お前にこれを渡す。いざという時のために使って欲しい」

「ボス」



「なぜこれを俺に」


この人はもっと残虐な人のはずだ。

 なぜ、ウェルツにこれを渡すのだろうか。


「信頼のあかしだ」


 それは置いといても、いまするべきことは一つ。


「俺は王城に行けばいいんですね」

「ああ。それとこれを以てな」


 手渡されたのは研究データと、ミアだ。


「ミアはもう大丈夫だ。後、王城には私もついて行く。協力をお願いする」

「分かった」



 二人はそう言って組織を飛び出した。

 もうすでにルイスは指示は出している。後は団員がその指示を実行するだけだ。



 ルイスとウェルツは再び道を歩んでいく。

 ミアを背中に背負い。


「魔物は私に任せろ。私が全員蹴散らすのみだから」

「ああ」


 不安はそこではない。

 魔王が追ってきたら?

 そんな不安が押し寄せる。

 ルイスは酷い男だ。

 戦力を皆殺してしまったせいでまともに戦えそうなジトたちがいない。

 本当に今の時代に魔王を復活させる必要があったのだろうか。


「ウェルツ一つ言っておく。俺は勝つ気でいる。魔王は強大だが、慢心もしている。そんな相手に一発かまし、そのまま絶命される。俺は可能だと思っているからな」


 魔王に一度還付無きままにやられた男の言葉だ。説得力がある。


「分かっている」


 ★★★★★


 ユウナたちはいよいよ王の間に入る。

 久しぶりに徹そこはなんだか重苦しい感じが下。

 そこには事務作業をしている王様の姿があった。


「お父様―、連れて来たわよ」


 元気にロティルニアが言う。


「ああ、助かる」


 そして王様はペンを置き、ユウナたちの方に向き直る。


「魔王の件だな」

「うん。まずはごめんなさい。私は魔王の復活を止められなかった」


 ユウナは深く頭を下げる。


「それはお前のせいじゃない」


 剣聖がユウナをなだめるように言う。


「俺はそもそも魔王の復活について情報さえつかめていなかった。俺たちが一番の失態だ」

「責任の取り合いはだめ」


 そんな二人の間に割入ったのはミコトだ。


「まずはこれからの事を考えないと」

「そうだな」「そうだね」二人はそう顔を見つめ合う。


「まずは私から情報を話します。それを聞いてこれからの事を判断してもらったら幸いです」


 ミコトが淡々という。


 ユウナはミコトに任せることにした。自分が話すよりもミコトが話したほうが伝わりやすいだろう。


「なるほどな。組織が魔王を復活させたか。やはり、悪だな」


 剣聖はそう吐き捨てる。


「それで、今魔王がこちらに来ているかもしれないという話だな」

「はい」


 ユウナは頷く。


「魔王に関しては俺でも勝てるかは分からん。勿論それはアーノルドもだ。とりあえず魔王を倒すために作戦を組まなければな」

「うん」


 そしてその日は部屋で休むことになった。

 部屋の中は無言だった。

 ユウナもミコトも何も話すことがない。

 何しろ、そんな雰囲気ではないからだ。


「魔王との戦いの機会は近いよね」

「そうだね」


 そして再び無言になる。

 そしてそのまま二人は眠りへと落ちた。

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