第92話 ミア
「ユウナちゃん久しぶりです」
ロティルニアが言う。彼女と会うのは久しぶりだ。
「父上はこっち」
ユウナはそれに頷いた。
王の間に向かう途中、懐かしい気持ちに襲われた。また、ここから離れてからそこまでの時は経っていないのに。
色々とありすぎて、もうここでロランと戦ったことが、はるか昔に思えてくる。
「剣聖さん」
ミコトが言う。ユウナは声の発された方向を見る。
そこには剣聖がいた。
「久しぶりです」
ミコトは頭を下げる。
「そうだな、懐かしいな」
そう剣聖は呟いた。なんだか、憂鬱な様子が感じられた。
「ここ数日魔物の多さに霹靂としている。アーノルドのやつは毎日戦いっぱなしだ。王城の守護のためにここにいるが、昭か手が回っていない。来てくれて助かった。それで何があった」
「それは国王陛下に話しますので着いて来てください」
そして、王の住まう部屋に足を踏み入れて行った。
その頃別の場所で別の戦闘が起きていた。
「さあ、お前が魔王か」
「左様」
その場に立っていたのはミアと魔王だ。
ミアの鎖はあhずれ、完成体兼魔物の状態だ。
「魔王、お前は強いんだろな?」
「むろん」
「それは安心した」
ミアは一気に魔王に対して拳を振りに行った。
魔王はその拳を間一髪のところでよけて、
目から光線を出してきた。
その攻撃を避け切れずにミアは被弾。
しかし、ちゃちな攻撃で傷がつくほどミアの体はやわではない。
そのままの勢いで魔王を狙って、こぶしを振りぬいた。
その拳は見事に魔王の体にヒットする。
そのまま互いに、殴り合いを演じていく。
が、その形勢は明らかになっていく。いつしか、魔王の攻撃がミアに重くのしかかるようになっていった。
その攻撃性能に差はないように思えた。
しかし、魔王の身に宿る魔力。それが勝敗を決した。
その多大な魔力。その力によって。
「この私が、押されているだと」
ミアはその状況でそう呟いた。
ミアは基本魔力を扱えない。
だからこそ、魔力を持ってる人相手では、どうしても苦戦する。
「くどい」
魔王は後ろに跳躍した、その瞬間ミアの視界は炎に包まれた。
ミアの体に熱が入り込み、ミアは大きくせき込んだ。
炎に宿る毒素。それを思いっきり吸い取ってしまったのだ。
本来なら避けられるはずだった。しかし、身に受けたダメージがそれを許さなかった。
ミアはかろうじてその炎から脱出するも、上からはさらなる炎が飛んで来ようとしている。
「まいったなこれは」
完成体としてほとんど完成されたミアでも、その炎の前では、ただ屈するしかなかった。
「だが」
ミアは呟く。
「私よりも強いやつがいてたまるかあ」
その拳で、魔王へと向かって行く。
「炎で焼かれろ」
その炎によってミアの体が消滅、することも無く、こぶしで魔法を打ち破った。
「私には魔力は無くてもこの力があるんだよ」
しかし、その直後、ミアの体に異変が起きた。
ミアは一気に下降運動を始め、地面に落ちた。
「我の力をくらったらそりゃそうなる。さて、邪魔者はさっさと排除をしなければ」
そしてミアに攻撃が加えられる。
だが、そこにはもはやミアはいなかった。
「俺を忘れないでもらえるかな」
そこにはルイスがいた。「まだ我には向かう力が残っていたか」
魔王はそう言って、地面を踏みにじる。すると、あたりから岩の壁が複数出てきた。その岩はルイスの逃げ場をさえぎるように立っている。
「っち、逃げ道をふさいだか」
ルイスは即座に二人目の自分を生み出す。
「俺の能力は逃走にたけている」
ルイスの能力は二人目の自分を自由に出し抜きすることが出来る。
そしてもう一人の自分は決して死ぬことが無い。それに時間稼ぎをさせれば、逃走可能性が十分に上がることとなる。
「これは非常に滑稽だ。まさか我相手に逃げおおせると思っているとは」
その瞬間魔力が会がtぅた。その影響で空気がピリピリとしだす。
「我の魔力で、貴様を捕らえて見せよう」
その瞬間魔力の圧が来る。
その魔力に二人は耐えるも、今にも吹き飛ばされてもおかしくはない状況だ。
「やはり、そう来なくっちゃな」
ルイスは叫び、分身体が一気に剣を構え、魔王に向かって行く。
「前は油断しただけだ。今ならいける」
ルイスの剣の素早い動きで一気に魔王の体をどんどんと斬っていく。
ミアは巨大すぎた。だからこそ、魔王相手に上手く戦えなかった。しかしルイスは小柄だ。
目からの光線攻撃を見事によけながら剣を振っていく。
一撃貰えば死の可能性もある中、ルイスの分身体は必死に剣をふるう。
「ウォーターカッター」
ルイスはそう魔法を唱え、鋭利な水を製造した。その剣で、岩を斬る。
「だめだな。岩が固い」
「そうですか」
ウェルツは思考する。
「魔王目余計なことを。しかし、ウェルツ。お前ならこの状況から打開する方法、分かるだろ」
「ええ」
かつての上司の言葉にうなずき、ウェルツはルイスを肩に乗せた。
「幸いこの岩は高くない。ミアを背負いながらだと、満足には飛べないが、されでも十分だ」
そしてウェルツが飛び、それを蹴って、ルイスが飛ぶ。
そして岩の上に見事に乗った。
そしてルイスは飛び跳ねるウェルツの手を握り投げ上げた。
その瞬間、ルイスの分身体がやられた感触を得た。だが、それより早くに逃走に成功することが出来たのだ。
ルイスとウェルツはそのままミアを連れ、歩いていく。
封印の鎖。それをはめたからか、ミアの体は軽くなり、持ち運べる重さになっている。
そして二人はミアを運びだす。




