第八十九話 ルイスの正体
そしてユウナがたどり着くとそこではまさに総力戦とも思わしき状況だった。
だが、ただの総力戦ではない、地獄と化している。
死体が周りにごろごろと散らばる。
その中でルイス、ただ一人だけが気を吐き、必死で敵対勢力、組織と戦い続けている。
ユウナは、周りを軽く見渡し、一番近くにいたルベンに話しかける。
「いったいこれはどうしたの?」
「実はだな、ギルド長がいきなり組織を攻撃し始めたんだ。そこからはもうとにかく分からんよ。あの人がこんな雑な判断をするわけがないんだから」
その言葉にユウナは軽くうなずいた。
「この先の部屋には何がある?」
ウェルツが訊く、するとすぐに答えが返ってくる。
「ここの主の部屋だ。組織のボスは先にそこへといっている」
やはりか、とウェルツは思った。
「ルイスと、ボスは手を組んでいる」
ウェルツはそう結論付けた。
「そう考えるとかなりの辻褄が会うと思わないか」
「でも、不思議な点もあるよ」
「それは置いといてだ」
「まあ、そうかも」
細かいことは置いといて、ルイスとボスが手を組んでいると考えたら、全てに説明がつく、とユウナも思う。
「あの人は、俺が組織にいた際も、あまり自分を見せない人だった。ひょっとしたら最初からそうだったのかもしれない」
ウェルツがあごに手をやりながら呟く。
「とりあえず、奥に行かなきゃ」
そんなウェルツの手をユウナは引っ張る。
時間が無い。
「そうだな」
「とはいえ、ギルド長がそれを許さないだろう」
「私に考えがあるよ」
ミコトがそう言った。
あまり主体性を見せないミコトにとってはやけに積極的な発言だ。
しかし、もうミコトに頼らないという手はない。
「えい」
ミコトは一気に手から煙を放出する。
その煙が部屋中に充満する。
「こういう事?」
ミコトが頷く。
「煙が無くなる前に早くしてください」
ミコトのその言葉を聞き、ユウナたちは一気に奥へと突入する。
扉を蹴り破ると、そこにいた人物は、
「驚いたな。まさかルイスの守護を破ってここまで来るとは」
ルイスそのものだった。
「っなぜここにいるんですか、ギルド長」
ルベンが叫ぶ。
「おやおや、そんな言い方をするな。今の俺はギルド長ではない、組織のボスだ」
ルイスではなくボス。
だが、その姿を見れば、完全にルイスなのだ。
何かの怪奇現象かと思うが、おかしな、実におかしな話だ。
「まさか、ボスとギルド長は同一人物?」
ウェルツは疑問を素直に口にする。すると、ルイスは笑って答えた、
「その通りだよ。むしろよく今まで気づかなかったものだ。俺も滑稽だと笑ったよ」
「そんなのはどうでもいい」
ユウナが叫ぶ。
「そこをどいて」
「素直にどくとでも思ったか?」
そう言って笑うルイス。ユウナが魔法弾を一気に飛ばす。だが、その攻撃はルイスにあっさりと受け止められる。
「ここには二人もいる。そしてルイスを引き戻せば三人だ。止められる道理なんてないよ」
そうだ。
「なんで、魔王軍に味方してるの?」
「魔王を本格的に滅するためだ。俺は親を魔王を絶対に許せないんだ。魔王の魔力はすさまじい。封印されながら、闇の魔力を発し、様々な魔物を活性化させてたもの。それを払う事で、世界は完全に平和になるんだ」
「まさか、そのために?」
「ああ。俺はそう言う狙いだ」
馬鹿じゃないと、ユウナは思った。そのために世界をいったん危機にさらす。
あの無敵の勇者が、命を懸けて封印した魔王。それをわざわざ復活させる意図が分からない。
それならばせめて魔王を利用してやる、などと言ってくれた方が幾分かましだ。
「私は貴方を敵だと認定したよ。絶対に許せない」
「ほざけ」
ルイスの言葉も、段々と冷静じゃなくなる。
「俺の本気を見せてやる」
そしてルイスの分身体が現れた。
否、ルイスだったものだ。
「なんで味方まで斬ってたの?」
組織の死体が転がっていた。という事はルイスもとい、ボス自ら部下を斬っていたという事になる。
「ああ、奴らは所詮道具だ。どうなろうと知ったことではない」
「そういう事なんだね」
魔王討伐に命を懸けたサイコパス。それがギルド長、ルイスだったのだ。
「貴方は世界一のクズだ」
ユウナは言い切った。
「本当に俺に襲い掛かっていいのか? もし俺に勝てたとして、その後に魔王軍のボスと戦う。それが可能だと思っているのか? ここは、俺と戦うよりも、素直に復活させた方がいいと思うぞ」
正論だ。
ここで、叩くよりも、するよりも、魔王復活を待ってそこから共同戦線を紡げばいいのだ。
しかも、ほかにどんな戦力を所有しているのかもわからない。
ユウナは緊張感に覆われた。ここで選択を間違えたら、即座に全滅だ。
「ユウナ」
「うん」
ここは、提案に乗るしかない。
癪だが、待機するしかない。
「分かった」
そうユウナが言うと、「賢明な判断助かるよ」そうルイスが言った。その言葉に、ユウナは至極腹が立った。
そして、魔王復活までの時間をただ黙って待つことになった。
悔しい気持ちでいっぱいだ。
みすみす世界の災厄を生み出すまで待たなければならないなんて。




