第八十六話 同盟
「もう時間のようだ」
そう、ロランが言う。
もう、ロランの体は消え始めている。
このまま、死へと向かって行くみたいだ。
「そう言えばここは、ラバルディアか。俺の故郷で死ねるのならば、悔いはないのかもな」
「……」
ユウナは言葉が出なかった。
「おめえらは、死ぬなよ」
そう、彼は告げた。
「ああ」
ウェルツがそれに頷く。
そしてロランの体は地理となって消えていった。
「ロランは死んだか」
そこに新たに一人現れた。
その男は、顔が見えなかった。
既にかなりの傷を負っていたが、それに比べ物にならない威圧感があった。
「やあ」
そう声をかけるとすぐに、ユウナあっちの目の前にいくつもの魔法弾が飛んできた。
「悪いが、ユキヤの死体を返してくれないか?」
「素直に渡すと思ってるの?」
「思ってないよ。だけど、君たちに私に逆らう力は残ってるのかな?」
「……」
無い。
既に激戦をいくつも乗り越えてきている。
この状況で、戦う力など残っているわけがない。
「さて、渡さないなら、殺すけどいいかい?」
「分かった」
ウェルツがつぶやいた。
「ウェルツさん!?」
「ここで断るわけには行かないだろう」
「ウェルツ。君は本当に私を裏切ったのか?」
その言葉にウェルツは、ぞくっとした。
「まさか」
「そのまさかだよウェルツ」
「ボス」
「ボス!?」
ウェルツがボスという人物。それは一人しか思いつかない。
組織を束ねているまさにその人物だろう。
「どうだい、君はもう一度こちらに戻ってくるつもりはないのかい?」
「……ない」
「いいよ。それも君の自由だ。だけど、逆らうのなら容赦はしないよ。……君も、組織に戻ったほうがいいと思うよ。魔王軍を倒すつもりがあるのならね」
「分かっている。だが、俺は組織のやり方をよしとはしない」
「それは分かってるよ。まあ、考えておいてね。君がその気になった時に、私は君の元へと、舞い戻っていくから」
そう言って、ボスは一瞬で、幸也の死体のもとに行く。
「ユウナ。私はもう君をさらうつもりはないよ。じゃじゃ馬な君は今やウェルツにとって失敗作に作り返されてしまった。君は自由にやると言い。ただ、邪魔はしないでくれると助かるけどね。それと、これからよろしくね」
そう言って、ボスは、姿をくらませた。
「とりあえず危機は去ったと思っていいのか?」
「分からないけど、そのようだな」
「しかし、なぜこの国を取らなかったんだろうか」
「そうだな。しかし、ボスは、あの人は感情よりも理屈で動く人だ。きっとこの国を奪わない方がいい理由が出来たのかもしれない」
「なるほどな」
「まあでもさ。この国が奪われなくてよかったね」
そう、グレイルウェルツの二人の会話に無邪気に入り込む。
「そう言う話じゃないんだけどな」
そう言って頭を抱えるウェルツ。
「結局あの人も、当初の計画から、少し作戦を変えたのかもしれん」
「そうだね」
そして下に戻る。
するとお、そこにはミアがいた。
「お前たち、欲も我にこのようなものを嵌めよって」
そこにいたのは、まごうことなきミアだっあt。
だが、中身は、異なるものだ。
確かに、魔物化から、戻るとは書いてあったが、完成体から戻るとは言われてないようだ。
「ミアちゃん」
「我はミアではない。くそ、これのせいで力が出んわ」
「そう」
「こんな不自由な体で表に出ていても仕方ない。しばらく体は戻してやるが、我はいつでも出で来るからなあ」
そしてミアは目を閉じた。
そしてしばらくたち、再び目を開けた。
「ふは、ここはどこなのです。私はどうなったのです」
そう言ってミアが鎖を引っ張ろうとする。すると、腕がひっぽあられる。
「何なんですこれは」
「説明するね」
ユウナはミアに説明する。今の状況を。
「つまり、私はこの鎖を外すとすぐにでも完成体になるのですか」
「残念ながら、そうだね」
「そんなの嫌なのです。でも、このままも嫌なのです」
今、鎖は後ろ手で拘束されている。
ミアには自由などない。
拘束状態なのだから。
「この鎖って」
ユウナは鎖をいじる。が、後ろでがっちりと拘束されており、ほどける様相はない。
前に変えることも出来なさそうだ。
「なるほど」
ユウナは呟く。
「これじゃあ、戦えないのです」
鎖は破壊しようと思えば壊せる。
だが、今破壊してしまうと、あの強敵が舞い戻ってきてしまう。
しかももう、メリダは消えてしまっている。手詰まりだ。
「私は」
ユウナは呟く。
「話の途中で悪いが、少しいいか?」
背後から声を掛けられ、ユウナはびくっとする。
その声の主は、ギルド長、ルイスだ。
「私は今、蘇生種と会った甲斐、そして勝利した。だが、その際に気が付いたことがある」
「それは、ミアrちゃんの今の状況を打破するために必要な物?」
「そうだ。新たな魔王軍のアジトを見つけた。そしてそこに組織が突撃するという情報を知った」
「え?」
流石に、情報が早くない?
ユウナはそう思った。
「だが、事実なのだ。お前もあっただろう。組織のボスに」
「ギルド長もあったのですか?」
ルベンが訊く。それに、ルイスが頷く。
「ユウナ、そしてウェルツ。お前たちは一応ギルドの位置メンバーとして席を入れている。だから、組織と一緒に、魔王軍を襲撃しろ」
話が急だ。
ユウナは疑問に思った。
「なんで急に?」
居ても多tぅてもいられず、ユウナはそう言った。
「ボスに、同盟を申し込まれたのだ。そして私は、それを快諾した」
「ギルド長。あまりにも急だ。俺たちは今まで組織と戦ってきていたのに」
「勝手に決めて悪かったと思っている。だが、よく考えて欲しい。組織とは途中まで思索が一致している。あちらも、魔王軍を滅ぼさんとしていることは事実だからな」
「それは……」
その通りだ。だが、受け入れがたいこともある。
今まで戦ってきていた相手と安易に手を組むことなど、はあつぃて良しとしていいのだろうか。
「迷っているな」
ルイスのその言葉にビクンとユウナの方が揺れた。
「だが、これは俺の決定事項だ。あくまでも強制権は無い。が、利口な選択をした方がいいと思う」
何を言っているんだろう。
ユウナはそう思った。
ルイスとはほとんど喋ったことはない。ただ、なんだか恐ろしい気配を感じるのだ。
「私は……」
「待ってくれ」
次に食い下がったのは、ウェルツだ。
「あまりにも急すぎないか? 少なくともトップクラスの戦力である、ルベンとレナードが傷ついているし、貴方も傷ついている。そんな中奇襲を仕掛けるのか? ばかげている」
ウェルツは物怖じしない態度で、言う。
「それについては私が説明しよう」
だが、そこに現れたのは、組織のボスだ。
「……ボス」
ウェルツが呟く。
「私はルイスの言葉を承諾した。確かに我々は先ほどまで戦っており、互いに戦力を投資した」
確かに、ラパルディア軍の中にも死傷者は多数存在する。
それこそ、ギルドとしてきた人たちの中にも死傷者が出てきているのだ。
ミアも、今や戦える体ではない。
むろん、組織の方も、ユキヤや、メルスなど、様々な戦力を投下している。
「だが、あんなもの、大したものではない」
そう言い放ったボス。
その言葉によって空気が硬直する。
「私にとっては多少の戦力の低下など、無価値だ。段々と完成体の量産体制に入っているからな」
強がりを、そうウェルツは叫びたくなった。
まだウェルツがいた時、完成体候補などできたら奇跡みたいな感じだった。
決して、量産などできるわけがない。
裏があるだろう。そうウェルツは軽く思った。
もしくは、裏切りギルドを破滅につながる一手を取ってくる可能性もある。
だが、なぜルイスはそれに頷いたのか。
ルイスだって馬鹿ではない。そんなこと思いつくはずだ。
「そういう事らしい。魔王軍さえ倒したら後は組織掃討に時間をかけられる」
「待って!」ユウナは叫んだ。「どうやって魔王軍の本拠地の場所を知ったの?」
今まで、魔王軍の方から向かってくるというケースが多かった。逆に、こちらから仕掛けるケースなんてないのだ。
今まで主な魔王軍幹部レベルの場所なんて知らなかったのだ。
「それは、魔王軍から聞いた」
「聞いた?」
「ああ、奴の幹部の死体から情報を聞いたんだ」
「幹部って、あの蘇生主?」
「そうだ。私の部下が、そう言う能力を持っているのだ。だからこそ、場所を聞けたのだ」
怪しさ前回だが、その疑惑は亡くなった。
それは、ボスが指パッチンをした。すると、ラグナラッシュの死体が運ばれてくる。それを見て、ユウナは驚いた。
「これは私が倒したものだ」
そう言って、その場にいた部下に残留意志を読み取らせる。すると、「わしの軍の本拠地は、ラシュボー洞穴じゃあ」
その言葉を聞いて、ルイスは「だそうだ」と言った。
組織が援軍を頼み、ルイスがそれに頷いた理由。それが、分かった以上。断るわけには行かない。
「分かった」
ウェルツは頷いた。ユウナはウェルツの方を軽く見た後、うなずいた。




