第八十四話 激戦
「化け物じゃねえか」
ウェルツはそう呟いた。
ユウナも同意見だ。
攻撃が通ってもダメージをほとんど与えられない。
これならば、ミアを封じず、ユキヤにぶつければよかったのだろうか。
いや、ユウナの行動は間違ってはいないはずだ。
「ちくしょうがあ」
「我、殺す」
ロランの剣はその攻撃を見事に受け止める。だが、やはり、ユキヤの攻撃に追いついていない。
その卓越した剣技も、さらなる剣技を持つ者には無意味だ。
「畜生が。しかし、忘れてはいけないぞ」
「何だ」
「俺は死人。だが、もう一度この世に舞い戻るチャンスを得た。所詮借り染めの命だ。もう、国盗りはかなわない。だが、力なら求めることが出来る」
そしてロランの体からオーラが飛び出る。
邪悪なオーラだ。そのオーラは全て覆い包もうとしている。
「俺は死んだことによってコツをつかんだ。だから今ならステージを進める」
ロランの中からオーラが飛び出、一気にユキヤへと襲い掛かる。
まるでロランが二人いるかのように。そして、ロランが魔法で生み出した多数の剣。
そしロラン本体。それが、一気にユキヤへと襲い掛かる。
「俺はもう何も恐れねえ。てめえみてえな強者を倒して俺は天国へと昇る。そのあとはユウナお前の番だ」
「え? 私も?」
「当然だろ。俺の右腕を殺し、俺を殺したんだ。復讐する権利くらいあるだろ」
「えー」
ユウナは軽い溜息を吐いた。
「でも、心強いね」
ロランはああ入っているが、今のユウナを殺しても手応えなどないだろう。
「行くぞ」
ロランは一気に地面をけり、ユキヤへと向かっていく。
「む、忙しい」
そう言ってユキヤはロランの剣技を一身に受け続ける。
幸い、ユキヤの能力で疲れはあまり感じない。ユキヤが負ける可能性はこの時点でゼロに等しいのだ。
「はあ!」
ロランの方が優勢だ。だが、ユキヤはそれに対して一歩も引いていない。
その剣でロランの剣を受け続ける。
「この程度で優位に立ったと思うな」
ユキヤはそう呟き、ロランの剣をすべていなし、一気にロランへと斬りかかる。
ロランは死人であり、完成体としてのステージを一つ上がったとはいえ、所詮人間の域を超えていない。無論血が流れ過ぎたら死ぬ。それには変わりがないのだ。
だが、ユキヤは不死身の回復力を持つ。
若干踏み込んだ、相打ち覚悟の攻めでも実行できるのだ。
「は、面白い」
ユキヤは刺されても易々とは死なない。それは分かっている。
だからこそ、ユキヤの剣を受け止めてから指しまくる必要がある。回復が追い付かない程度にいたぶる必要がある。
「俺はロランだ」
「なんだ」
「覚えておけ。今からお前を殺す男の名前だ」
そう言ってロランは剣捌きを過熱させていく。
「はあ!!」
ロランはユキヤのすべての剣を捌き終えた。
その瞬間、ロランの反撃が始まる。
ロランは一気にユキヤへと剣を刺して行く。二本の腕では百本の剣は受け止めきれない。それが当然の心理だ。
ユキヤの背中にどんどんと剣が刺さっていく。
「愚かな」
だが、ユキヤの剣はロランの腹を切り裂いた。
「馬鹿な」
「かすり傷を負った程度で俺はひるまない」
剣は突き刺さったままで、血はダラダラと流れている。だが、ユキヤは平気そうだった。
ここまでしても致命傷には至らない。
それが、ユキヤという男なのか。
「うおおおおおおおおおお」
ユキヤは叫んだ。強敵を刺し殺した歓喜で。
だが、その瞬間、「馬鹿かよ」という声を聴いた。
ユウナの魔法が準備完了していたのだ。
「なぜ動ける」
「多少無理をしたからね」
今ユウナは魔力を供給されている。ウェルツ達からだ。
その原理はシンプルに、魔力を貰っているのだ。
だが、無論そんなたやすいものではない。
魔力のち密なコントロールが必要なうえに、失敗すると、命の危機まであり、成功したとしても得られる間y六両は少ないものだ。
だが、それがこの場にいる兵士全員からだとすれば。それは激しいものになる。しかも、今広大な魔力を受け取ったのだ。
それはロランの魔力だ。
実はロランは刺される瞬間、ユウナに魔力を送っていたのだ。それも大量に。
「この魔力ならいけるだろ」
ロランがそう言うと、ユウナは一気に魔法をユキヤの方へと振り下ろした。その魔法はユキヤの体を包み込んだ。
「ぐぎゃあああああああああああ」
ユキヤの叫びが聞こえる。
ユキヤも恐らく被害者。救ってやりたいが、ミアの時とは状況が違うのだ。
(ごめんね)
ユウナは心の中で謝る。
こんな乱暴な手でしか、ユキヤを排除できなくて。
「くっ、我はまだ倒れん」
だが、ユキヤは生きていた。
猛火に焼かれていたにもかかわらず。
「化け物かよ」
ロランは呟く。この場に今、体力が残っている者はいない。
ロランでさえも、善体力を使い果たしている。
「おのれ、我は貴様を許さん」
しかし、そこでユウナはとある事実に気付く。
ユキヤの回復が泊まっている。
「ロランさん」
お願いします。そう、ユウナが言うと、ロランは切れかけている体力を無理やり使い込み、一気にユキヤの方へと駆けていく。
「わりいな、てめえだけは殺さないと気が済まねえんだ」
そう言ってロランは一思いに、ユキヤの首を跳ねようとする。
だが、ロランも手負い。力が十分に残っているわけでは無い。
剣に力が入らないのだ。
首が硬く、中々剣が通らない。
「ぬあああああああああ」
ロランは必死に剣に力を込める。
「その力、惰弱」
そう言ったユキヤはロランの腹にとどめと言いたげに、剣を刺す。
「ふん。剣を刺してくれたおかげで、俺はまだ戦える」
そう言ったロランに回復魔法がかけられる。ミコトだ。
「俺の体力は正直ほとんど残ってはいなかった。が、助かったぜ」
ロランの腹がミコトの回復魔法により回復していく。
その影響で、ロランの腹に、ユキヤの剣が完全に埋まる。
そしてロランは一気にユキヤから距離を取る。
「県が無かったら、もうお前は戦えないはずだ」
そう言ったロランは魔法弾を発yさする。
「俺も魔法が使えるんだよ」
ユキヤはそれを避けていくが、もはやあの化け物じみた回復力はない。次々に被弾していく。
そして、その後ろには、ユウナが来ていた。
「ありがとうロランさん。後は私が決めるね」
そう言い放ったユウナは一気にユキヤの首を斬り去った。
「畜生いいところだけ取りやがって」
そう言ってロランはその場に倒れる。
「今からお前を殺しに行きたいところだが、あいにく体が動かねえ。借りは後日だな」
「うん」
もっとも、ロランが、あと何時間生きて居られるかは疑問に残るところだが。




