表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完成体少女  作者: 有原優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/104

第八十二話 勝利

 


「おい、お前!!」


 外にいたウェルツがミアに声をかける。


「まさかお前」

「お前もミア・ハーグスの知り合いか?」


 それを聞いた途端ウェルツは絶望した。

 こいつはミアじゃない。

 最悪の事態だ。ミアが完成体にさせられてしまった。


 元からユウナたち三人の中で完成体にしやすいのはミアだった。

 ミアだけ、完成体への階段をはるかに上っている。


「安心しろ。俺がお前を止めてやる」


 こうしてミア対ウェルツの戦いとなった。


 ミアは早速踏み込み、拳をウェルツの方へと数撃叩き込む。それをウェルツは華麗な動きで避けていくが、地面にどんどんと大穴が空いていく。

 一撃でも喰らえばゲームオーバー。ウェルツの死だ。

 まさにくそげーだ。


 だが、ウェルツの目は、その拳撃の穴を見ても生きている。

 いかなるくそげーであったとしても、これはゲームなんかではない。

戦争みたいなものだ。

勝てる見込みがわずかでも、戦い抜かなければならない。


「俺もいるぜ」


 そう言ってウェルツの横に降りたのはレナードだ。



「ぼろぼろだが、まだ戦えるぜ」


 レナードの存在はありがたい。

 勝てる可能性を大幅に引き上げてくれる存在だ。


 二人は各々距離を取りながらミアの出方をうかがう。

 一方を攻撃した隙にもう一人が、もう一方を攻撃した隙に、最初の一人が、ミアを攻撃する。決して深追いはせず、やばいと思ったら即退避する。

それが、今のウェルツ達の作戦だ。


「うっとおしい。私は別に貴様らと戦う必要はない」


 そう言って淡々と城に向かって歩いていく。それが自然過ぎて一瞬思考が固まった。

 だが、すぐさま自分のすべきことを思い出し、二人して攻撃を加える。

 城に入らせるわけには行かない。ユキヤという存在だけでなく、こいつまでも入れてしまったらまさに終わりだ。


「邪魔だ」


 だが、ミアはその挟撃を二本の腕で防ぐ。

まさに鉄壁と言っても差支えが無いほどの、強靭な腕だ。


「っち、硬いのかよ」

「あの時と一緒か」


 ミアと組織の支部で戦った時だ。

 その腕は固く、攻撃が加わらなかった。それが、今も同じ。いや、もっと絶望感がある。


「俺は、ユウナを信じてる」

「ユウナ?」

「ユウナが戻ってくるまでに、お前を疲弊させなければならないんだ」

「それは無駄だ、あやつは今、魔力切れだ。追ってきたとしても我には手も足も出ないだろう。……おとなしく雑魚は引っ込んでいろ」

「雑魚は雑魚らしくもがくさ」


 そう言ってウェルツは攻撃の手を緩めない。


「私が貴様らの攻撃を敢えて受けてやってることにも気づかんのか」


 そう言ってミアは手を思い切り開いた。その攻撃で腕に剣を押しやっていたウェルツとレナードは吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。


「あっぐ」


 その攻撃の威力は半端ない。

 正直骨の一本や二本は折れていてもおかしくはない。

 いや、確実に折れているだろう。


 そして立ち上がれない二人をよそに、ミアは静かに階段を上がっていく。


 ミアにとって二人はそこらにいる塵芥。別に滅ぼさなくてはならないわけでは無いのだ。


 レナードはふと思う。

 別にレナードとしてはミアは初対面だ。ユウナとは友達だという話だが、ユウナともそこまで親しいわけでは無い。

 一度戦場で会っただけだ。


 レナードには再びミアに立ち向かう勇気はなかった。

 右腕が腫れ、片手しか使えない今戦うことなどできない。

 だが、そんな中ミアは歩みを止めた。

 ウェルツがミアの行き場を妨げた。


 ――その立ち直りはウェルツの方が早かった。

 ウェルツは立ち直った後、すぐさまミアの方に向かったのだ。


「無駄だというのが分からなんのか?」

「ユウナがきっと来るはずだ」


 ウェルツには見えている。ミアの片手にはめられている枷が。

 恐らくあれはミアみたいな完成体に対する枷だろう。

 あの狂女が、魔物に対する対抗策を考えていないわけがない。


 ウェルツには希望が見えていた。

 それにウェルツは知っているのだ。

 完成体になりし後も、戻す方法自体は難しいが、今現実にあるのだと。


 ミアに対抗して剣を振るう。その先に希望があるのかはウェルツ自身にも分からないが、諦めるわけには行かない。


 しかし、ウェルツの剣はミアの拳、その肉体にはまったく通らない。

 ただ、ウェルツはあくまで援軍を待てばいいのだ。

 そう、助っ人となる、ユウナ達が来てくれるのを待てばいいのだ。



 ウェルツはただひたすら敵のミアの攻撃を食い止める。

 レナードはまだ立ち上がっていない。後二十秒はかかりそうな雰囲気だ。


 ウェルツの体はそろそろ限界を迎えそうだ。

 ただ、まだまだ諦めるつもりなどない。


「うおおおおお!!!」


 ウェルツは吠える。

 そうして、ようやく一撃を喰らわせることに成功した。

 ミアの皮膚を突き破る強烈な一撃を。


「む、痛いな」


 ミアはそう呟いた。


「畜生。俺の全力でこれだけか」


 そう言ってウェルツの意識は途絶えた。


 ミアが、「所詮この程度か」と呟き先に進もうとしたその時、そこに別の人物が現れた。


 それはまさにユウナだった。

 後ろにはルベンとグレイルも来ている。

 待望の援軍だ。

 そこへ、先程戦意を折られた兵士たちも来ていた。


「さあ、元のミアちゃんに戻ってもらうよ」


 そう。ユウナは意気揚々と言った。


 ミアは早速、ユウナを無視して先へと進む。まるでユウナをいないものとして扱うように。

 そんなミアに対してユウナは「むかつくなあ」と、一言吐き捨て、早速ミアの方へと向かって行く。

 先程よりは魔力が回復している。

 治癒魔法もかけてもらえた。


 今ならいける。

 最低限の魔力をこめ、炎剣を振るう。

 だけど、それはあくまで陽動だ。

 枷をはめさせるのが、真の目的だ。


「くどい」


 ミアはものすごいスピードでユウナの剣を払う。

 ユウナはその衝撃を受け止められず、跳ねのけられる。


 自分の背中に背負っている枷をはめさせる隙はなかなかできない。だが、その間にグレイルやルベンも次々と動き出す。

 数で圧力をかけたら中々行ける。


 ミアは強いが、攻撃範囲は広くはない。

 全員で攻撃を散らす。そして全員回避に集中する。


 だが、それでもミアの攻撃に一人ずつやられていく。

 その者たちはもう致命傷で、ミコトの回復ありでも、前線復帰などできない。


 だが、それでも、段々とミアの攻撃は鈍ってきている。

 流石の彼女も疲労がたまって来たのであろう

 そしてユウナは、


(これ、動きが見えるようになった! これならいける)


 この攻撃の速度なら、もう大丈夫だ。

 ユウナは冷静にミアの攻撃の隙を探る。

 そして、ミアの拳が垂直に伸び切ったときに、ユウナは今だ! と思い、一気に飛び込む。


「ぬ」

「終われええええええ」


 ユウナの持っている枷はついにミアの左手を捉え、枷をはめた。その瞬間ミアの両手は後ろ手に縛られ、そのままミアは元の姿は元に戻った。


「お疲れ様、ミアちゃん」


 そうユウナは呟いた。

 もう、ミアは元に戻っている。そう、ユウナは感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ