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完成体少女  作者: 有原優


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第八十話 絶望

 

 そして物語はユウナ側へと戻る。


 グレイルが剣を抜き、一気にミアに斬りかかるが、


「効くか、そんなものが」


 そう言ったミアの手によってあっさりと手で受けられる。

 グレイルは剣に力を入れるも、その硬い皮膚に守られ、肉まで剣が通らない。


「これは難敵だな」

「私が」


 ミコトがグレイルに強化魔法をかける。

 その効果でグレイルの剣の強さが増す。

 その剣はじわじわとミアの手に斬り込まれていく。


「うっとおしい」


 ミアの一撃。

 一瞬で、グレイルが弾き返される。


「っだが」


 グレイルは再び立ち上がり、ミアの方へと向かう。

 剣に炎を纏ってだ。


 正直なところを言うと、グレイルはユウナ以上に、ミアと戦えていた。

 だが、やはり傷がつかない。

 ミアが硬すぎるのだ。


「一体、どうすれば」


 グレイルは呟く。

 このままではまずいという事は明白だ。

 このままではやられてしまう。


 一方ユウナにも、もう戦う気力は残っていなかった。


 回復部隊によって回復させられながら、「なんでなの……?」

 そう、呟く事しか出来なかった。


 いつか、グレイルも体力が切れてしまうだろう。

 そうなったらもう全滅まっしぐらだ。


 それまでにユウナは再びミアに立ち向かわなくてはならないのに、元気がでない。

 自分が動かなくては、全滅は免れないのに。


「俺もいるぞ」


 そう言ってルベンもまたミアに立ち向かっていく。

 能力でミアのスピードを緩めながら戦っていく。


「まさか、その程度で私がやられるとでも思っているのかあ」


 手でグレイルの剣を受けながら、もう片方の手でルベンを弾き飛ばす。


「あははははは、私に敵う物なんていない。今、私は最強だ」


 ミアと、ミアハグルティアの声は変わっていない。

 だからこそ、あの、可愛いらしいミアの声が脳内で再生された。

 ああ、ミアはまだ終わっていい存在じゃない。


 今は方法なんて一切分からない。

 でも、諦めてていい事なんてないだろう。


「ああ、そうだ」


 再び立ち上がらなければ、きっと後悔するだろう。

 ユウナは立ち上がりミアの元へと向かう。


「あはは、今度はあなたが私と戦うのお?」

「うん。そうだよ、そしてあなたという人格を抹消する」

「無駄無だあ、今の私こそが真のミアなんだから」

「無駄かどうかは戦っていないと分からないでしょっ!!」



 二人がぶつかり合う。

 またその間にもグレイルもルベンも動き出し、三人で立ち向かう。


「三人で来るなんて、卑怯じゃないの?」

「決して卑怯じゃないわ。あなたを元に戻すためだもの」

「へえ、つまらない」


 ミアは相も変わらず手を振り下ろしていく。

 その破壊力はやはり凄まじい物で、地面にどんどんと穴が開いていく。


「流石だよね。でも、」


 ユウナにも手はある。


「リフレクションバリア、物理!!」


 ユウナはカウンターとばかりに魔法を行使する。

 いかに恐ろしいミアでも、自分の拳を喰らったらダメージは相当な物だろう。


「むう、やるねえ」


 ダメージは来ているみたいだ。

 だが、そこまでではない。

 これじゃあ、隙作りにしかならない。


「困ったなあ。じゃあ、グレイルさんとルベンさんお願い」


 そして、全力の炎を作り出す。

 隙を作らせて、その隙に攻撃に転ずる。

 正直残り魔力量じゃあ、この魔法だけで魔力の大半が消えてしまうだろう。

 でも、だからと言って引き下がるわけにもいかない。


 だが、この攻撃でミアを燃やし尽くすわけにもいかない。何せ、ミアがまだ戻る可能性をユウナは感じているのだ。

 ミアが敵として死ぬなんてことはだれも望んでいない。ユウナもウェルツも、ミコトも、マリアさんも。


 理想はミアを気絶させ、拘束して元に戻る方法をその間に模索することだ。

 だが、かといって半端に攻撃してあの状態のミアに殺されるのもよくない。

 ミアが消滅しないことを願っての全力投球、これしかないのだ。


 その思考の間にグレイルらがミアの動きを止めた。


「ミアちゃん、死なないで」


 ユウナはそう言って巨大な炎の球をミアに向けて投げる。

 正直この一撃が決まらなければ、もうどうすることもできない。

 もう、終わりの始まりだ。


 ――お願いだからこの一撃で倒れてっ!!!!


 そして、炎球はその背中に直撃した。


「中々痛いんじゃないの」


 ミアはそう言ってユウナの方に目を向けてきた。


 化け物だ。

 ロラン以上にまずいかもしれない。


 何しろ、ロランは強いとはいえ人間の範疇だ。

 だが、今のミアは人間レベルのものではない。

 その巨大な体躯からも計り知れる。


「ミアちゃんに、もうこれ以上暴れさせたらだめだ!」


 ユウナは残りの魔力を無理やり編み出す。


 残り魔力の全部を込めて二発目を放つ。


「なめられたものだな。……この私も」


 その手で攻撃が跳ね返される。それを見て、ユウナはその場に倒れ込んだ。


「これはまずい」


 そう、ルベンが呟く。


 ユウナが倒れてる位置はここより20メートルもない。

 今のミアなら二歩三歩でたどり着いてしまう。


 向こうの人たちはユウナが倒れているのに気づいていない。

 かといって今戦いから離脱したらグレイル一人では食い止めることもできないだろう。


 明らかに戦力が足りていない。

 だが、ミアの方を見る。

 ユウナの炎が若干ながら聞いているようで、決着を焦っているように見えた。


 だと知れば若干ながら勝ち目が出てくる。


「ふん!」


 ルベンの魔法もほとんど効かない。ならば、その魔力もすべて剣に込めるしかない。


 そんな時、ユウナに近づく影が見えた。

 ルベンがそれを見やる。

 そこにはミコトがいた。


 ルベンはそれを見て、軽くうなずき、向き直る。




「お姉ちゃん!!」


 ミコトがそう言ってユウナに回復魔法をかける。


「ん」


 そのミコトの声で、ユウナは目が覚める。


「ミコト……?」

「うん、私だよお姉ちゃん」

「そう……戦局は?」

「あの二人が抑えてる」


 そしてミコトは向こうで戦ってる二人を指さす。


 ユウナはそれを見て「戻らなきゃ……」と呟く。


「だめだよ、お姉ちゃん」


 ミコトがユウナの肩をつかむ。


「お姉ちゃんはまだ魔力が戻ってないんだから」

「っでも!」


 今戻らなければいけない。このままではいずれ前線が瓦解し、被害が広まっていくかもしれない。


「でも、お姉ちゃんが今やらなきゃならないのは、体と魔力を回復させることだよ」


 ミコトがそう説得するも、ユウナには響かない。

 自分がやらなければ誰がやるの。

 まだ体力が回復しきっていないが、ユウナは戦況に復帰しようとする。

 だが、そんなユウナにある可能性が出てきた。


 ――魔物化によって完全に完成体になるんだったら、わざわざ拷問で完成体にさせる必要もないんじゃ。

 という事は、まだ希望はある。


「研究所って、まだ残ってるよね」


 こういう時にウェルツさんがこっちに来ていれば……

 でも、無い物ねだりは嫌だ。


「ミコト、研究所に向かおう!!」


 ユウナはそう、ミコトに言う。

 一縷の希望を見つけに。



「ミアを戻すために」



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