表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完成体少女  作者: 有原優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/104

第七十八話 戦闘

 その当日組織本拠地へと向け、およそ3万もの兵が出立した。

 各々の目的はみな同じだ。

 組織をほろぼすこと、それのみだ。


 だが、二人ほどその目的を違えているものがいるが。




 ウェルツは、ロランに作戦実行前に、組織が今得ている情報全てを話した。その代わりに、作戦の大半を教えてもらい、その情報を組織に伝えた。

 それにより、情報が完全に漏れている。

 日取り、作戦、そのすべてが漏れているのだ。


「なんだこれは」


 ロランが叫ぶ。完全に包囲されていたのだ。


 それも、数千の兵によって。


 無論、数では八倍もの兵力がある。だがその数の利も、戦略の差で簡単に覆る。しかも地の利もあり、さらには谷の上に敵兵が大量にいる。


 そこからの攻撃をしのぎ切るのはいくら洗練された王国兵とて、簡単な事ではない。


「くぅ」


 ロランは攻撃を見事に受けきるも、上からの攻撃で、兵士たちがみるみるとゴミのように死んでいく。


(ああ、いいさ。てめえらはくたばっとけ)


 ロランの目的は将来的な王国掌握。そのためには、多少の犠牲は見過ごせる。


 ウェルツもまた必死で、魔法弾を避ける。

 その容赦のない攻撃を。

 俺もよほど信用されているな。そう、ウェルツは思った。まだスパイ作戦の決行中だというのに、容赦なく、攻撃が放たれていくのだから。


 しかし、別に構わない。今は裏切れネイトことはウェルツには分かっている。

 裏切るのは、そう。ここを突破し、王国軍が、組織の主要たいとぶつかった後だ。

 それまでは自分も屋tら郲ていないといけない。


 そして、王国軍は多数の犠牲を払いながらも、突破した。だが、そこに襲い掛かって来たのはさらなる兵五千。

 その塀の奇襲に対応できないまま、どんどんと中央まで兵が突き進んでいく。無論、主戦力足るロランを打つためだ。

 何しろ、同盟関係は情報を交換するまであり、ここでもう協力関係は終わっている。

 今、ウェルツ達組織側から見たら、ロランはただの敵の主力。討つべき敵だ。

 ここではロランは強敵。さっさと潰した方が良い戦力だ。



「はあ!!!」


 カミンが叫び、どんどんと兵を切り捨てていく。そしてあっという間に、ウェルツの持ち場に来た。


 そして一太刀ぶつかり合う。


「おお、いいぞウェルツ」


 サルサが言う。だが、その瞬間、ウェルツは近くにいた王国兵たちを切り裂いていった。

 組織側の兵では無くだ。


「急にどうしたんだよ、ルチェル」

「悪いな」


 ウェルツはサルサに見向きもせず、どんどんと周囲の王国兵たちを切り裂いていきながら進んでいく。

 その勢いはとどまるところを知らない。

 そのまま王国軍のトップ――ロランを狙って行った。


「お前はここに来ると思ってたよ。ルチェル!!」



 そして、ロランとウェルツの剣がぶつかり合う。


 そして地獄と化した戦場で一人、動けていないものがいた。


「なんなんだよ、どうしたんだよ。なんでルチェルが裏切ってるんだよ」


 サルサの剣の持ち手が震える。

 情報がかく乱していて何が何だか分からない。

 祖のサルサの目の前に一人の男が現れた。


「戦場でそんなことしてたら死ぬぞ」


 ラメリダだ、その剣がサルサの首元へと伸びる。が、サルサは危機一髪首を後ろに下げ、避けた。


「悩む暇すらくれないってことか」


 サルサはそう呟き、剣を構える。

 だが、この戦場での立ち位置は変わっていない。

 ウェルツが仮にスパイだったとしても、組織を壊滅させる、そのサルサ自身の目的は変わっていないのだから。


「うおおおおおお!!!」


 サルサはラメリダの剣を果敢にさばいていく。

 サルサ自身も、組織憎さで、剣の腕は鍛えている。

 前のアスティニアとの戦場では対して活躍できなかった。だからここで、活躍できないのは嫌だ。


 サルサの剣が、ラメリダの首元を切り裂いた。


 ラメリダの首から血が飛び出、そのまま倒れていく。


「はあはあ、やったぞ。まずは一人」

「ラメリダ!?」


 ウェルツは後ろを振り向く。



「よそ見すんなよ、ルチェル!!」


 ロランの剣が振り抜かれ、ウェルツの肩をかすった。

 油断していたのだ、


「いいから別のところで戦えよ。俺はお前に用があるんだ」


 そう、ロランはカミンをにらむ。


「いい心構えだ。お前を打ち取ってこそ、我らの勝ちが決まる」


 そう言ったカミンは剣から炎を出す。


「ファイヤーウォール!!」



 炎の壁がロランに向かって行く。






「サルサ」


 ウェルツはサルサをにらむ。


「ルチェル。お前は組織の人間だったのか?」

「ああ。そうだ。お前の村を壊滅状態にしたのも俺だ」

「そうか、お前のせいなのか」

「ああ」


 サルサの剣がロランに向かって行く。


「俺はお前を信頼してた。なのになぜ裏切った」

「俺は裏切っていない。元から味方になってもいない」


 サルサと、ウェルツの剣がぶつかる。


「サルサ、今ならお前だけなら見逃してやる」

「はあ、なんだそれは。お前を殺してやる!!」

「そうだな、恨まれても仕方がない。ただ、俺は俺の正義に従っただけだ。それに、実験体はこっちで元気に育ててやる」

「はあ、その育て上げた姿がなんぼの物なんだよ!!」


 段々とウェルツが押されていく。

 サルサの剣に怒りというエネルギーが込められているからだ。

 ウェルツはその剣を避ける避ける。


 ウェルツがどんどんと後ろに追いやられていくが、決して勝機が無いわけでは無い。

 サルサの剣は重いが、動きは鈍い。

 隙を見て飛び込めば、サルサの首など容易に取れるはずだ。

 だが、ウェルツが躊躇っているのはそこではない。


(俺に、こいつの首が取れるのか?)


 ウェルツにはサルサの首を取るという未来が見えなくなっていた。

 組織に道具として育てられてきた柳瀬留津だが、今まで殺した人たちは皆顔も知らない他人だ。なのに今目の前にいるのは顔見知りのサルサ。

 ウェルツは顔見知りの首を何も考えずにとれるほど、人間はやめていなかった。

 だが、逃げ延びるのは難しい。彼が諦めてくれるとは思えないし、何より、ここでウェルツの手が緩めば、最終的には押し負けるだろう。

 組織のためを思えば、サルサを斬らない選択肢はない。

 ウェルツはそれが分かっていながら、中々決行に移せない。


 だが、そんな中サルサの剣が、ウェルツの脇腹をかすった。

 その瞬間、ウェルツは「うわあああああ」と叫び、サルサの体を真っ二つに切り裂いた。


「え?」と言ってその場に倒れるサルサ。

 ウェルツは命の危機が迫ってから、仲の良かった同僚を切り裂いた自分にも嫌気がさした。


「すまんなサルサ」


 ウェルツはそう呟いた。今のウェルツの脳内は、


(俺が正しい、俺が正しい。こうするしかなかったんだ。だから俺は悪くない)


 そんな自己暗示の様な物が流れていた。




 その後、段々と王国軍は、押し戻され、ロランはついに撤退の指示を出した。


 組織の勝利だ。だが、ウェルツの心は晴れなかった、


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ