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完成体少女  作者: 有原優


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第七十七話 村

 その後、ウェルツには軍隊長の位が与えられた。当然、戦争の戦果もあるが、総隊長の一人であるロランが後押ししてくれたからだ。


「さて、交換と行こうじゃないか」


 そうロランが言った。


「まず、てめえは、何を求める」


 ここで、組織襲撃に関する情報と言いきれればなんと楽な事だろうが、だが、目の前の人物は信用できる人物でもない。


 国を裏切った振りをして、またウェルツを裏切る可能性がある。


「ここで、お前の正体は、組織の一員、もしくは名前の出ていないテロ組織、最後に敵側の密兵という可能性がある。だが、三つめはないだろう。今の敵国アスティニアの一員なら、裏切るタイミングがおかしい。手柄が欲しいしろ、ヒョウギリと二人で俺を殺せばよかったんだ。そして二つ目、その場合は、俺にその情報を渡すのも危惧するのもうなずける。だが、これもなしだ。戸籍を偽造して送り込むとなれば、かなり大きな組織だろう。俺が把握できていない新たな組織があるとは思えない。となれば最後の選択肢に行く。お前は組織の人間だな」


 もうバレている。言い訳するのは無駄らしい。


「俺は、組織の人間だ」


 僧居ぅてウェルツは剣の塚に手をかける。いつロランが襲い掛かってきても対抗できるように。


「おっと、待てよ。俺は何もお前を取って食おうなんてつもりは無い。ただ、組織の人間ならやりやすいって話だ」

「やりやすい?」

「ああ、組織は今完成体を保有していると聞く。そのノウハウを俺に教えろ」


 ノウハウをか。

 ロランの野望。それは強くなるという事だ。そのためには手段を択ばない。


「なら、組織に加入したらどうでしょうか」

「それはだめだな」


 ロランは即座にウェルツの提案を断った。


「俺はあくまでもこの国のトップになりてえんだ。それに組織の力を借りたら、おめえらのとこの頭がトップになっちまうじゃねえか。俺はそれを望めねえ」


 なるほど、とウェルツは思った。あくまで人の部下になるのではなく、自分がトップに立ちたいと言うわけか。


「つまり俺はあなたに、完成体に関する情報を与え、あなたは俺に組織襲撃の日取りを教える。そう言うことでいいですよね」

「ああ」



 そして、ウェルツは部屋から出てきた。


「おうおう、何を話してたんだ?」


 そう言ってきたのは、サルサだ。


「ああ、ちょっと前の戦争についての話をな」


 確かに今ウェルツはロランという最大戦力の1人と話し合っていた。


「そうか、出世したなあ、お前も」

「出世したか。そうだな」


 目的の一部だ。とはいえ、もうロランと情報交換できた時点で、目的の大部分は果たしているのだが。


「そういえば、この先の組織討伐作戦楽しみだな」

「そうだな」


 それこそがウェルツが潜入した意味と言える。


「組織ってクソだろ。それを潰したら平和になるんだなって」


 その言葉にウェルツは一瞬聞き町がpがいを疑った。


「どういうところがクソなんだ?」

「そりゃ当たり前だろ。子供を攫って人体実験をするんだぞ。最悪に決まってる」


 だが、それは世界を救うためだ。

 ウェルツは少し、組織の存在する意義を解こうと思ったが、それでは、組織の人間でアr事がばれてしまう。それでは潜入任務も台無しになり、ロランとせっかく取り付けた協力関係が無きものにされる可能性もあるのだ。


「なあ。サルサ。俺は、組織の事をあまり知らないんだ。教えてくれないか?」


 そう、ウェルツはきく。その、外から見た組織の印象を知るために。


「いいよ」


 そう、サルサが告げ、「少しだけ付いてきてくれないか」という。

 その言葉に疑問を抱きながら、彼についていく。

 彼についていく事に時間。ウェルツは、そこで、悲惨な村の後を見た。それは、まさにウェルツが起こした惨劇だった。


「俺はこの村出身だ。だが、この村に恐ろしいっ少年が屋tぅて来た。そして奴がこの村の人間を皆殺しにしたんだ。俺は隠れてたから、奴らに見つかることは無かったが、それでも怒りの念は消えないんだ。それに、一人だけさらわれたまま帰ってこない子もいる。俺はあの少年を見つけ出し、そして殺したい。そして、さらわれた子を助けたい。だからこそ、軍に入ったんだ」


 ウェルツはそれを聞き、息を軽く吐き出した。


 自分がその少年だという事は、天地がひっくり返ったとしても言えない。

 罪滅ぼしをするつもりもない。ただ、自分は目の前の同僚に対してなんて言い訳が出来ようか。

 ウェルツにとって、村を襲ったことは、悪い事だとは思わない。ただ、被害者の生の声を聴いたのは実験体を含めて二人目だ。


「俺は、俺は」


 言葉が見つからない。だが、自分にとって一番大事な事を考えると、それは任務を無事に遂行すること。


「俺も、この光景を見て、組織の恐ろしさを感じた。俺も同じ気持ちだ。奴らは許してはならない」


 それを聞き、ほっとしたのだろうか。


「そう言ってもらえてうれしいよ。俺たち二人で組織をぶっ潰そう」

「ああ」


 そして二人は固い握手を結んだ。

 一人が組織からの密偵だとは知らずに。


 それからしばらくの間、ウェルツは自分の仕事をこなしながら、国の情報を探る。


 そしてついに運命の日が来る。


 その後も、その日まで色々と探っていった。だが、調べれば調べるほど、イングリディアには色々と怪しいところがあると感じた。それこそ、ロランのせいかどうかは分からないが、色々ときな臭いところがあるのだ。

 そして、組織襲撃当日になった。


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