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完成体少女  作者: 有原優


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第七十四話 メルス

 その頃。

 王城前。


「ぐるうううううう」


 沢山の野犬が襲い掛かってくる。さらにはゴブリン、そして、ミノタウロス。

 極めつけはその最先端にいる男。


 メルス・エイムズ。組織の人間だ。


「ははは、先輩。そこにいたんですね」


 男は叫ぶ。


「俺はあの後逃げ延びて、機密情報を隠しきったという事で、背負うsンしたんですよ。支部長に。そして今は他国に行って、研究の手伝いをしているわけだ」


 ウェルツはそれを見て、にらんだ。


「お前は今もあの組織に協力しているわけだな」

「そうだ。先輩こそ裏切るとは思ってましたけど、まさかあのタイミングとは思いませんでした。さて、裏切者のあなたを処刑しましょう」

「そう簡単に処刑されてたまるか」


 ウェルツは剣を握り、一気に向かって行く。だが、その道中のミノタウロスに行く手を阻まれる。


「そいつくらい倒してくれませんとねえ」

「うるさいな」


 ウェルツの実力ではミノタウロスにはかなわない。


「俺もいる」


 そこに現れたのはレナードだ。一気に走りミノタウロスに切りかかる。斧で食い止められるが、


「いまだ」


 レナードの叫びを聞いて、ウェルツは一気に剣を振るう。

 それもまた受け止められようとするが、レナードは体を捻り、剣を腕にぶっ刺した。

 そのあとに来る斧。それもしゃがんでよける。


「行け」


 ウェルツはその隙をつき、一気に切りかかった。

 その結果、無事ミノタウロスは一刀両断された。


「へえ、やるじゃないっすか。でも、これで終わりだと思わないでくださいよ」



 ミノタウロスを殺りに孤立したレナードとウェルツに向かってたくさんの獣が襲い掛かってくる。


「っ、増援か」

「任せろお!!」


 レナードがそう叫び、周りの獣を縦横無尽に切り刻んでいく。


「なるほど、そう来るっすか。なら」


 さらなる魔物が来る。


「あちら側も地獄だろうが、こんなところで怯むわけには行かない」



 今ユウナと共にいないからこそ、ユウナの迷惑になりたくないという気持ちは大きくなる。



「うおおおお!!!}


 ウェルツには大型と戦う力はないとしても、こういうモブを切り刻む力はある。


 ここで、踏ん張って、ユウナ達の期間を待つ。その気持ちが強くなる。


「あいつが戻ってくるまで、ここは渡さない!!」


 レナード、ウェルツの二人は魔物をどんどんと倒していく。それに呼応するように後ろもどんどんと前進してくる。

 これはいける。

 そう思った瞬間、天が割れた。


「我が行こう」


 その男は、公営の兵士を斧の一振りですべて弾き飛ばした。


「我は完成体候補、名をユキヤと申す」


 そう名乗った男は矛を薙ぎ払いどんどんと前進していく。


「っくそ」

「後ろを見る必要はない。俺たちが戻っては後ろが崩れてしまう。俺たちは今はどんどんと吸うs間無ければ」


 幸い、守りもしっかりとしている。

 そう簡単に崩れない。今は、メルスをしとめなければ。


「そう言えばお前はなぜメルダと手を組んでいる」

「簡単だよ。完成体候補は魔物になったとしても大丈夫なのだ。だからこそ、メリダに従い、メリダにユウナとミアその二人の完成体を魔物にさせ、そして我々が戦力と化す。それが目的だ」

「つまりメリダも使い捨ての駒という訳か」

「そうだ。さあ、行くぞ」


 メルスは一気にかけていき、ウェルツに向けて剣を振るう。


「お前は俺が完全に息の根を止めてやる」

「っふ、それはこっちのセリフだあああ」


 二人がぶつあkリアう中、


 公営では、たくさんの兵士たちが消し炭にされていく。


 そのんかで唯一国の守護のために残った男、ギュフール・オルブラインは吠える。


「ここは通さん」


 そう言って、ユキヤの矛を剣で受け止める。だが、あっという間に後ろに跳ね返される。


「弱いな」


 ユキヤはそう呟く。


 ギュフールは弱くない。ただ、ユキヤが強すぎるだけだ。


「ただ、ここは命にかけても通さない」

「ぬかせ」


 一瞬、矛を反射神経だけで弾き返していく。

 だが、全神経を使い続けてやっと均等に戦えるだけ。

 どう考えてもユキヤと対等に戦えているとは思えなかった。

 そして、限界はあっという間に来た。ギュフールは、息切れし始めた。


「この程度の運動で体力を切らすなど、羞恥をこれ以上さらさぬように命を取ってくれようか」

「くそ」


 他ぅ他の一分しか稼げてないのに、もうこのまま死んでしまうのか。

 そんなのはごめんだ。


「俺はあきらめない」


 足を動かし。そのまま剣をユキヤ目嗅げて振る。


 彼自身国王によって救われた命。

 このまま終わっていいはずがない。


「喰らええええ」

「邪魔だ」


 ギュフールの体から大量に血が出る。そして彼はその場に倒れた。



「他にかかってくるものはいないのか? いなければ我は国王を捕えに行くぞ」


 その言葉を聞き、みんな襲い掛かろうとするが、誰も足が動かない。

 皆ユキヤの恐怖が染みついているのだ。


「いないなら行くぞ」


 ユキヤはそのまま王城の中に入っていった。



「くだらん連中よ」


 場内の兵士たちをどんどんと切り殺していく。

 そしてあっという間に彼は王の間へとつく。


「我はこの国を乗っ取った。これで、我らの勝ちだ」


 ユキヤは王を捕え、王座に就く。


「いい座り心地だ。我はここで待っていればよいのだな」


 そう言ってユキヤはそっと目を閉じた。


 メルスとウェルツはぶつかり合う。そのなあ周りの兵士をどんどんとレナードが斬っていく。


「ちい」


 だが、ウェルツが押されていく。

 その剣の太刀筋に中々追いつけていない。


「先輩、弱いっすね。そんな実力でよく組織に入ってましたよね。……思い出してくださいよ、先輩はもっと強かったはずです」


 そう、ウェルツをにらむメルス。その姿は寂しそうだ。


「本当に、鬼のような強さのあなたでいてほしかった。今のあなたは控えめに言ってただの雑魚です」

「確かに今の俺は雑魚だ」

「認めましたかあ」

「ただ、気持ちではあの時に負けてなどいない」


 ウェルツは燃える。

 メルスは邪悪だ。

 本心で組織に酔狂している。

 これは洗脳ではない。


「俺がお前を殺す」

「やtぅてみてくださいよ」


 剣が再びぶつかり合う。


「気持ちで強くなるなんて物語の読みすぎです。現実総網膜はいかないっすから」

「そうかもな。ただ、それでも勝たなければならない」


 考えなければならない。メルスの癖を、特徴を。

 あいつと過ごした組織時代。

 あいつは何を考えていた?

 癖を見破れ。


「そうか」

「ん?」

「お前って弱かったんだな。ビビりすぎていたかもしれない。ビビる必要なんて一切ないのに」


 ウェルツは実際保身を守りながらの剣になっていた。

 だが、そんな必要なんてなかった。

 メルスに、かつての部下にビビってただけで、相手が塵芥のような雑兵だと考えたらどうか。


「弱く見えるな」

「なんだと」


 メルスは向かってくる。

 だけど、それもウェルツの重い道理だ、


 今メルスが目の前に現れたことで、思い出した。

 組織dネオ修羅の自分を、

 あの力を使わなかったとしても強かった。


「来い」


 ウェルツは剣を抜き、剣を構える。

ああ、あの時の自分は何を思って戦っていた。

そうだ、対象は違えど、守ろうとしていたんじゃないか。

そして、薬の力など対して使用せず戦っていた。


いいぞ、感覚が戻って来た。


「喰らええええ」

「ふん」


ウェルツはメルスの剣を直前で受けきる。

その剣の動きは修羅のゴおtく、自分を守るようにして戦う。


そして、ウェルツは感覚を研ぎ澄まし、剣を弾き返しながら隙を狙っていく。


「このままだと俺が先輩に勝っちゃうっすね。あれあれ、どうしたんすか?」


ウェルツは答えない。今応えても無駄だと思っているからだ。

ただ、明らかに調子に乗っているメルスを見て、確実にチャンスが来ると考えている。


そして、その隙は案外早く来た。


そう、メルスの脇が空いた。その瞬間にウェルツは剣を伸ばし、一閃。

メルスの腕を斬った。


「うわあああああ」



片手を失い、もがくメルス。


「ちくしょう、畜生、もはやあれを使うしか」


そしてメルスは薬を体内に打った。

メルスの体から紫のオーラが出る。


「ふふ、これで俺もお!!!」


だが、ウェルツ目、メルスはそこまでの脅威に感じなかった。


「そうか……」


ウェルツはそう呟き考察する。

だ薬と言っても、力を引き出させるだけ。

そして、ある一定以上の実力者になると薬の効果が薄れる。

メルスは効果がそこまでなかった。


「薬に頼るとそこまでだな」

「ほざけえええ」


そうほざくメルスをウェルツがぎりぎりで受けきる。

片手しかないメルスの攻撃は隙だらけで、ウェルツにはその隙があっさりと見える。

そして、メルスはすぐさま切り刻まれた。



「ああ、俺は強かったんだな」


メルスと会い、過去の出来事が思い起こされた今だからこそ、ウェルツは全盛期の力を取り戻した。



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