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完成体少女  作者: 有原優


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第五十八話 決着

 岩の上でのバトルは白熱の一途をたどる。

 ロランをウェルツ、ユウナ、ミア、剣聖で交互に一人ずつ戦っていく。

 さらに戦う者にはミコトの即時バフ魔法をかける。


 その攻撃にロランは少しずつ疲弊していく。


「はあはあ、てめえらふざけんなよ!!!」


 ロランの怒りもどんどんと溜まっていく。


「俺が最強なんだあ!!」


 岩を足で踏みしめた勢いで日々を入れる。

 その影響で地面が割れる。


 そして、地面が割れ、全員ユウナの生み出したバリアを足場とする。



「うぅ」


 ユウナはそう呻く。一気にバリアに体重が生じて重い。


「ははは、これでバリアを壊しやすくなったなあ!!」


 そう叫ぶロランに対し、剣聖が斬りにかかる。

 一瞬の猶予も与えてはならないと剣聖は理解した。バリアが壊されては勝ち目はない。


 さらにウェルツとミアがそれを見てロランに向かっていく。


「ははは、必死だなあ。余裕くらい持とうぜ?」


 そして剣が必死に交差していく。


 ロランに剣聖とウェルツが斬りかかる間に隙を見てミアが一撃を入れる。

 だが、やはり受けきられる。ミアの攻撃も剣で受けきられるのだ。


 決定的な一打が足りない。


「剣を防げれば」


 ユウナはそう呟く。だが、今は動けない。

 力を抜いたらバリアが消えてしまう。


「ミコト、お願い。バリアを!」


 自分ならあの剣を何とか出来る。

 バリアの維持を即座にミコトに渡し、ユウナは向かう。


 その瞬間バフが切れ剣聖はロランの攻撃により跳ね返された。

 だが、この瞬間、一撃を入れらっれば。


「これでも喰らえええ」


 ユウナは巨大な火の玉を製造する。


「いいのか?仲間も巻き添えになるぞ?」

「そんなのは分かっている」


 大事なのは、範囲じゃない。威力だ。


「だからこそ、私は放つ」

「やってみろ」

「行けええええええ」


 球がロランの方に向かっていく。

 それを見てミアと剣聖は咄嗟にロランから距離を取る。ミコトもそれを見て、バリアの幅を少しだけ広げる。



「させるか」


 ロランも剣聖の方に向かう。


「これでいいの」


 火の玉はロランに向かい爆発……することなく、小さくなっていく。


「ん? やっぱり脅しかあ?」


 だが、その火の玉は消えてはいなかった。小さい火の玉になって生き残っている。

 威力は落ちるが、小さくしたことにより剣聖を巻き込まない。その球はロランの死角に行き、そのまま向かっていく。


 だが、ロランはその戦闘経験から、油断しきってはいない。

 自分の背中に念のためバリアを作り出す。


 それを見てユウナはミアに念波を飛ばす。


「ミアちゃん。お願い、あのバリアを割って」

「うるさいのです。指図しないでほしいのです」


 そう、ミアが行ってロランの背中のバリアを思い切り叩く。

 その攻撃でバリアが割れ、ミアはすぐにその場を離れた。その瞬間ユウナの炎が大きくなり、ロランに襲い掛かる。


「球を小さくしてたのか」


 そしてロランは上に上がる。だが、その瞬間ミコトがバリアを消し去る

 その影響でバリアからうまくジャンプができない。

 ロランはそのまま炎に焼かれた。


「ぐうう」


 ロランは皮膚が焼けているが、ぎりぎりで生き残っている。


「許さんぞ!!! お前ら」


 ロランは剣をユウナに向ける。

 ユウナにはもはや避けることが出来ない。

 絶体絶命だ。

 だが、そこにいたウェルツが剣でロランの腹を刺した。


「ぐふ」


 ロランの口から血が出る。そしてそのまま剣はユウナの場所に届くことなく、その場に落ちる。

 まさに間一髪。

 ウェルツの攻撃が間に合っていなかったら確実にユウナは死んでいた。


 そのままロランは地面に落ちた。


「ちぃ、油断したぜ」ロランは皮膚が焼かれた状態のまま言った。「完成体同士の連携見事だぅたぜ」

「お前は後悔しているか?」剣聖が聞く。

「後悔? ゲルドグリスティが思ったより使えなかっただけだな。あいつがもっとやってくれたら、勝ててたさ」

「そうか……」


 剣聖が呟き、


「最後に言い残すことがあるか?」

「無い……と言いたいところだが、一つだけある。ラバルディア、俺が生まれた地だ。あそこに年老いたお袋がいる。あの人に言ってくれ。あんたの息子はよく頑張ったって」

「反乱をか?」

「いいや、人生をさ」

「私にはお前の人生はちんけなものに思えるがな、元盗賊よ」

「はは、あの時の俺にはああやって生きるしかなかったんだ。ああ生きるのが正解だと思っていたんだ。なあ、ハールンクラインよ、金のないガキが最後に行きつく先は何だと思う?」

「なんだ?」

「盗みだよ。あの時の俺らにはそうするしかなかったんだよ」


 そう、ロランはしみじみと言う。


「そうか。それは難儀なことだな。だが、だからと言って認められるわけではないがな」

「ははは、てめえならそう言うと思ってたぜ。なあ、ハールンクライン。俺はお前のことを認めてはいないからな」

「知っているさ。確かに私はお前よりも弱い。本来ならこの肩書きはお前が持つべきものだったのかもしれないな」

「はは、俺はお前を認めてねえのに、てめえは俺を認めるのかよ」

「実力はな」


そして、そんな元同僚二人の会話にミコトが入ってくる。


「ねえ」


 そんな時、ミコトがロランのもとに行く。


「なんで私たちの村を滅ぼしたの?」


 ミコトにはもはやあれが国の命令だとは思っていない。

 ロランの単独行動なのだろうと、思っている。もしくは魔王軍の命令に従ったか。

だが、後者だと、すでに戦争の際には手を組んでいたことになる。


「あれは俺の単独行動だ。完成体のヒントを探すべく、な」

「そう」


ミコトは自分のせいで村の人々が死んだんじゃないかと少し肩を落とす。


「ミコト、あなたのせいじゃないよ」


そんなミコトを抱きしめながらユウナは言った。


「全部あいつが悪いんだから」


ロランを指さす。


「はは、そいつはすまねえな」


「私が思うに」そこにミアもやってきた。「あなたは完成体の素質があったと思うのです。あなたからもそういう気配を感じるのです」

「そうか、うれしいことだな」


 そう言ってロランは目を閉じた。


 そしてロランという男の生涯が終わりを告げた。ロランが四十一の時だった。




 その瞬間、空から炎が降ってきた。


 その炎を見て剣聖はすぐ即座に回避する。だが、ロランの死体はそのまま炎で燃やされてしまった。


「生きてたの?」ユウナは空を見て言う。「ゲルドグリスティ」


 そこにはピンピンとしているゲルドグリスティがいたのだ。


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